ホンのつまみぐい

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「浅間山荘から四十年 当事者が語る連合赤軍」あと梶原一騎作品とその時代についてちょっと

連合赤軍のシンポジウムを聞いての帰りがけ、自分が60〜70年代になんとなく心を引っ張られる理由はなんだろうと思い返していた。

最初のきっかけは、おそらく中学生の頃に観た「私が愛したウルトラセブン」だ。父が子どものためにと録画してくれたウルトラシリーズを、それなりに熱心に観ていて、ドラマも真剣に観た。アンヌ役のひし美ゆり子の目線から、ウルトラセブンの制作者たちと、68年という時代を描く不思議なドラマだった。アンヌたちがベトナム戦争から逃げ出した米兵をかくまうというフィクションが挿入されていたり、金城哲夫が自分にとっての沖縄について言及していたりという、メタな演出の多い作品だ。作家の内面を通して物語が生まれ、そうして出来た作品が後から観ると時代を映すことがあるというのを、初めて知った作品でもある。それからちょこちょこ寺山修司あしたのジョー森山大道、そして梶原一騎という形で60〜70年代文化の影を追ってきた。今思うと、熱気の感じられる当時にあこがれていた感もある。

ベトナム戦争のことを「私が愛したウルトラセブン」で知った私は、ドラマの中で米兵をかくまった活動家に共感していた。だから、自分が当時の学生だったらおそらくなにがしかの活動に参加していたと思っている。それを踏まえた上で、浅間山荘事件については「善良で知性的だったであろう人々がなんで仲間を総括という名で殺すようなことをしたのだろうか」と考えて保留していた。

 シンポジウムのことは山本直樹が出るという話で知り、政治的な興味関心より、60〜70年代文化と連合赤軍事件がどう結びついていたのかの確認作業のために見に行った。

 会場は目黒区民センター。シンポジウムは4部構成になっていて、第1部以外は当事者青砥幹夫、植垣康博、前澤虎義、雪野建作らにゲストが質問をするという構成になっていた。司会は金廣志、椎野礼仁。少し道に迷って第1部「映像でふりかえる」は観られず。塩見孝也三上治鈴木邦男らの登壇する第2部の途中から会場に入る。(敬称略)

 会場全体から漂う疲弊した空気にまず驚く。シンポジウムってたいがい緊張感はあるものの、もっといきいきしたもののような気がするが。聴講者は70名くらいか。当事者世代のほかにも何人かいる若い人たちは、私と同じようなレッド読者なのだろうか。

 いろいろ印象深いシンポジウムだったけれど、印象に残ったのは当事者たちがかなり感傷的なレベルで「ほんとうの自分たちを理解してほしい」と思っているように見えたことか。シンポジウムの最後に、金は「真実を届けなければ、同じことが繰り返されると思って活動している」と言っていた。「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言葉を口にして、善意によってあれだけの事件が起こったと話す。真実を伝えたいというその言葉に嘘はないのだろうけど、一方で「俺たちは世間のイメージする頭の悪い凶悪犯じゃないよ」という意思表明があるように感じられた。当事者たちは、こっちから見ると一線超えちゃった人だけど、実際見てみると普通の人たちだ。肩書きも、塾講師、会社員、IT系会社役員、スナック経営、塗装会社現場チーフと、きな臭さを感じさせるものは一切なくて、あくまで普通。いや、むしろ本を全然読まない人なんかに比べると「酒呑む分には楽しい人」な可能性が高い。それでも、歴史に後々まで残る大事件を引き起こした人たちなのだ。雨宮処凛が途中で「浅間山荘事件以後、政治に関わること全般にマイナスイメージがある。それは赤軍の責任では」と聞いていたが、雪野と青砥はそれぞれの言葉で「そこまで責任はとれない」と言っている。具体的に責任をとれとはこちらも思わないけど、あまり歴史意識がないのだろうか……。

 三上や塩見はいまだに政治活動に関わっているそうで、それは「反省がない」と糾弾すべきことなのか、新たに社会改革に挑むその真剣さに感じ入るべきなのか。ツイッターには「同窓会ノリには違和感」と書いている人がいた。たしかに植垣や金は明らかに場慣れしていて、でも、だからといって体験をうまく消化できているわけでもなく、どうも時間の止まったままの反省会に迷いこんだような気分にさせられた。『レッド』の雰囲気がいかに当時を活写しているのかの証明をされているようでもあった。

 打ち上げには聴講者も参加可能だったのだけど、金が「ファンだといってずっと隣にいられる人とかは困ります」と言っているのも不思議な気分に。まだ神格化している人もいるのか…。

