ライブの感想は「ここで起こったことは私が書いておかないと何も残らない」という謎の使命感で書くことが多いのだけど、このライブはBUBKAの2019年1月号に小規模ながら特集記事が組まれている。そこで、高木JET晋一郎が磯部涼にインタビューするという形で、わりとしっかり
・どんな流れで武道館にたどり着いたか
・どのようなファンに支えられているか
・音楽的にどのような特徴があるか
・今後どのような存在になっていくか
などが語られていたので、それを読めばいいと思う。
でも、この特集の中で心から読めてよかったと思うのはlyrical schoolのhimeが「私たちのとってのBADHOP」を語っているところで、「HIPHOP聴かない子でも、BADHOPとCreepy Nutsだけは聴いている」「みんなライブには全然行かない。でも、今回で初めてライブに行ったという人もいる」等、今の若者にとってのBADHOPについて語っていることだ。
「自分たちの世代は夢を口にすることに遠慮があるけど、BADHOPを見て自分も夢を語っていいんだと思えるようになった」と吐露しているのが何より感動的だった。
武道館を埋めるだけのムーブメントを作っているのに、BADHOPファンの若者が「自分にとってのBADHOP」を言語化しているところをあまり見たことがない。
ツイッターが主戦場のオタク層と違う場所で、その人気を拡大していってるんだろうと思うけど、ドルオタが書きがちな「自分語り×アーティスト解説」の混じった熱量の高い文章を読んでみたい。インスタグラムなんかにはあるんだろうか……。
個人的には、YZERRのMCの「日本の音楽業界はおかしい。そのシステムを変えてみたい」と、本編最後の「これ以外」が沁みた。
「ここまで最速で来れたのは何でだと思う?」というT-Pablowの問いからの「俺たちがまたがってるのが世界のKawasakiだからだよ」も。
私は、これまで川崎という地域から「世界の」という形容の似合う物語を見つけることが出来ていなかった。でも、目の前に自分自身の作りあげてきた物語で、川崎に「世界の」という形容を付けることに成功している青年たちがいるのだ。
BADHOPは日本のヒップホップの歴史の中でもっともかっこいい存在ではないかと素直に思った。
唯一のゲスト、DJCHARIが出てきた時の「かわいー」という女の子の声と、天下一武道会みたいなステージでゴージャスに歌う姿も印象に残っている。
余談だけど、帰り道で偶然耳に入ってきた青年二人組の会話が味わい深かった。
「おれ、今カード止められてるから」
「え」
「詐欺でつかまっちゃって」
「……」
「川崎よりサグいよ……」
「……」
さまざまな人生の人が訪れていたんだなと思った。