ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

BiSラストオリジナルアルバム「WHO KiLLED IDOL?」

WHO KiLLED IDOL?

WHO KiLLED IDOL?

WHO KiLLED IDOL? (ALBUM+DVD) (MUSIC VIDEO盤)

WHO KiLLED IDOL? (ALBUM+DVD) (MUSIC VIDEO盤)

WHO KiLLED IDOL? (ALBUM+DVD) (高価映画盤)

WHO KiLLED IDOL? (ALBUM+DVD) (高価映画盤)

感想、暗い。

やっぱり15曲中、9曲が「BiSは今ボロボロだ。これからどうしよう」的な歌というのは重すぎじゃないですか。

西原理恵子の「ぼくんち」に、ヤク中だった父の葬式で、ひとりぼっちになった少女が「息するたびにな、ノドの奥に小石みたいのがたまるんよ。食い物の味わからへん」と言う描写があるんだけど、その例えでいくと大量の石ころをのどに無理やりつっこまれてる感じ。

もちろん、同じ「BiSさんどうしよう」でも、「Hide out cut」「BiSumilation」「Fly」「primal.2」は、それぞれが違うニュアンスの歌ではあるけど。

ただ、私は何よりBiSの歌詞が好きだったので、アルバム新曲にはちょっとがっかりしている。

たとえば、2013年3月に発売された「BiSimulation」は、同じ破滅の歌でも、言葉の面白さが全然違う。
「終わる消える 溶ける未来はなってない」なんて歌詞なのに「サイレント」「ピーポー」「cue cue」というフレーズが合いの手のように入る。「ピーポー」はプー・ルイがBiSの現状の危うい感じを表そうとして入れた言葉らしいのだけど、なんだか間が抜けていて、キュート。このパートを、キュートな歌声のプー・ルイ、みっちぇる(ミチバヤシリオ)が担当しているからなおさらだ。(今はみっちぇるパートにコショージメグミが入っている)

日高 そんな理由! アーティスト性のかけらもねーじゃん(笑)。歌い出しの「ピーポー」っていうのは、救急車?

プー 今のBiSの現状ですかね。いろいろ悩んだんですけど、危ない感じを出したいなとは思ってました。ギリギリな状況とか。

しかし、今回のプー・ルイ作詞の「nastyface」は「どうすりゃいいの? アイディアも枯れ 八方塞がり このままじゃ 99パー失敗だ」って、ストレートで余裕がなさすぎる!
同じプー・ルイのアイディアでも「PPCC」における「ぺろぺろちゅっちゅー」的な遠慮のないキュートな言葉選びのセンスがない。

それは「MMGK」も「ERROR」も同じで、感情が歌詞として濾過されていない。どうしてこういう歌ばかりなんだろうと思ったら、どうやらアルバム制作にあたって「今のBiSに対する不満を書いて」というオーダーがあったらしい。

アルバム制作中はどんな気持ちだったんですか?

プー:ツアー前半から引きずっていた不穏な空気をまとったまま録ってて、この時期は全体的にまとまってなかったというか。 “いまのBiSの不満を書いて”と言われて、歌詞を書いたりして……。変な感じでしたよ。全部ネガティブなんですよね

BiSの運営のそういうところがなー!

ストーリー作りのコンセプトとして、破滅に向かうイメージを押し出そうとしているのはわかるのだけど、おかげで女の子たちのキラキラした一瞬を楽しむっていうアイドルの基本が抜け落ちて、オタクのモチベーション落としてる。

まあ、別にどんなストーリー作りをしようと勝手なんだけど、最終的に売れるのが目標なら「向日性・萌え・目新しさ」のうち、ふたつは必要だと思うんだ。これは出版業界でモノ売ってた個人的な経験則的に。

萌えといっても、あからさまな「猫耳メイド的萌え」じゃなくて、シンプルな「かわいさ」でよかった。
目新しさは本来BiSのコンセプトそのものが持っていたはずの部分だ。
向日性は目標に向かって前進することで生まれてくるはずのものだろう。

でも、アーティスト写真はどんどんゴツくなるし(かっこいいといえばそうなんだけど)、運営はメンバーを追い詰めることでストーリーを作ろうとするし、あげくに過去の焼き直しの「primal.2」なんて曲を作らせちゃうし……。


「Brand-new idol Society」と「IDOL is DEAD」。
過去2枚のアルバムのおもしろさは「こんなもの、初めて見た!」という感動だったと思う。
でも、今回のアルバムには残念ながらそれがない。

あと、「Hide out cut」のみ、アルバム参加メンバーで録音されているのだけど、音がちょっとこもっているように聴こえるのは気のせいか……。もっと丁寧に作ってくれ……。

まあ、しかしできたもの、過ぎたことに対してどうこう言っても仕方がないのだった。

運営とのイラっとした思い出を抜きにすれば、収録曲のクオリティは高いし、面白い。
ロックに詳しくないから楽曲提供陣のありがたみはわからないのだけど、密度の濃い聴き応えのある曲が集まっていると思う。
だからこそ、それがコンセプトとしてうまくまとまってないのが惜しいのだけど。

新曲だと、Schtein&Longerの曲にウイぽん(ファーストサマーウイカ)の歌詞の「マグマト」はテンコ(テンテンコ)の声を活かしたけだるさがエロティックだし、コショージの無邪気な歌詞と、突然の転調が爽快な「no regret」もチャーミング。

どちらもダンスがよく考えられている。
「マグマト」は落ちサビでプー・ルイ以外のメンバーが客席に背を向けて指パッチンする場面があるのだけど、これが2階席など高い位置から見るととてもかっこいい。
けだるい歌詞に合わせたシンプルな振り付けもいい。

「no regret」はコンテンポラリー・ダンスを意識したという蝶を追うような動作が可愛らしく、それから転調に入った際の「ザマアミロ」って感じのテンションの高さのギャップがとても面白い。

あとは、「MMGK」も、最初に感情が濾過されていないって批判したけど、そのかわり「わからない部分がひとつもない」という意味では大衆性は高いと思う。皮肉ではなく。

私が好きな歌詞に「hitoribochi」の「愛しいなんて簡単な言葉だけ なんて足りない いつだってそうさ 君に届かない カテゴライズしたくない」といのがあるのだけど、これに比べると「ぼくにだってできるはず 我武者羅につかみとる 笑われても」のわかりやすさ!
個人的には曲も歌詞もそんなに好きではないのだけど、人をつかむ明快さは持っていると思うし、だからこそライブでよく披露されるのだと思う。

カバー曲の「プライマル。」は晴れ晴れとした曲調と明るい声が、3月の晴れの日の、卒業式の午後を思わせる普遍性があってとても気持ちいい。
ライブではメンバーがドミノ倒しみたいにごっつんとぶつかる振り付けと、手をつないで膝をついたメンバーがプー・ルイを囲んでぐんぐん立ち上がる振り付けがとても切ない明るさに満ちている。
卒業して、歩き出すための歌だ。
でも、この爽快さをメンバーの歌詞で、松隈さんの曲で出来ていたら。
そうすれば、誰に気兼ねすることなく名盤って言えたのになあ。

そんな複雑な思いが交錯するラストオリジナルアルバム「WHO KiLLED IDOL?」でした。
みんな買え!