ホンのつまみぐい

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BiS x でんぱ組.inc@なんばHatch

 アイドルオタクになるきっかけになった「でんぱ組.inc」と、アイドルオタクであることの喜びと悲しみを教えてくれた「BiS」の対バン。

 10月に東京で行われたライブがどちらのファンにとっても高評価だったので、期待感と不安感を持って横浜から大阪間を青春18きっぷで移動。18きっぷで西日本に行くのは初めてだったけど、意外と楽しい。

 地理に弱いので、「浜松と掛川は近いのか!」「名古屋と岐阜の距離感はこんなものなのか!」と素朴に感動。関ヶ原駅前に広がる野っぱらは想像力をかき立ててくれる風景だった。米原〜大阪間で急に周りの人が関西弁になるのもおもしろかった。

 大阪について路線図の「尼崎」という文字に、例の事件を思い出してしまって複雑な気分になる。東村山がそうであったように、尼崎はこれからずっとあの事件ととも記憶されてしまうのだろう。

 なんばハッチは2階をあけずに9割くらいの入り。年末仕事納めの人も多いためか、若い人が中心だったように思う。「アイドルのライブ初めてなんですよ!フェスでBiSの噂を聞いて、でんぱも聴くようになって……」という女の子の声を聴いて、何となく両グループに心の中でエールを贈る。

 でんぱとBiSが入れ替わりでライブをする構成で、先攻はでんぱだった。

 横浜のリリースイベントで舞台袖から見てその複雑さを実感していたせいもあるけれど、でんぱの振り付けは本当におもしろい。マスゲーム的なフォーメーションの美しさとも、アイドル的なしぐさのチャーミングさとも違うミュージカル的な振り付け。

 でんぱれーどJAPANのみりんちゃん(古川未鈴)のがに股とシコ踏みからの戦隊モノポーズは、何回見てもアニメのオープニングのような始まりの高揚感がある。

 新曲「VANDLISM」のねむきゅん(夢眠ねむ)が、じたばたと体を揺らすピンキー(藤咲彩音)を抱えあげるところや、演歌調のパートをりさちー(相沢梨沙)とえいたそ(成瀬瑛美)が歌う際のわざとらしい演歌歌手調の振り付けもよい。

 この日の衣装はスピンズが提供したチアガール風衣装。メンバーごとに色分けされた衣装がライブハウスの黒い背景に映えて、お祭り感を盛り上げていた。客席のサイリウムの美しさは絶景!

 後攻のBiSはIDOLからスタート。この日は舞台と客席の間に距離があったので、ダイブも指タッチもないなと思ったら、なんといつの間にか舞台からサキちゃん(カミヤサキ)が消えていた……。ライブ後に検索したらダイブの美しさが話題になっていた。どんなダイブだったんだろうか。サキちゃんは終始前のめりなステージングで、声もよく出ていたし、MCもうまくオタをコントロールしていた。

 BiSはSTUPiGとPPCCの各メンバーの声ののびが気持ちよく、特にPPCCののんちゃん(ヒラノノゾミ)の落ちサビと、STUPiGでのウイぽん(ファーストサマーウイカ)とプーちゃん(プー・ルイ)のまっすぐな歌唱は聞き応えがあった。STUPiG、PVで聴いたときは音はいいけど後ろ向きな歌詞で何となく好きになれなかったけど、ライブではメイン二人の歌の力強さもあってなかなかいい感じ。ウイぽんは11月の自家発電ぶりだったけど、ツイッターでもライブでもはしゃいでいる感じでほっとした。

 総じていいライブだったと思うけど、セットリストは両者とも定番すぎて物足りなさも感じた。

 双方もっと持ち歌の手広さをアピールしてもよかったんじゃないだろうか。でんぱはアルバムの新曲が1曲だけだったのが意外。BiSもファーストアルバムの曲にも心をつかめる曲がたくさんあるのでもったいない。

