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ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

ジャズメンはチャラいのも仕事のひとつなんだと思った「ジャズ・ジャンボリーinヨコハマ 」(3月20日)

 横浜市の高い税金をふんだんに注ぎ込んだと思われる東アジア文化都市2014記念コンサートは、今回も大さん橋ホールでジャズコンサートという最高のロケーション。

 ジャズシーンにも曲にも特に詳しいわけでもなかったが、前回の出演者が門外漢でもわかるくらい豪華だったので、今回も期待が高まっていた。

 大さん橋ホールは船の甲板をイメージさせるウッドデッキの床で、開放感と気軽さがジャズにぴったり。

 明るいブルーの照明が鮮やかな会場には、出演者全員と楽器が乗り切るくらいの小さめの舞台が作られていた。

 小さな舞台に出演者が乗り込み、演奏が始まる。最初の2曲ほどはまだそれぞれ硬い感じが伝わってきたけど、MCと演奏を重ねるうちにどんどん場が温まっていくのがわかる。

 あとから調べて知ったことだけど、演者は皆ソロでも客を呼べるメンツ。そんな人たちがお互い探りあいながら、音に音を乗せていく。高い技術に支えられたシャープで厚みのある音。

 日中韓記念交流ということで、ハッピーあるいはエレガントな曲が多かったのだけど、どれも楽しくて、いい意味で落ち着いた演奏だった。最後の方で、「いいねえ、これ(この編成)でもっとやりたいねえ」との言葉も出る。そして、どちらかというと落ち着いた演奏が続いた中、最後の「A列車で行こう」はハイテンションなセッション。演者のやりきった感がすがすがしかった。

 韓国の歌手、パク・ラオンはエロティックだけどいい意味で辛口の声がとても印象的で、思わず聴き入る。そのパク・ラオンが「みなさん、わたしはハッキリ言って日本がスキです。でも、テレビを見ると日本と韓国の仲のワルい話が出ていてとてもかなしい」というMCにはっとする。流ちょうで、ちょっとだけ間違ってる日本語は本当に日本が好きなんだという印象で、まさに歌姫という風情の彼女が悲しそうに話すのを見ると、国際交流しなくちゃなあという気分が盛り上がる。そのパク・ラオンによるジャズアレンジのアリランがとても迫力があってよかった。

 ライブ中、エリック・ミヤシロ作曲の爽快なナンバー「Skydance」を聴きながら、なぜか70年代アニメ、未来少年コナン的なアニメの画が浮かんだ。不思議に思っていると次に「ルパン三世のテーマ」が演奏され、MCで大野雄二がジャズピアニストだと知る。なるほど、音の記憶ってけっこうきちんと紐付いてよみがえるものなんだな……。

 そして、印象的だったのがジャズメンのMC。なんというか、チャラい。司会進行は中川英二郎が担当していて、彼はわりと話し方も言葉選びもフォーマルな感じだったけど、「なんかいい話しなきゃ駄目な流れかなあ」という本田雅人や、パク・ラオンのあいさつを聞いて「パクさん、日本語上手だねえ。いい話だねえ」と言う椎名豊(だったかな?)。アイドルやクラシックの歌手のような「きちんとしなくちゃ」というプレッシャーの無さ。ジャケットは着ているけど、ステージの上で遊び人であることも彼らの仕事のひとつなんだなと思った。タモリをはじめとするジャズメンが戦後の芸能の一翼を担っていたという話を、この日の彼らのたたずまいで実感する。

 しかし、定員マックス600名なのに席がだいぶ余っていたのは本当にもったいなかった。うちらの税金なんだし、せめて多くの人に来てもらうようにしてほしいなあ。このコンサートのあと、ずっと手作りの映画祭を作っていた知人が「今年は横浜市映画祭の助成金無いんですね。あのダンスやアートのイベントに使ったんですね」とSNSでぼやいていたのを見ていたから。

 税金をふんだんに使って「すごい豪華なコンサートを作る」ことと、「人はあんまり集まらないかもしれないけど、市民が手作りの映画祭を作るために投資する」ことのどっちがいいのか。ケースバイケースだろうけど、彼のやっていた映画祭作りにはとても共感していて、長く続いてほしいと思っていたので複雑な気分に。

 使われたお金は仕方が無いし、今回思い切り楽しんだ側としてはあまりえらそうに言えないのだけど、せめてたくさんの人の記憶に焼き付けられるようにしてほしいとつくづく思った。

●出演者
エリック・ミヤシロ[トランペット]
中川英二郎トロンボーン
本田雅人[サックス]
ユージン・パオ[ギター/中国]
パク・ラオン[ヴォーカル/韓国]
椎名 豊[ピアノ]
井上陽介[ベース]
広瀬潤次[ドラム]