オタ卒しても絶対行きたいイベントWonder Traveller!!! のact.6。
しかし、会場は渋谷クラブクワトロ。個人的にあまりいい思い出のない箱だ。
クワトロ左手の大きな柱の邪魔くささについては多くの人が言及していると思うけど、万引き被害に悩まされた元書店員としては、ブックオフの上にあるというのも気持ちが乗らないポイント。すぐに日常に引き戻されてしまうのだ。
とはいえ、amiinAならクワトロも「いい思い出のある箱」にしてくれるかもしれないと、期待を持って会場へ。
この日もチケットはソールドアウト。ケータリングのカレーを食べながらフロアへ急ぐ。
中に入ると、あの忌々しい柱に白いネットと電飾が。なんと柱を白い巨木に見立てていたのだ。すばらしい。思わず拍手したくなるセンスの良さ。
長丁場のイベントなので、ソールドとはいえさすがにフロアがパンパンとは言えないなか、一番手は3776。会場下手の隅に立って開演待ち。
毎度のナガセさんのナレーションから3776登場。
オープニングアクトは「3.11」(曲名です)1曲という攻めの選曲。
気合いの入ったちよのちゃんにテンションがあがるけど、音が悪くてそっちに驚く。どうやら下手側はちょうどスピーカーの横手に当たる部分で、音を期待してはいけない場所らしい。いや、こりゃダメだな。遠目で見ようと思ってたけどしゃあないと覚悟してフロアに降りる。
音はともかくちよのちゃんは元気いっぱいで、この日はロックっぽい歌い方が力強い。踊り終わりに、ふっと一瞬身体の緊張をほどき、力を抜く瞬間があったが、そのポージングがだらしなく見えず、むしろはかなく見えた。
LUCKY TAPES
金管・エレキ・キーボード・ドラム・男女ボーカルと、ゴージャスだけどいい意味で軽くて踊れる音。モテそうなビジュアルの人がモテそうな曲をやっているという感じで華やかだった。でも、軽い曲だけでなく、ドラムでガチッと閉める曲もあって楽しく聴けた。終わったあとに「あと一時間でも聴けるわ~」という人がいたけれど、わかる。
ヤなことそっとミュート
運営の手際の良さをたびたび耳にする「ヤなことそっとミュート」。
最初はマイクの音量がオケに負けていて不安になったけれど、途中からあまり気にならなくなった。調節したのかな。
動くとマントのように見える白いポンチョに黒髪4人というビジュアルがアニメっぽい。シャープでナード受けするビジュアルにエモ寄りのロック。ダンスも揃っていて、なるほど人気出るのもわかる感じ。ただ、曲調がどれも似ていて、ちょっと耳が退屈だった。
フロアはモッシュ・圧縮発生しまくりで、一緒にはしゃげたら楽しそう。そういえばロックアイドルの現場ってこんなんだったわと再確認。
BiS
復活BiSは3ヶ月前の新メンバー加入直後のリリイベぶり。こっちもモッシュ・圧縮・WOD発生で何だか懐かしい気分に。
ライブから受ける印象は「運動会」。振り付け自体は単純だけれど、とにかく7人が走り回ってポジショニングを変えていくことで迫力を出していく。なるほど、「全然面白くない」と「めっちゃアツい」という感想にわかれるのが理解できる。衣装をサーカスっぽくすることで、メンバーのガチャガチャ感を世界観として利用しているのもうまい。
「WACKは疲れるのでもういいや」という気持ちなので、びっくりするくらいフラットに見てしまったけど、プー・ルイとサキちゃんが楽しそうでよかった。BiS加入当初からずっと自分を模索し続けていたカミヤサキが、アイドルとしては異形といってもいい真っ黄色坊主頭で、あれだけいきいきと活動しているのは肯定せざるを得ない。
音楽性とフロアの空気が似ているグループを続けて観て、自分がロックではしゃぐ力をすっかり無くしていることを実感。My Ixxxも、昔は振り付け全部覚えてたのに身体が動かなかったな。いや、もともとBiSが好きだっただけで、ロックにはなじんでなかったのかな。
ロック×アイドルというのは共通しているけど、ヤナミューはアニソンっぽいと思ったのにBiSをそう感じることはなかったのが面白かった。何を持ってそう判断しているのか自分でもよくわからない。
休憩時間の間にきゅうりを購入。しかし、靴があわなくて足がだいぶくたびれてきた。
Wonder Traveller!!!の休憩は1時間と長めに取ってあるけれど、これは単なるインターミッションではない。休憩時間にもフロアに少女が降り立つのだ。
過去2回は963が登場していたこの時間。この日のアクトは井手ちよの。
かつての963と同じように、ステージではなくフロアに走り込むちよの姫。
小さな身体に、黒ベースのジャケットとミニスカートという、3776の時よりシャープな衣装。オン眉にさらっとした黒髪ロングという日本人形的な風情が美しい。
フロアを縦横に突っ切りながら歌い、集まったオタクの壁を割っていく。
クワトロはフロアが階段3段分くらい凹んでいて、左手、右手、中央にそれぞれフロアに降りる入り口がある。縦横無尽に走り回りながら、時折階段手前でポーズを取るちよのちゃんが美しすぎた。
バレエをやっているだけあって所作が優美なのはもちろんだけど、ポーズを取った瞬間にふっと表情も変わり、走り回っていた頃の子供らしさが消えて、精悍さが加わるのだ。
軽快でちょっとやり手のおばさんっぽいMCを始めるごと、フロア全体がかがむ様子も壮観で、前を通り過ぎるたびに心の底から井手ちよのに手を振ってしまった。
NETWORKS
ある意味この日一番の感動だったNETWORKS!
