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ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

生きづらさも寂しさも受け止めて祝福に変える女の子たちの旅路「6’n’ Roll History 〜ゆるめるモ!第1章総集編〜」

アイドル 音楽

応援歌でもなく、ラブソングでもない。ただただ、生きているあなたに対する祝福の歌を歌うアイドルが「ゆるめるモ!」。

7月10日、もねちゃんとちーぼうの卒業ライブ。新木場coastで踊る6人の女の子たちを見ながらそんなことを思った。

地獄みたい きっと
明日は もっと両手振って走り出せない
だから眠る 今日は逃げる しかたないでしょ

「逃げろ!!」

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代表曲である「逃げろ!!」が象徴するように、ゆるめるモ!は「逃げること」「がんばらないこと」を肯定するアイドルだ。

その証拠に立ち上げ当初に行われたクラウドファンディングの概要にはこう書かれている。

「頑張って~」と前向きなメッセージを歌うアイドルはたくさん存在します。ただ、「頑張らないで~♪」とか「辛い時は逃げてもいいんだよ~♪」という歌う後ろ向きなアイドルはそう多くありません。

みんなの窮屈をゆるめるもん!!脱力支援アイドル「ゆるめるモ!」のCD制作 - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

こうした姿勢を裏付けるかのように、モ!のメンバーはわりと頻繁にライブを休む。アイドル戦国時代という言葉はもはや遠いが、それでもどこまでも体育会系なアイドル文化には珍しく、少女たちを無理に引きずり出さない姿勢が見て取れた。

そして、そうしたある種のゆるやかさに反し、音楽にさほどくわしくない私でもわかるくらいモ!の音楽は尖っている。

ビートの反復にささやくようなボーカルが乗る10分もの長大な楽曲「SWEET ESCAPE」、ギターの緊張感と哀愁、追いかけるようなドラムの音が突き刺さる「Only You」なんかはわかりやすく異端だけれど、もう少しポップな曲だってどっかおかしい。「OO(ラブ)」の明るいビートなのに涅槃に連れて行かれるんじゃないかと思わせる不穏さとか。

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でも、その音にはいつもどこかとぼけた味が合って、不思議とこちらを傷つけて来ないのだ。

そして、小林愛の歌詞。

すき焼きの鍋の中を歌ったという「スキヤキ」に、自殺から逃げろというメッセージソング「逃げろ!!」。キュートな中華風アイドルソング「1!2!かんふー!」から、まるで叙情詩のような「たびのしたく」……。

詞の中の一人称がどんな人物かはっきりしないような、抽象的で難解な歌詞。それなのに、つい口ずさみたくなるような、口にすることで気持ちが柔らかくなるような不思議なフレーズ。

微妙な調節苦手よ 微妙な調節苦手よ
だらだら調節苦手よ だらだら小説苦手よ
「OO(ラブ)」

 

いいことあるもん 簡単だ フー
いいことあるもん 簡単だ フー
いいことあるもん 簡単だ フー
いー ある かん ふー
「1!2!かんふー!」

 

好き 好き 好きなんだな
好き やきもち なのかな
「スキヤキ」

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一見遠回りの言葉ばかりだけれど、その歌詞はよく聞くと、どれも誰かの基準で人の価値を問うわけで無く、ただただ私たちの存在と世界を肯定する内容だ。

それを普通の女の子たちであるモ!のメンバーが歌うことで、優しくて哀愁のある、でもキラキラした世界が生まれていて、それこそがモ!の大きな特徴だった。

ただ、一方でライブのクオリティにぶれがあるのもモ!の特徴という印象を私は長いこと持っていた。メンバーは体調不良や長期活動休止でなかなか揃わないし、もともとマッチョな練習をさせるチームでは無いから、フィジカルでは洗練されていない……。この印象はたぶん、ある時期まで間違いではなかったと思う。

だけど、そんな時期のことが嘘のように、この日の6人の少女たちは堂々と楽曲の世界を表現していた。

アイドルのライブに人々が否応なく感動してしまうのは、高校野球につい熱中してしまうのと同じようなもので、若い子が限られた時間を使って頑張っていると、否応なしの熱に当てられてしまい、たいがいの年寄りはすぐ泣いてしまう。ただ、その涙は厳密には演者の「表現」に対して流されたものではないことも多い。

この日のライブにもそういう高校野球的な感傷はたしかにあったけれど、それより

★★★☆☆(ほしみっつ)の 私たちがうけてたつ
「ゆるめるモん!」

混じりたい 混じれない 混じらない Sweet Escape
「SWEETESCAPE」

といったフレーズの数々を、生きづらさを真摯に引きうけた少女たちが、改めて今この場にいるお客さんを祝福するために歌い切っていて、まるでミュージカルのような演劇的な迫力があった。

言葉を一度咀嚼し、改めて表現としてこちらにぶつけていく。当たり前のことなのだけど、意外とこれが出来ていないアイドルが多い。でも、この日は難解な歌詞が6人よってどんどん血肉を得ていくのがわかった。

