ホンのつまみぐい

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ドラマ「高校教師」

 厨二病というカテゴライズからふと野島伸司の「高校教師」を思い出した。

 「高校教師」は93年に大ヒットした野島脚本の連続ドラマだ。女子校に赴任した教師・羽村真田広之)は、快活な生徒・繭(桜井幸子)と心を通わせるようになる。しかし、彼女には人に言えない秘密があった…。純愛ドラマなのだが、近親相姦、同性愛、レイプとショッキングな事件が次々挿入される。

 1993年の作品で、本放送以降一度も見直したことはないのだけど、この作品のすごいところはそういった性による暴力を絡めながら、それがまったく政治的に扱われていなかったことではないかと思う。

 父に強姦された繭の傷も、教師に強姦された繭の親友・直子(持田真樹)の傷も少女たちのはかなさを強調させるための意匠にすぎない。汚れれば汚れるほど、また無垢も引き立つ。繭の悲惨さが強調されるほど、羽村への愛は純愛としてランクの高い位置におかれるのだ。

 また、男たちの描写もシンプルで、本来裏表であるはずの「略奪者と英雄」も常に明確に切り離されている。

 そこに強姦という犯罪への関心は無く、ただただ悲劇のドラマの一要素として利用されている。

 しかし、その狭い視線ゆえに「高校教師」は「純愛ドラマ」として成功している。ガラスの中に閉じ込められたような、頼りない大人たちとそれを許す少女たちの物語として。

 森田童子がはかなく透明な声で歌う「ぼくたちの失敗」が桜井幸子の透明感を引き立てる。

 野島は「ギリシャ神話のような作品を作りたい」といってプロデューサーを説得したそうだ。たしかに、人間の欲望と願望を描き連ねた上で、最後に死を持って主役二人が純愛へ逃走するという最終回は神話的と呼んでもいいくらいのシンプルな陶酔がある。(ラストの解釈は意見がわかれるところだが、私は2人とも死んだという解釈を取る)

 そういった作者の脳内に直接接続したような小さな世界を徹底して磨き上げたという点において、たぶん「高校教師」も傑作の1つだったのだろうと思う。見直したら評価変わるかもしれないけど。

 あと、森田童子を教えてくれたことにはただただ感謝。

高校教師 DVD BOX

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