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ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

「まばたき」酒井駒子・穂村弘

くまとやまねこ

くまとやまねこ

 黒を多用しながら透明感を感じさせる酒井駒子の絵には、それだけで大きな説得力がある。寂寥感や死の予感を描かせて、これほど品のある画面に仕上げられる人はなかなかいない。

 だから、湯本香樹実との共作「くまとやまねこ」がそれなりに流行った時に、「酒井駒子があの絵で『生と死』っぽいことを描いたら大人の絵本オタクとか、これからもころっと釣られるんだろうなー」と考えていた。

 そんな読者の読みを見透かすような歌人穂村弘との共作である。

 最初のページを開くと、左側のページはまっしろ。一言だけ「しーん」という文字が置かれている。右側にはヒメジオンらしき花に止まるモンシロチョウ。

 ページをめくると、再び左側はまっしろ。今度は何も書かれていない。右には前のページにいたモンシロチョウがほぼ同じ構図で描かれている。

 3p目。左のページはまたまっしろ。右のページは飛び立つモンシロチョウだ。

 左のページは常に白。右のページは酒井駒子独特の絵。1p目に言葉。6p目で絵が動き出すという構成で、モンシロチョウのあとは鳩時計、おもちゃを見つけた猫、砂糖を落としたティーカップが続く。

 それら一連の流れには、常に奇妙な静けさがつきまとう。ハト時計からハトが飛び出す瞬間、猫がおもちゃに飛びかかる瞬間、砂糖が紅茶の中に沈んでゆく瞬間。すべてが音と動きを兼ね備えているにも関わらず。

 一方で、めくるごとにリズムを感じられるような心地よさもあり、よく計算されて作られた本だということが察せられる。

 最後に現れるのは女の子の顔だ。左に「みつあみちゃん」という言葉を当てがわれた女の子の6pは、ぜひご自身の目で確かめてほしい。

 これは勝手な想像だが、穂村弘はおそらく酒井駒子の絵に言葉は不要と思ったのではないだろうか。

 その上で、もっとも絵を活かす構成を考えた結果がこの絵本なのではないか。現場の真実は不明だが、そう思わせるような潔い作りは、最後の絵の効果を強く引き立たせる。

 正直、この終わらせ方はあざといと思う。しかし、そのあざとさが気にならないくらい中毒性がある。何度でもめくりたくなってしまう。絵本でしかできないことをしている、とても絵本らしい絵本だ。