特に、10分の長尺曲「SWEET ESCAPE」の最後。振り付けしたもねちゃん曰く、殻を破るところを表現したという、メンバーがお互いのワンピースを脱がせあい、最後に真っ黒な衣裳になるところ。自分たちのことをもてあましている女の子たちが、表現によってそうした葛藤に向き合おうとしている姿は高校演劇の舞台を思い出させてくれた。青臭くて、抽象的で、説明不足で、でも、切実で。

アルバム「Unforgettable Final Odyssey」での楽曲を中心にした1部のライブは、気持ちをぶつけつつなごやかな明るさを保っていたけど、細かいところで最後を思わせる箇所があった。

もねちゃんが「たびのしたく」でダイブして、客席のもね推しをまじまじと見つめていたところに、パンッと景気よく銀テープが会場全体に弾けた瞬間。

アンコールの「なつ おん ぶるー」では浮き輪やビニールのサメにカメなどが用意された。メンバーがその巨大な浮き輪に乗って、笑いながら客席につっこんでいく瞬間。途中で音が止まってしまったのだけど、客席が歌い出してそのまま歌がつながっていった瞬間。終わった後に音響からの申し出で、もう一回笑顔の「なつ おん ぶるー」が繰り返されて、しふぉんがフロアに降りて突っ切っていった瞬間。

すべてがただただ暖かくてバカバカしくて、アイドル現場の特権的楽しさと優しさを確認出来たようで泣いてしまった。

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第2部が始まるまでの数時間、新木場コースト前では企画用のサイリウムを配るオタクが声を張り上げていて、それ以外の2部待ちの客は力を使い果たさないようにしているかのように、大人しく入口前に溜まっていた。

疲れていたので2部では時々会場内のイスに腰かけながら見ていたのだけど、よりロック寄りになったアルバム「YOU ARE THE WORLD」の楽曲を中心に続くライブは、いくつかの場面で荘厳な印象すら受けた。

「もっとも美しいもの」で、ようなぴちゃんの落ちサビ「いつの日かあらゆる花が咲き美しくなるなら」のところで、バーンと一筋の白い光が差し込んで、それはまるで神の啓示を受けた巫女のようだったし、「人間は少し不真面目」での、ギターの音色と共に心が静かに煽られていくソロマイクリレーも美しかった。

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でも、そうした美しさを蹴破るかのようなインパクトを残したのは2部の最後の曲「Only You」だった。モ!には珍しく怒りを強く感じさせる歌。歌い始めるごとに、感情が蛇口を開きっぱなしにした水道のようにどんどん溢れてきて、しふぉんとあのちゃんはステージからダイブしてきて、ちーぼうともねちゃんとけちゅんはステージでぐるぐると抱き合って、「ここにいるみんながゆるめるモ!」と叫ぶようなぴは高い脚立を持ってきて、その上から落ちサビの「美談はいらないんだよ 世界の性格なんかに反応したくはない」と歌い上げる。

表現の部分と生身の女の子の感情がぐちゃぐちゃになっていて、戦争映画のワンシーンみたいな笑えない美しさがあった。もねちゃんとちーぼうは脱退の理由のひとつに、「目指す方向が違っていると感じた」という趣旨のことを答えていたけれど、それは、この自分自身を客に垂れ流していくような美しい残酷さと関係があるのだろうかと少し考えてしまった。

衝撃で心が休まらないまま、2部が終わる。

アンコールの瞬間、ひとりのオタクが2階席まで届く声で叫んだ。

「ぼくは3年間ゆるめるモ観てきました!今が一番最高です!アンコールいいですか!」

その声につられて始まった全力のアンコールのあとの楽曲とMCについては、ナタリーに詳しく載っているけれど、その素朴な暖かさと真剣さにやっぱり何度か泣いてしまった。

natalie.mu

円陣を組んで「6人最後のゆるめるモ!」と言ってから始まった「私の話、これでおしまい」。メンバー手作りの卒業証書。お礼の言葉に添えてメンバーの名前をひとりひとり呼んでいったのに、しふぉんの名前を忘れてしまったちーぼう。「さびしいけど……」と泣き出すあのちゃん。「明日からもふたりが一緒なんじゃないかって…」と泣きながら言うしふぉん

目の前の青いサイリウムを持った高校生くらいの女の子はずっと泣いていた。そんな風に大切にライブを観てもらえるってとてもかっこいいし、幸運なことだ。私も、高校生の時に出会っていたらずっと泣いていたと思う。

「逃げろ!!」で終わったライブのあと、告知が流れる。

壁に映されたのは“4人"の「ゆるめるモ!」のMV。夏休みに民宿らしき宿でアルバイトをする4人のハッピーな映像。お別れの日に、心を突き放すような映像を流すなんて、らしくないなと思った。

少し意外に感じながら座り込むと、最後に大きなどよめきが起きた。

電車に乗り込んでいく4人と、電車から降りて、4人を見送る2人。すっきりした優しい顔で手を振る2人と、寂しさを受け止めながら電車に乗っていく4人。

別れは寂しいけれど、それぞれの場所で歌も人生も続いていく。果てしなく優しい映像とともに、6人のゆるめるモ!が終わった。


ゆるめるモ!(You'll Melt More!)『サマーボカン』(Official Music Video)

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WE ARE A ROCK FESTIVAL

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YOU ARE THE WORLD

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Unforgettable Final Odyssey

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Unforgettable Final Odyssey

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