 アンコールはカバー曲を交代で披露。でんぱのIDOLはアレンジも振り付けもレベルが高く、完全に自分たちの持ち歌にしている感じ。ディズニー的な華やかさがある。

 BiSのでんでんぱっしょんがのんちゃんの萌え声くらいしか聴きどころがないクオリティだったのと対照的だった。

 コショージさん(コショージメグミ)がもがちゃん(最上もが)に「振り付け覚えてないでしょ!」とつっこまれていたのも、苦い気分になった。私は彼女のそういう部分を肯定できるタイプではないことを再確認。もっとも、そういうアイドルがいてもいいし、彼女個人を否定するわけではないのだけれど。

 でんでんぱっしょんの出来に関してでんぱオタから失笑されていたのでツイッターでつぶやいたらサキちゃんから初ふぁぼをくらってしまった。

 しかし何でたくさんの曲の中からでんでんぱっしょんをアレンジに選んだのかは謎だ。口づけキボンヌのアレンジなんかが聴きたかったけど、カバーの了解が取れたのが玉屋2060%さんだったのだろうか。

 さておきライブは両メンバーからの「よいお年を〜〜」というあいさつでまったり終了。

 アメリカ村の居酒屋でごはんを食べて、カプセルホテルで寝る。カプセルホテルの利用は3回目だけど、いつ行っても外国人が多い。なぜかオーストラリアの当て字が書かれたTシャツも販売されていた。

 起きて何となくなんば駅まで歩いていくと、途中で風情のある喫茶店を見つけた。橋の横のビルの地下1階。ポパイのイラストに船の舵。

ケレン味のある外装に惹かれハズレ覚悟で入ったら大当たり。店内は船室に似せた丸窓と立派な模型が印象的。一見過剰なのに、店内にはくどい自己主張を感じさせない、なじんだ空気が漂っている。清潔な店内で、何十年もこの仕事をしているようなおじさんがメニューを持ってきてくれる。なんてことないモーニングセット350円はコーヒーがおいしくて、丸窓から差し込む朝の日の光にぴったりあっていた。




 この後別の店でもコーヒーを飲んだし、道中でお弁当を食べたりもしたのだけど、この店の居心地の良さとコーヒーのおいしさにはかなわなかった。豆が特別違うという感じではなく、入れ方が丁寧なのだと思う。

 自宅では粉からコーヒーを入れているのだけど、ああいう丁寧な仕事で出されたコーヒーをいただくと、もっと家でもきちんと豆のおいしさを引き出す入れ方をしなくてはいけないと思わされる。

 おみやげに蓬莱の肉まんとたこ焼き形のせんべいを買って帰浜。

セットリスト(細かい順序はあいまいです。間違ってたらすみません)

1.でんぱれーどJAPAN
2.Sabotage
3.VANDALISM
4.Future Diver
MC
5.W.W.D
交代
6.ORANGE RIUM
7.キラキラチューン
8.でんでんぱっしょん

en.
IDOL

1.IDOL
2.GMYL全部
3.nerve
4.PPCC
MC
5.Hide out cut
6.primal.
交代
7.Stupig
8.Fly
9.DiE

en.
でんでんぱっしょん

 余談。

 今回は目的地も時間も決まっていた旅行だったけど、青春18きっぷでの移動は思いの外楽しかった。

 駅名を次々見送っていく瞬間、聞いたことはあるけれどどんな土地かはさっぱり知らなかった地名の数々が、ちょっとだけ実体化されていく。ひとつずつシールを貼って、マスを埋めていくような気分。

 聞き覚えのある駅名でふっと降りて何となく町を散策したくなることがあって、目的地さえなければそういう旅をしてもいいのだなと思わせる気楽さもよかった。

 どこで降りてもいいし、降りる場所も選べるというのは青春っぽい。そこまで考えての名付けかはわからないけれど、青春18きっぷという名は秀逸だと改めて思った。