横浜駅から徒歩8分の漫画喫茶「横浜へそまがり」で行われた屠殺から調理までの過程を体験するワークショップ「鶏と殺」に行ってきました。
店長であり主催者のへそまがりさんが関東で屠殺のワークショップを行っている桂肉介さんに声がけし、急遽開催が決定したそうです。
当日は港北区の養鶏場から買った2羽の鶏の屠殺・解体が行われました。参加者は12名。客層はお店の常連さんが中心。
まずは鶏の羽の付け根を縛り、鶏の動きを止めます。ひざで体全体を押さえつけ、首の頸動脈を捜し当て、頸動脈に包丁を入れます。血が垂れてくるので、逆さにして1分半ほど血を抜きます。
尻の動きが止まり、目が白くなったら、お湯につけて羽根を抜きます。お湯に漬けると毛穴が開くため、毛を抜きやすくなるそう。意外なほど抵抗なく抜けるため、毛抜きが楽しくなってきます。
毛を抜いた後、火であぶって細かい毛を焼き、頭とモミジを落とします。
次は解体。最初にももに刃を入れ、胸、ささみなど順次肉の部分を切り離していきます。
ガラを外してキンカン、ハツ、砂肝など内蔵の食べられる部分を取り出します。印象的だったのは砂肝でした。鶏はもともと消化を助けるために砂が体内にため込んでいるそうです。この日の鶏は外飼いではなかったため、砂は入っていませんでしたが肝の中に飼料らしきものがつまっていました。
当然ながら、内臓は鳥一羽あたり一つずつしか取れません。スーパーで買うぎっしりつまった300gほどの砂肝やハツが、何匹の鶏を締めてできたものと考えると、鶏モツのありがたみが増します。
今回絞めた鶏は見た感じ決して小さい鶏ではなかったのですが、精肉用ではなく卵を生ませるための鶏のため、裁いてみると手に入る肉はほんのわずか。
精肉用に最適化されたブロイラーの場合は1ヶ月半で大きく成長するため、大量の軟らかい肉が取れるとのこと。
近所のスーパーなんか鶏胸肉100g36〜42円なのに、肉ってどれだけコストダウンしてるんだ……。
さていよいよ食事。
皮はカリカリせんべい風に、肉は炒め物やスープに変身。血を鍋に流し込み、プリンのように固めたものを食べたりと、なかなか楽しい。
味は濃いように思ったけれど、それより肉の固さが印象に残ります。たしかに今の柔らかめの肉に慣れると、これは食肉としては売れないかな。
屠殺という体験を経て、生命に対する認識が大きく変化するかと思ったけど、鶏の屠殺は魚を殺すよりちょっと生々しいくらいのインパクト。鳥類を飼ったことがあればまた違うのかもしれないけど、そこまで「インド旅行前・旅行後」的な価値観の変化はありませんでした。
それより、一羽の鶏から肉を取るための手間の膨大な手間に驚きました。
殺して、血を抜いて、羽を抜いて、内蔵を抜いて、部位ごとに切り分けて……。とにかく肉になるまでが長い。精肉業者の方々に感謝の意をのべたくなるめんどくささ。
内澤旬子さんの「飼い喰い 三匹の豚とわたし」に自分が育てた豚を食べる話があり、肉が出荷されるまでの膨大な手間に驚く場面があるけれど、その驚きを少しだけ実感できたことが貴重でした。
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