変拍子ミニマルというレッテルを貼られていたが、聴いてみるとミニマルという言葉の持つ単調さはなく、シンプルなのにめちゃくちゃ踊れる。
一定のテンポで繰り返される音に、だんだんと感情が乗っていって、最後にバーンと解放されるという構成の曲が多く、そのバーンッで、聴いているこちらも解放されたような気持ちになれてとても気持ちよかった。
MCでの「えー、一般的なことを言うと、CDはあります」というちょっとひょうひょうとした感じも、最後の曲で目をつぶりながら笑顔になるのをこらえきれない感じでドラムを力強く叩く様子も、とても魅力的だった。また別の現場で聴いてみたい。
体力的な問題で集中力が切れていたので、この日のライブを語る資格はないかも……。
何となく物足りなく感じたのはなぜかと思ったら、VJのないオサカナは初めてだったからかもしれない。音もあまりよくなかったと思うし。
ただ、メンバーの気合いは表情から感じ取れていたので、フェアな感想はきちんと観ていた人にゆずりたいと思う。
赤いロングドレスという大人っぽい衣装で登場。
ロック調のアイドルが中心のこの日、唯一のR&B、クラブミュージックツールのアイドルだ。ライブ始まってすぐに、女子流のダンスがほかのグループと違うのがわかる。女子流はゆっくりとした動きをきちんと魅せることが出来るのだ。
ポジションチェンジで走り回って疾走感を出そうとする他グループと違い、合間の動きも優美に魅せる。首を後ろにそらせる動作や振り向く動作がいちいち美しくて、黒髪がふわっとたなびく場面がとても映える。当然歌も安定していて、もっと腰を据えてゆっくり観たいと思えるライブ。
MCでの皆さん「〇〇(詳細忘れた)な恋をしてますか?」という振りから「〇〇な恋を私たちがトロピカルハウスとEDMで表現します!」という律儀なMCにちょっと笑ってしまった。そういえば、演者個人が思いっきり感情を表に出すことでエモーションにつなげることの多いライブアイドル界において、「楽曲の世界を表現する」ことをちゃんと意識しているグループって意外と少ないかも。
あと、中江ちゃんだけボブになっていて「中江ちゃーん!」と思った。(特に意味はないです)12月15日のサ上と中江復活観たかった……。(仕事の呑み……)
さて、満を持して登場のamiinAは新衣装。
透明ビニール素材にふわふわの毛皮がついた衣装は今までよりちょっぴりファンタジー調。amiちゃんはいつも通りの不敵な表情で、miyuちゃんは笑うと目がなくなるあの笑顔。
たった二人だけのステージだけど、手足を限界まで広げる力強いダンスが見事で、物足りなさを感じさせない。
MCでは「緊張すると衣装の毛皮のところをさわってしまうから、そのうちふわふわじゃなくなっちゃうかも」という話。何となくはしゃいでいる感じが伝わってほほえましい。
この日は久々にmonochromeを観ることが出来た。「鏡に映るこの姿『本当なの自分?』」という歌い出しのこの歌で、いったんステージが暗くなり、中央に立つ女の子ふたりにピンスポットが当たる。それまでの躍動感と違った緊張感の美しさ。
amiちゃんとmiinaちゃんのコンビでの最後の披露の印象が強い曲だけれど、ちょっと大人っぽくなったamiちゃんとmiyuちゃんがやると、凜とした美しさが際立っていた。
MCでは、いつものほのぼのした会話に続いて、初ワンマンの告知。会場・日時は決まっていないらしいけれど、来年やることだけは間違いないそう。
「いや~、amiinAこの一年ほんっと大変だったね」と顔を見合わせて言う二人。
そして、「最初はamiにちゃんとものが言えなかったけど、言えるようになってから本当に仲良くなった」というmiyuちゃん。
そして、amiちゃんは「はっきりものを言い過ぎちゃうから学校で浮いてしまう。ここにいる時が一番生きている気がする」という話をしていた。「ここにいるみんなが大切」だとも。……がんばれ!
気づけば新曲披露も含めて1時間半のステージ。最後はCanvasの幸福な合唱で〆!
しかし、ボリュームのあるイベントをいつもやっていたから気がつかなかったけど、そういえばワンマンはまだだったんだ。音楽に対するこだわりはどのアイドルにも、いや、どんな音楽家にも負けないamiinAチームが、初ワンマンでどれだけの挑戦をしてくるのだろうかと思うとわくわくする。
最後に出演者のサイン入りのポスターを景品に、わざわざアンケートを回収する周到さも、この現場の信頼感にしっかりつながっている。(地下でこれをやっているところ、amiinAしか知らない!)
この誠実さが実るところを見たいし、そういった物語を抜きしても間違いなく立ち会う価値のある時間になると思う。
しかし、バンドはさほどでもなかったけれど、クワトロの音はなんだか全体的にいまいちで、やっぱり「出来れば行きたくない箱」という印象はぬぐい去れなかったのだった……。