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ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

第64回紅白歌合戦

音楽 アイドル

 物心ついた時から紅白はひまつぶしに見るものと思っていて、特に最近はJPOPの歌詞の平坦さをdisるだけという不毛な観賞態度で見ていた。

 しかし、今年の紅白は違った。見慣れた紅白歌合戦ではなく、演者それぞれが「いかにして見た人の印象に残るか」を競い合う宴会場のようだった。

 最初に突っ込んできたのは司会の綾瀬はるかだ。それまで台詞は噛むわ、曲名は忘れるわで視聴者をハラハラさせていた綾瀬が、震災復興ソング「花は咲く」の合唱を前にし、被災者にメッセージを送る場面で突然涙を流し始める。綾瀬は会津を舞台にした大河ドラマ「八重の桜」の主役を務め、何度も福島を訪れていたから、感じるところがあったのだろう。紅白の最中に子供のように泣く綾瀬はプロの司会者ではなく、フツーの女の子だった。

 その瞬間、少女マンガにある「隣の女の子が泣き出しちゃったのを見てその子のことが愛おしくなっちゃって、必死でなぐさめちゃう」感覚をお茶の間が共有し、2割くらいの女性が「こんなところで泣くなよ、ブリッ子が!」という怒りを育てていたはずだ。

 綾瀬の天然アイドル力に驚愕していたら、しばらくしてももいろクローバーZが登場。まるでキン肉マンアシュラマンのような衣裳で出てきて新曲を歌った後に、舞台から降りてきてももクロファンで有名な田中将大を取り囲む。最初のインタビュー場面で田中とももクロが話していたとはいえ、ほとんどの視聴者にこの関係性どうでもいいんじゃないか?

 次に登場したゴールデンボンバーは、「女々しくて」を歌いながらいきなり体操の鉄棒を舞台に運び込む。メンバーの一人が鉄棒をグルグル回り始めたと思ったら、もう一人は舞台の上でバク転を開始する。審査員席に向かったカメラでは皆が10点の札を掲げている。

 再びカメラは舞台へ……と思ったら、ボーカルがいきなり走り出し、舞台裏手に行くとそこにはちゃんちゃんこに浴衣の「本物のゴールデンボンバーメンバー」が。勢揃いしたメンバーの上にたらいが落ちて終わりというめまぐるしい締め。

 まるでモンティパイソンのようなオチにぽかーんとしたまま番組を眺めていると、特別枠としてアイドルがテーマの朝ドラ「あまちゃん」のコーナーが始まった。作中に登場するアイドルソングを次々と歌い出す俳優達。特に、上京を望んでいながら岩手から出られないまま終わるユイちゃんが紅白に登場した場面は、ドラマの視聴者にとって、感動的な瞬間だった。

 その後はPurfume、きゃりーぱみゅぱみゅなど凝った演出の歌手が登場したところで、美輪明宏が「ふるさとの空の下へ」を歌い上げる。美輪の歌は音源で繰り返し聴いていたので、その声の衰えを少しさびしく思いながら聴いていた。

 美輪の次はAKB48メドレー。1曲目の「恋するフォーチュンクッキー」を歌い上げた後、いきなり卒業宣言をする大島優子。そのまま次の曲に突入し、あっという間にAKB48の出番が終わる。「いやあ、卒業ですか!」という短いコメントを司会の嵐から受け取り退場するABK48。

 そして最後は龍の上に乗った北島三郎による「祭り」で、最後は皆が舞台に上がって紙吹雪で大団円。

 曲はじっくり聴かせる曲より、お祭り調のみんなでわいわい言いながら騒げる曲が中心で、歌合戦というより盆踊り会場。

 一番話題になったコーナーは特別枠「あまちゃん」コーナー、あるいは北島三郎大島優子の卒業宣言という内輪ネタで、なんだか全体的に茶番感の強い内容だった。

 でも、だからつまらないというわけではなく、思わず目を離せない内容だったのだけど、公共放送がこんなにサブカルになっていいのだろうかという驚きはあった。

 美輪や泉谷らのちょっとだけアンダーグラウンドな部分に、卒業宣言などの過剰な物語があって、あまちゃんは内輪ネタで思いっきり盛り上がる。

 でも、祭りの時間はみんな仲良く御輿を担ぐ。

 すごく面白かったけど、歌合戦じゃなかった。NHKはこの過剰なショーの後に何をコンセプトにするのだろうという疑問も湧く。楽しいけど、ネタで闘い続けると待っているのは息切れだから、歌合戦という着地点は保たなくてはいけないはずだ。

 紅白がどんどんネタに走って、ある日突然小林幸子のように飽きられる日がくるのだろうか……。