ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

アトムの遺伝子を感じる人体改造もの「錆のゆめ」

観測の範囲でないので正確な時期はわからないが、男性向けエロマンガとBLが表現においてどんどん重なり合ってきているというのは何となくでも伝わってきていた。


重なり合うというのはおかしいか。男が考えつくようなエロに女だって興奮するし、なんなら自分でも描くということだ。
 
だから、人体改造BLマンガ「錆のゆめ」が商業出版物として刊行されているのを見た時は、女性向けでもこういうものが出るようになったのかという驚きがあった。私はショタにも商業BLにも全く明るくないので、先行する例があったら申し訳ないのだけど。
 

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巨大な機械の手に半裸にブーツという奇妙な姿のかわいらしい少年。彼は妹の進学のために資産家のセクサロイドになることを決意し、白痴の異形に改造されたという過去を持つ。この気の毒な少年の世話役を引き受ける新藤という男の視点で話は進む。
 
男性向けエロマンガでは、メジャーではないものの「人体改造」は古典的なテーマという印象があるし、セックスで白痴化する人間はエロ&BL問わず定番ネタ。
 
ただ、エロマンガ(ポルノグラフィティ)ではどのような性暴力も飛躍したフィクションとして受け取れるのだけど、錆のゆめはポルノと物語の狭間にあって、これがこちらの感情を揺らすのだ。
 
カタコトでしか話せず、考える力も奪われた少年は、新藤が世話をするうちに少しずつ意思や思考する力を取り戻していく。2歳児が4歳児になるようなゆるやかな回復の中で、少年は元に戻った体で新藤に愛される夢を見る。この幸福な夢の様子がなんとも切なくて哀しく、こちらの胸を打つ。
 
一方で、彼の造形はどこからどう見ても「かわいそうなところがかわいくてエッチ」なように描いてあるのだ。
 
小さな耳に、頭に意味もなく施されたベルト。そして機械の手に編み上げのロングブーツで、性的に搾取される続ける少年の姿は悲惨なのだけど、一方でその姿は嗜虐心を誘うし、喘ぐ姿も眠る姿も、かわいくてえっちとしか形容しようがない。
 
悲惨な境遇の少年に萌えてしまう罪悪感と悪趣味な設定に対する胸糞悪さがブレンドされ、見てしまったからにはその後を見届けなくてはという気持ちにさせられてしまう。タチが悪いが引きは強い。そして、マンガらしい飛躍を活かした作品だと思う。
 
ところで、少年のデザインを見て何かを思い出す人はいないだろうか。ピンと立った耳、黒髪短髪、広いおデコ。
 
そう、これはかつて浦沢直樹手塚治虫鉄腕アトムの二次創作物として描いたPLUTOでのアトムとそっくりなのだ。
 

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そうやってさかのぼってみると、少年の半裸に編み上げのロングブーツというフェティッシュなデザインにも、アトムから受け継いだフェチズムを見てとることが出来る。
 
これも間違いなく手塚治虫の遺伝子のタネだ。
 
最後に一言。これはBLなのでおそらくハッピーエンドを目指すのだと思うし、個人的にはそれを願っているけど、多くのエロマンガのようになんの救いもなく終わり、消費されてしまってもよいと思う。撃てない銃を撃つために、殴れない相手を殴るために、出来ない不貞を満喫するためにフィクションを利用するのは責められるようなことではないからだ。
 
フェミニストがBLやエロマンガ、二次創作物において、彼ら彼女らの政治性や倫理観では、本来とても了解されないはずの保守的な物語を消費しているのもよくあることだしね。もちろん「良い子はマネしちゃダメ」が前提だけど。

 

錆のゆめ 上 (Canna Comics)

錆のゆめ 上 (Canna Comics)

 

 

 

PLUTO (2) (ビッグコミックス)

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