ホンのつまみぐい

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「はじめちゃんが一番!」

はじめちゃんが一番! (1) (小学館文庫)

はじめちゃんが一番! (1) (小学館文庫)

 あいどるあいどるうるさかったせいか友達が無言で送ってくれました。
 ありがとうございます!

 5つ子の弟を持つ主人公はじめちゃん。5人組アイドルユニット「A.A.O」(エイエイオー)としてデビューする5つ子。そして、芸能事務所の先輩である江藤亮と和田瑞希によるユニット「WE」が主な登場人物。

 恋する女の子として瑞希に憧れながら「A.A.O」のマネージャーとして活躍するはじめちゃんと、それを取り囲む人々の物語です。

 しかしながら、はじめちゃんはほとんどの場面で傍観者&ギャグ担当で、「A.A.O」と「WE」を通して描かれる芸能の厳しさなんかの方が面白かったりする。

 渡辺さんのアイドル好きを感じたのは、5人組の命名シーン。「何かないもんかな こう…彼らのイメージに合った きどらず 元気がよくて 耳に残る ハイセンス かつちょっとダサいみたいな名まえが」で出てきたのが「A.A.O」(エイエイオー)。正直天才と思いました。

 また、瑞希が尊敬していた作曲家から提供された曲が凡庸でつまらない曲だった時の、「WE」のふたりの対応の違いも面白い。瑞希は裏切られた気持ちになり「歌いません」と宣言し、直接作曲家へのコンタクトを試みます。一方で、亮は静観しつつ、そのつまらない曲を聴きこみます。

 なぜそんな曲を聴いてるんだと瑞希に問われた亮は、「つまんない曲だから好きになってあげようと思って」「これは"WE"のために生まれてきた曲なんだから」と穏やかに返します。

 さらに、グレートディスク大賞の最終候補に選ばれた「WE」のディスクを最終的に大賞に押し上げるため、事務所の社長が裏金を使うというエピソード。瑞希は怒りが収まらずに辞退を計画しますが、はじめちゃんや社長、そしてファンの、「裏に政治的な意図があろうとなかろうと、"WE"は大賞受賞にふさわしいと信じている」という言葉に動かされ、大賞を受け取るのでした。

 この2つのエピソードは、アイドルというものが「曲やダンス、そして思いを引きうける職業である」ことがうまく描かれていて、アイドルという仕事に対する渡辺さんの敬意と観察が見事に表現されていると思います。

 芸能事務所のモデルはジャニーズ事務所らしく、当時トップアイドルだった「光GENJI」を連想させます。髪型とかね。

 さて、ここからネタバレなのでちょっと下げますね。











 まあそういうわけでアイドルマンガとしては面白いし、楽しく読めたのだけど、最後の展開はかなりしんどかったです。

 途中で登場するマイペースな才女・乃亜が瑞希と恋仲に落ちるのだけど、なんと彼女は写真の修行のために旅だったアメリカで刺殺されてしまうのでした。落ち込む瑞希を慰めるために、彼と結婚しようとするはじめちゃんですが、瑞希は乃亜への愛、はじめちゃんは亮への愛を確認して終わるのという……。

 乃亜さん、えらいひどい死なされ方ですな、おい。

 乃亜は終始知性があってマイペースで、しっかりと自分の世界を持っている、はじめちゃんより一枚上手の年上の先輩として描かれていたので、そういう人がこういう雑な死なされ方をしてしまうのは残念です。

 木原敏江の「摩利と真悟」でも、真悟が唯一愛した女性のドリナは積極的で知性的で、使命感があって、でも「摩利と真悟」の仲を引き立てるために使われてしまう。

 読者にとっては感情移入できないキャラだから、そういう風に使われちゃうってことなんですかね。ドリナも乃亜も……。

 そんで、ほかの人の感想読んで「ああ!」って思ったのが、「はじめちゃんは母親キャラだから、ホモソーシャルやトラウマも最終的にグレートマザーが解消してめでたしめでたしなんだよね」っていう解釈で、「幼女と母親と、その母親の娘である自分」しか描けないって腐女子にありがちな弱さだよなあと思って妙に納得してしまいました。

 ほかはとても丁寧で好感を持って読んだだけに残念……。