シブカル祭はブッキングがおもしろくて個人的に「ちょっと行ってみたい現場」のひとつだったけど、いつもいつの間にか終わってた。しかし、今回は春ねむりが参加するということで、事前にTwitterで告知がガンガン流れてきて、無事当日現場に足を運ぶことが出来た。
場所はクワトロ。あの観にくいフロアか……と思いながら会場へ。
会場に入ると「美大生です!」「デザイン学校生です!」という女の子がぱらぱら歩いてる。渋谷のサブカルだもんな、そうだよな。
そんな若者を横目にフロアに入ると、MANONという女の子が歌っている。
茶髪ロングにふわっとしたパーマに、縦縞のワンピース。人からもらったものだとすぐわかる、へにょへにょした歌。うーん、アイドルじゃないけど、これはアイドルみたいなものだなあ。
ググって見たところ本業はモデルらしい。ブランディングの一つとしての音楽活動か。MCで「CDが出せてうれしい」「ポーチを作ってもらえてうれしい」と話しているのを見ながら、ちょっと憂鬱な気分に。何の芯もないまま、音楽を着飾っている姿の女の子を広告関係っぽい大人が「かわいいね」と言いながら鑑賞している。正直、気持ちよくない。女の子の方じゃなくて、周りの大人の「中身なんてどうでもいい。かわいくさせときゃいいんだろ」みたいな感じがね。しかも、この後は春ねむりとあっこゴリラなのに。
MANONが出て行くと、フロアにいたこじゃれた人々はすっといなくなって、ステージを見守るのは春ねむりファンの20~40代の男性がメインに。フロアにいっぱいいた、自分が何がしたいか、まだわかっていなさそうな若者に見てほしかったな。
春ねむりはトップスは白。袖とスカートは黒のワンピースで登場。
セカンドが出てからはリリイベでしか見ていなかったので、ちゃんとした箱で見るのは初めてだと気づく。
明らかにダンスミュージックではない、感情の底を叩くような低音。そして、高くて細いけれどしっかりした声で紡がれるラップ。春ねむりはいつも真摯だ。
「唯一のロキノン系ではないでしょうか」というMC。そう、この人の信仰の対象はロックンロールなんだよね。ラップだからってヒップホップじゃなくていい。
ライブの後半、「ロックンロールは死なない」で、こぶしを振り上げてフロアに降りてきた。基本的にどんな動作もそれなりにノってやれるんだけど、こぶしを振る動作だけはちょっと恥ずかしい。やるけどね。
全体が遠目に見回せるところで見ていたから、彼女の存在を誇るように見つめる人々の笑顔と、その笑顔に囲まれてぴょんぴょん飛び跳ねる春ねむりがまぶしかった。
あっこゴリラはDJにダンサー二人を引き連れての登場。「こんなアッパーなやつ出てきてみんな大丈夫?」というMCからスタート。インストラクターみたいなヘソ出しルックと高くて通る声が気持ちいい。
千円札を模した物販のタオルを取り出し、「この千円札が~おっきくなっちゃった!」と笑いながら言う。つられてオタクの何人かが千円札を振っていたのもよかった。
黒人男性ダンサー二人を連れながらのライブはとにかくステージ上のボリュームが半端なく、見ているだけで明るい気持ちになる。ゴリラをコンセプトした彼女の初期の曲はあまり好きになれなかったのだけど、12月のEP用の新曲は音も歌詞も華やかで、耳を奪われる瞬間が多々ある。MVの華やかさに「女の子はラップすんなとかいう男どもはFxxk Youだ。」という歌詞の痛快さが気持ちいい「ウルトラジェンダー」はもちろん、新曲「ゲリラ」の「どしゃ降りもリズムに聞こえたの ゲリラ豪雨」という一節は彼女そのものという感じだった。
二人を見終えて、「やっぱり、ライブってこれだよな」と思う。
フロアから引き払おうとすると、あっこゴリラを見ていた女の子たちの中に、ちょっぴり自己解放の苦手そうな、でも何か表現したそうな雰囲気の女の子たちがいたことに気づく。そういえば、ベッド・インのリリースイベントもこういう子がいた。きっと、ああいう子たちの憧れなんだろうな。
- アーティスト: あっこゴリラ,STUTS,向井太一,ITSUKA (Charisma.com),OMSB,食品まつり a.k.a foodman,永原真夏,PARKGOLF,ヒラサワンダ
- 出版社/メーカー: 2.5D PRODUCTION
- 発売日: 2017/11/08
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
鼎さんがウルトラジェンダーに関するすごくすてきな紹介エントリを書いてます。