 さて、当初の目的である当時の文化にとってどう影響を与えていたかについては大変収穫のある時間だった。まあ、当時っていうか梶原一騎なんだけど。

 三上の「身体を賭けることで社会への参加を自覚できる」や、植垣の「文章を書いているだけでは駄目で、行動しなくてはと思った」というのは、ある意味で身体性の復活を描き続けた梶原一騎の思想に呼応するだろうし、田原牧の「飛躍しようとしている瞬間はとても誘惑的だ。それが社会に背を向ける行為であれば、なおさら戻ることはできない」というのも、きわめて梶原主人公的だ。ニュアンスをうまく再現できなくて申し訳ないが、肉体を伴う真摯な行動の果てに新しい世界が開けると彼らは本気で思っていたようだ。そして、それは活動家だけでなく、時代全体を覆う空気でもあったはずだ。
2011年2月10日号の中央公論で、四方田犬彦ちばてつやに「明日のジョーなんて表記をした連合赤軍にはジョーのことがわかってない」という主旨のことを語っている。でも、今日のシンポジウムで聞く限り赤軍派が『あしたのジョー』に共鳴するというのは非常によくわかったし、同時に梶原一騎がいかに時代を体現した作家だったかは証明されたように思う。私は四方田のその様子に、「おれとあいつらとを一緒にしてほしくない」という気配を感じた。

 団塊世代の文化人の多くは「梶原一騎はダメだけど、『ジョー』だけはあり」と言う。『ジョー』は革命が何も生み出せず、禍根だけを残して終わった時代の思想を体現しながら、普遍性を持った美しい神話として解釈できるからだろうか。彼らは『ジョー』を、時代の成果として御輿の上に乗せていたいのかもしれない。そして、父という旧世代の因縁に絡め取られたまま破綻してしまう飛雄馬を必死になって否定するのだろうなと思った。これは米沢嘉博が『戦後野球マンガ史』で書いてたな…。しかし、『ジョー』だけを御輿に乗せて、ほかの作品をおとしめて無視しようとするのは自分たちの体験に向き合うことを避けているからではないのだろうか。団塊梶原一騎評価の多くは「当事者だからこそ、公正でも客観的でもない」。その理由が少しわかった気がした。


以下は印象に残ったことの箇条書き。ざっと書いたメモをそのまま起こしたものなので、ニュアンスの失われた部分や、聞き取りミスもあると思うので、ご容赦いただきたい。

第2部
・鈴木 革命の楽しさをもっと話すべき。失敗しなかったら貴重な犠牲と言われたのでは。 
・三上 身体をかけることで社会への参加を自覚できる。社会性=他社との関係。近代的理念と肉体の間に距離があった。武装闘争が成功して社会が変わるというふうにはあまり考えていなかった。
・鈴木 左翼の人は、自分たちと似た違う人たちを排除したがる。人への期待度が高すぎるのではないか。出来るやつしか取り込まない。
右翼はだめなやつでもとりあえず一緒に行動する。その点人間を大事にしてる
・三上 会社の社長などをやって、それは実感した。近代的社会観は日本に昔から根付いている義理人情などを超えられなかった。人を大切にしなかった。
・塩見 革命的敗北主義でいいと思っていた。(武装闘争自体がすぐに成果につながると考えていたわけではないくらいの意味なのか?)

第3部 ゲスト 森達也、田原牧、大津卓滋
質問:山を下りることもできたはずなのに、なぜとどまったかに対して
・青砥 仲間を死なせてしまったから、今更降りれない。
・植垣 これだけやってしまったのだから逃げても仕方がないと思った。

・金 若松孝二監督は「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」で、加藤君に「勇気がなかった」と言わせている。そう言わせることで、観客は満足できる。市民社会に取り込もうとする。しかし、それは事件の矮小化だ。
・田原 新聞社での夜回りなんかもそうだけれど、血を吐く(このへん記憶が曖昧ですが文意としてはこんな感じ)までやれと言われる。無理をして飛躍をしようとする時は、とても誘惑的で気持ちがよい。それが、市民社会へ背を向ける戦いであればなおさらだろう。誘惑に負けないようにという教訓だと受け止めたい。
・植垣 勇気がなかったんじゃなくて、勇気がありすぎたんです。

第4部 山本直樹雨宮処凛、ウダタカキ、小林哲夫、赤岩友香
・小林 「植垣さんかっこいい!」と言う20代の女性がいる。新撰組的な存在なのか。一歩間違えると美化しちゃう。

・雨宮 浅間山荘事件以後、政治に関わること全般にマイナスイメージがある。それは赤軍の責任では?
・雪野 正直今更それを言われてもという気分もある。
・青砥 やめるのはあんたたちの勝手でしょう。

・雨宮 当時本気で革命で世界が動くと考えていたのか?
・雪野 そう思ってた。全くの無力感にとらわれている人はいなかった。
・植垣 もしかしたらひっくり返せるかもしれない。そのためには文章を書いてるだけじゃだめで、行動しなくてはいけないと思った。しかし、70年代の問題は全然解決していない。
青砥 すぐに成し遂げられるとは思っていなかった。
前澤 ベトナム戦争に対する責任で、やらないといけないと思っていた。何十年もかかると思ってた。自分の組織はつぶれるだろうと思っていた。


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