年間ベストの季節ですね。
回りの人がどんどんお祭りに参加してるので「自分なら……」と思っていろいろ思い浮かべてみたのですが、あまりに面白みがなくてちょっと自分でひいてしまってですね。
何が面白くないかって、音楽聴く力が低い人のセレクトなんですよね。
あの、私は「読めないマンガ」がないんですよ。好き嫌いはいっぱいあるし、苦手な作品ももちろんあるのですが、「読めない」ことはない。
雑誌で例えれば、ジャンプからガロ(今はアックスですが)。あるいはりぼんからエロティクスF。ゴラクからエース。どの分野も読めって言われれば読めるし、好きじゃなくても「魅力がある」「力がある」はわかる。
積極的にではないけれど戦前のマンガも海外マンガも読んだし、コミケやコミティアで同人誌も買ってました。pixivも見るし。とはいえ、すべて最近は全然ですが。
※こんな感じ→私のマンガベスト10+100 - ホンのつまみぐい
あと、本屋で働いてたのもあって、自分が好きじゃないものでも、楽しみにしている読み手がたくさんいるってのがわかる。
だけど、音楽って「自分にとってどこかしらなじみがあるもの」以外はまず「聴けてない」んですよね。もちろん流してはいるけど、好き嫌い以前に全然つかめてない。
今の私の聴き方だと、マンガに例えればアフタヌーンとビームしか読まないで生きてきた人が今年1年について語るみたいな感じになっちゃう。だから、何が2017ベストかという判断なんてとてもじゃないけどできないなーって。
まあ、ただ「よく聴いた」でくくれば10年後の自分が読んだときに楽しいだろうと思い、書き記してみました。旧譜と新譜半々くらいです。
個人的には2017年半ばからApple musicを導入するようになって、聴きたい曲を即インストールして、通勤で聴けるようになったのが2017年の大きな変化です。(だから通勤で気持ちよく聴けるやつが多い……)
さっき上げたようにジャッジ放棄してるんで、選ぶにあたって時代性への目配りとか、新星へのエールとか、あるいは実験精神への評価とか、シーンへの貢献に対する好意などは一切ありません。
でも、全部どっか似てるので、あれが好きな人はこれも好きというのはあるかも。あと、ライブで「こういう曲だったのか」と発見することも多いので、ライブを観たことある演者が強いです。
BELLRING少女ハート 「UNDO THE UNION」
今さらこれか感はあるのですが、何枚もアイドルのアルバムをiphoneに入れて、容量の関係で削減というのを繰り返した後にいつまでも残っている一枚。
時に童謡を喚起させる不安定な女の子たちの声に、アヴァンギャルドな音調。ロックアイドルはあまり聴かなくなってしまいましたが、ベルハーは1曲ごと、東欧のサーカス映画、60年代のアングラ演劇、女子高生を主人公にした古いSFドラマなど、さまざまな世界が喚起されていくら聴いても飽きません。
歌詞も印象的なフレーズがありすぎてきりがないけど、全然知らない人向けに一個伝えるならこれかな。
あのタンジェリン かじりついて 爆ぜるアシッドな香り
そうタンジェリン かじりついて 味わってみるの
おとなってさぁ あきらめるじゃん 寝転んだ目して笑う
赤ちゃんってさぁ 手を伸ばすじゃん すべてに触れたい
メンバーのささやき声をサンプリングした曲に歌唱を乗せる「男の子 女の子」とかも変態的なのに静謐な美しさがあって好き。
ベルハーのライブ映像で好きなやつ。このアルバム収録でない曲が多いですが。
3776じゃなくてTEAM MIIなのは、群像劇っぽいパートが面白いのと、井出ちよのちゃんの芯のある歌い方に比べるとこっちの方がはるかにヨレヨレした歌唱だからです……。歌詞も気持ち悪いです。
雑にまとめちゃうとニューウェイブらしいんですが、TEAM MIIは子どもたちの声もあわせてNHKのSFアニメに使われてそうな音ですよね。いや、そうでもないか……。でも、1曲ごとに短編映画みたいなインパクトがあるところはベルハーと共通する部分があるかも。
校庭カメラガールツヴァイ 「Dis dear month of August」(会場限定)
ヒップホップいろいろ聴くようになったらアイドルラップ聴けなくなるかなと思ったけど、やっぱりコウテカ好きでした。
過去2回のちゃんとしたワンマンが冬だったこともあって、コウテカは寒い季節が似合うイメージが強いのですが、夏を前面に押し出したこのEPは気持ちを明るくしてくれる曲が多くて、3枚のアルバムと違った心地よさがあります。
【MV】"Dis dear month of August" Trailer / 校庭カメラガールツヴァイ
あめとかんむり「nou」
「おれたちのtapestokともるももるがやってくれたぞー!!」。
アイドル色の強い「This is ido rap e.p.」ではどこか自信なさげに歌っていたもるちゃんが、その魔女っぽいたたずまいや声を最大限に活かしたロウハウス×ラップの名盤。
気だるげな声と振動が染みこんでくるような音の重なりが気持ちよくてリピートできます。
なんて書いてますが、ハウスという音楽をあめとかんむりで初めてちゃんと意識しました。でも、クラブミュージックなのにパリピやらなくていい、ほっといてくれる心地よさのあるハウス好き!
tofubeats「FANTASY CLUB」
tofubeatsやさしい!あたまいい!好き!
