ホンのつまみぐい

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「描く!」マンガ展 ~名作を生む画技に迫る―描線・コマ・キャラ~@川崎市市民ミュージアム

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うわさのイベント、第2回訪問!なぜなら図録を買わなくてはいけないから……。
 
 
石ノ森章太郎主催の東日本漫画研究会による肉筆回覧同人誌、墨汁一滴が圧巻。
 
東日本漫画研究会は、漫画少年読者欄で会員を募集し、石ノ森が選考によって選んだ20名によって活動していたそうだ。
 
本展示で閲覧出来るのは目次や自己紹介といったマンガ本編に入る前の部分のみだが、その水準の高さには正直のけぞる。日本地図に仲間の名前と居場所を記したページがあるが、九州から北海道にまで会員がいるのがなんともワクワクさせられる。
 
U・マイアの細かい役割分担の展示も面白かった。
 
 
さいとう先生、いいマンガ家なんだなあ……とひとしきり。
 
本展ではそのデザインセンスがクローズアップされていたが、やはりそれがマンガに落とし込まれた瞬間に興奮する。
 
リズミカルな無用の介の斬り合いが美しい。
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竹宮惠子は最初から竹宮惠子だったわけではない。しかし、竹宮惠子は最初から竹宮惠子だった」とは解説パネルからの引用。
 
私けっこう長い間竹宮惠子少年マンガ的だと思っていたけど、それは暴力や性をいかに自分のものとして描くかの格闘を続けているからだろう。
 
教育的な作家だと思っていたらいつの間にか学長になっていたので、マンガ入門系の仕事も展示していたの正しい。
 
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こういうの見ると「ケーコタン!」って思いますよね。
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陸奥A子のマンガは通ることのなかった人生が描かれているので、なんだか見ていると昔話を読んでいるような気分になる。付録展示が秀逸。そう、こういうのとあわせての楽しみなんだよね。
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絶対読むべきなのに、まとめて読んだことのない作家のひとり。
 
短編一本(ヒトニグサ)が丸々展示されていて面白かった。物販あったらよく売れただろうな。黒ベタの存在感がいかにも「闇」で強い。
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新作追わなくなってだいぶ経つけど、マンガの絵としての強度が本当にハンパなくて、「これはみんなどれだけ休載しても待つわ」と実感。
 
アーカードの髪のたなびき方とか、セラスの口の開け方とか、なぜか生理的に気持ちいい。
 
もうひとつの人気要素のひとつ、名台詞が短冊のように下がっていて気が効いている。
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原稿を見ているだけでクスクス笑ってしまう島本ギャグの強さと気持ちよさ……。
 
会話のアイデアのネームとコマ割りの入ったネームが並べられていたのが面白かった。言葉が先なのか。
 
画風に関する田中圭一のキメラのような作風という表現が秀逸。
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よつばと!のそこはかとない不安感はこのリアリティーのある背景と記号的キャラのバランスだと実感。よつばだけ鼻がないとかね。
 
デッサンに使ったというシューズやジェラルミンの展示、原稿の修正の変遷など、作品世界の完成度を高めるための強いこだわりをうかがわせる展示。
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二人組というのをこの日知った。意外と昔ながらの少女マンガ技法だなと思うなど。
 
媒体にあわせて2人の役割分担を変えることで、読者に合わせた作風を作り出していく様が見事。
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作家ごとの展示も濃厚だけれど、媒体の変遷の紹介もよかった。
 
肉筆回覧同人誌から始まり、コミケを挟んで、pixivで終わる表現のはじめの一歩。
 
すでに散々語られているが、いろいろな意味で「話題になるべくしてなった」展示だと思う。濃密な図録の内容についてはまたいつか。