横浜市民ギャラリーでヒサクニヒコと久正人の親子トークイベント。
展示作品の紹介、両名の作品紹介、対談という構成。
ヒサクニヒコさんが展示作品である一コママンガをひとつひとつ丁寧に紹介してくださるが、富永一郎、鈴木義司らの作品はそれぞれ現代的な目線で見るとアイデアが単純すぎて物足りない。前川かずおの児童文学以外の仕事が見られたのはちょっとうれしかった。
恐竜図鑑や忍者図鑑の紹介の後に、ヒサクニヒコが紹介したのが「ゼロ戦マンガ戦史」。古き良き絵本画家という感じの、のんきな画風そのままに描かれたゼロ戦一コママンガに驚く。「戦後を知るものとして時代感覚を含めて残しておきたかった」と話していた。あとで検索すると、ミリタリーオタク周りには評価の高い作品らしい。
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久正人は2世クリエイターらしくシャイな感じの方で、自身の作品を「絵のうまさでは勝負できないから構図に凝っている」と話していた。
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今回のトークの命題のひとつには「ストーリーマンガと一コママンガの違いとは?」というのがあった。短い時間ではあまり議論を深められなかったけど、ひとつ印象的な場面があった。「一コママンガでは時間の経過を書くのは難しい」と言い出し、人が考え込むイラストを描いた久正人の絵に対し、蜘蛛の巣を描き込むヒサクニヒコ。その手つきに、「そうか、一コママンガは大喜利なのか」と思った。
久正人はこのために2pのトークイベントのオファーを受ける過程を描いたマンガを用意。ズームアウト、場面転換、時間経過、動きの表現など、コマごとに使われている技法を紹介してくれた。
また、一コママンガにはサインが入るけど、ストーリーマンガには入らないという指摘もあり、「サインを入れて完成」という習性の一コママンガ家と、ストーリーマンガ家の違いを、司会の山内さんが、「一コママンガは絵画の発展形だからサインを入れるのでは」とつないだ。
「中学時代の自由研究の工作が素晴らしかった」「水木しげるで卒論を書いていた息子に、資料を渡したりとあれこれ世話を焼いたが、完成したものは見せてもらえなかった」「ジャバウォッキーの連載中に恐竜の描写についてのツッコミの手紙が来た」などなど、人懐こい父親とそれを照れくさく感じる息子の関係が微笑ましかった。
新しくなった横浜市民ギャラリーはかなり充実した施設になっていたようだけど、アクセスが悪いのが残念。わかりにくい上に坂をかなり歩かされるので、初めての人は送迎バスを使うのが吉。