「美しいけど 終わりがあるストーリー」
「頭使っててもまだ間違う」
「Lonely nights, 二人でもlonely nights」
「もう良し悪しとかわからないな」
「何がリアルで 何がリアルじゃないか そんなことだけで面白いか」
とか、どれも平易な言葉なのに、音との組み合わせによって心の中の普遍的な部分を叩いてくる。その音楽としての正しさが本当にすばらしいですね。耳なじみのいい電子音の中、オートチューンをかけたtofubeatsの声が独特の生々しさを持って聞こえてくるという不思議なギャップもいいです。
環ROY「なぎ」
イルカがキューキュー鳴いてる1曲目が聴きたくて再生して、最後まで延々と聴いてしまう1枚。歌詞はあんまり耳に残らないのですが、声と音がとにかくいい。
志人まで行っちゃうと芸術に閉じこもってる感じがしてしまうのですが、「なぎ」は表現を突きつめているのにスッと耳になじんでくる作りで、いわゆるポップスとはまったく違った方向からの普遍性の追求への意志を感じます。
サイプレス上野とロベルト吉野 「TiCTAC」
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ヨコハマシカ feat. OZROSAURUS→マイク中毒 pt.3 逆feat. STERUSS→DOORの流れが好きすぎてめちゃくちゃ聴きました。
弱音と強がりを隠さず自分の道程を確かめながら歌われる現在進行形の自己肯定。
crime6の「言葉通り生きられないけれど、言葉に近づくよう生きなさいでしょう?」(マイク中毒)とか、サイプレス上野の「あの頃のSOUNDから今このSOUND 疎らなフロアを燃やしてきた その飛び火が燃え盛るZE」(DOOR)とかの素朴な言葉はもちろん、ヨコハマシカでのMACCHOの叙事詩的な言葉選びも圧巻です。
言葉のことばかり書いてしまったけど、3曲ともどこか寂寥感がありながら軽さを失なってない曲で好き!
全体に焦燥感と疾走感がストレートに反映されていて、勇気づけられるアルバムなので全30代に聴いてほしい。
www.youtube.com
STERUSS 「白い三日月」
円鋭の方が世界観的にも音楽的にも円熟した内容だと思うのですが、iphoneのシャッフルで流れてきてテンションあがる確率の高さでこっちに。
歌詞がいちいち意味わからなすぎて、耳に入るとうぉーってなるんですよね……。
「夢で俺にあったら俺を殺す 殺しては生まれるブラックホ~~~ル!!!」
「なんじゃそりゃーー!」
いや、めっちゃ好きです。
あと、KAZZ-Kの曲に通底するちょっとしたそっけなさが好きです。甘くないのに人の声が乗るとエモくなる、そのバランスがすばらしい。
ゆるふわギャング 「Mars Ice House」
享楽的で刹那的で、明らかに若者のための音楽なのにどこか懐かしい感じがするのはスーパーカーリスペクトだからか……。ゆるふわはライブがめちゃくちゃよかったので否応無しに印象に残りました。あと、「ビジネスがなんだ 全員死ね」最高。もう一度ライブで言いたい。
でも、この2人って私みたいなサブカル中年より、「彼らの音楽を自分の一部として聴いている人」の言葉を待ちたい気もするんですよね。
WONK 「Castor」「Polluk」
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ストレートにおしゃれ!な曲とちょっと変わったことやってみたザクッとした曲が同居しててどっちも聴かせるのがずるい。セロニアス・モンクのMONKをひっくり返してWONKというのもずるい。早く現場行って「見たよ」マウンティングしたいです。
NETWORKS 「Dynamic Nature」
11月末に知ったので今年よく聴いたも何もないんですけど、寒い日の朝、自転車に乗りながら聴くと主人公感ハンパないのでみんな真似してくれー!って気持ちで入れました(事故らない程度に)。緊張感の強い演奏のミニマルバンドなんですけど、音の中に熱さとかわいらしさが同居していて聴いているとニコニコしてしまいます。
……並べて思ったんですけど、私は「寂しそうな音楽が好き」なんですね。PUNPPEすごかったのに入らなかったのは寂しさ成分が足りなかったんだな……。あと、ケンカ弱そうな人が作ってる音楽ばっかっすね。
年間ベストって次世代にその価値や記憶を引き継ぐ役目もあると思うので、まだそこには参加できないなと改めて思いました。
(だから、ただ曲名が書いてあるだけのベストってどうなんって思うんですが……。)
あと、SALU全般とか、あっこゴリラのEPとか、ライムベリーの「ちょっとやってみただけ」とか、BADHOPの「これ以外」とか、E TICKET PRODUCTIONの「ILLNINAL」とか、個別に記憶に残る曲いっぱいありました。
ラップもアイドルももっとちゃんと聴きこめば魅力がわかったものたくさんあるんだろうな。
あ、KIMODORIとかstillichimiyaの「死んだらどうなる」とかもかなり聴いてたけど、もう4000字くらいあるからいいか……。
番外ですが、2017年一番応援してた人たちの曲。客観的に見ると拙いのかもしれませんが、どっちもイイキョクです!
もつ酢飯「もつ酢飯のテーマ」
YABO$HIKI-1「OTK HUSTLER feat. Jabvara,DocManju」
来年はもっと聴ける音楽増やしたいですね。では。
P.S あ、これ読んで「じゃあ、これも好きだと思う」みたいのあれば教えてほしいです。