年末に寅さんを20分ほど見た。
事前の知識通り寅さんはきれいな女性に振られて家を出て行った。別れ際に、妹に自分を振った女性のことを「あの人は芸術家(画家)だから、生活が苦しいこともある。きちんとごはんを食べていないようだったら、何か暖かい物でも差し入れてやってくれ」と言伝していく寅さんを「いいやつだなあ」と言いながら見送った。
「いいやつ」のことを心からいいやつだと思える映画はよい。正月映画らしいたたずまい。
それにしても寅さんが着ている背広と帽子が見るからにいい背広で驚いた。量販店のスーツ屋にはこんなしっかりした生地の背広は置いていない。
言うまでもなく寅さんが特別裕福なわけではないだろう。かつて背広はオーダーメイドで、同じ服を何年も大切に着るものだったから、寅さんだって自分のためにあつらえたすてきな背広を着ているのだろう。
私たちが服とこういう風につきあうには決意が必要だ。私がオーダーメイドのスーツを買ったのは就職活動の時で、今のところそれ一回きり。
ぺらぺらの背広は便利でありがたいけど、大事にしようという気がおきないところが少し悲しい。