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ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

「伝説の雑誌「COM」 コミックス×コンパニオン×コミュニケーション」展関連イベント“石井文男、野口勲トークイベント『COM』誕生秘話”

マンガ

快晴の護国寺
前々日は手塚治虫の命日で、ツイッターではトリビュート企画が盛り上がり。
朝の10:30から茨城で震度4という日。

マンガ関係のお仕事をされているIさんがツイッターで案内されていた、梶原一騎大山倍達手塚治虫のお墓参りに同行させていただきました。

小説家の奥田鉄人さん、マンガの研究をされている中国からの留学生のCさんに、Iさんと、旧知の間柄の皆さんの中に、ツイッターでしか縁の無い私がお邪魔させていただいたのですが、いろいろ面白いお話を聞かせていただいて、とても楽しい一日でした。

高森家、大山倍達のお墓は護国寺にありました。偶然なのか意図したものなのか。
なんだか物語のようですね。
どちらのお墓にも横に石碑があり、高森家の石碑には「吾が命 珠の如くに慈しみ 天命尽くば 珠と砕けよ」との言葉。
大山倍達のお墓はかなり大きな碑が用意されており「空手バカ一代 雲を得て 龍となり カラテの父となる」と刻まれておりました。

護国寺から少し歩いて、手塚治虫がかつて執筆にいそしんでいたという並木ハウスを見て、ラーメンとしゅうまいを食べて三田線新庚申塚駅へ出て縈禅寺というお寺で手塚治虫のお墓参りへ。

前々日が命日だったため、お墓は真新しい花でいっぱいでした。
代表的なキャラクターを彫刻した碑と、先祖である手塚良仙の碑が横に。撮影禁止との看板がありましたが、シャッター切ったら手塚御大の幽霊でも写りますかね。

そこから、明治大学米沢嘉博記念図書館へ。
「伝説の雑誌「COM」 コミックス×コンパニオン×コミュニケーション」展関連イベント“石井文男、野口勲トークイベント『COM』誕生秘話”へうかがいました。

石井文男氏、野口勲氏という実際に『COM』の編集をされていたお二人。
トークは前身である会報誌『鉄腕アトムクラブ』がいかにして『COM』になったか。
そして、手塚治虫にとって『COM』はどういう雑誌だったかなどを中心にいろいろなお話を聞かせてくださいました。

なんと言いましょうか、印象的なのは当時の手塚治虫のやんちゃっぷり。
鉄腕アトムクラブ』の編集者として手塚治虫の担当編集に指名された野口氏は、まず最初の原稿待ちの間に、当時『冒険王』の編集者だった阿久津氏に「野口ってのはてめえか。こっちへ出ろ!」と言われて投げ飛ばされたそうです。
曰く
「てめえのところは社内原稿じゃねえか。こっちはお客様が待ってるんだ!」という理屈だそうで。他社の原稿が上がるまで待ってろということですね。

野口氏「でも、当時は『冒険王』に連載してなかったんですよ。どうも、『アトムクラブ』の編集はそういう立場なんだとわからせるために、強面の阿久津さんに頼んで先生が仕組んだことらしいです」

会場「(えっ)」

野口氏「楽しかったですけどね」

……神様!

そんな神様裏話や、原稿管理のいい加減さの話などいろいろなエピソードをうかがいましたが、印象的だったのは「手塚先生が『COM』を自分が好きなようにやれる雑誌として考えていた」「学童社の『漫画少年』を意識していた」「みんながほかのマンガ誌とは違うものを作りたいと考えていたということでした。特に、“違うもの”というのはかなり如実に誌面に反映されていたように思います。

石井氏は『COM』のことを何度か「素人の仕事だった」とおっしゃっていました。そのせいかはわかりませんが、たしかに『COM』はほかの雑誌ではできなかったであろう実験がたくさん行われています。『ジュン』や『フーテン』などはいまさら私が言うまでもないですが、マンガそのものだけではなく、記事の充実が今見ると新鮮です。編集者座談会や、草森紳一や佐野美津夫のマンガ論、和田誠の表紙、編集者から見たマンガ家像アンケートなど…。“まんがエリートのため”という気負いがそのまま誌面に反映されているようです。また、草森紳一の評論が意外につまらなかったり、佐野美津夫が「瞳の大きいマンガは駄作」という極論を堂々とぶっていたりと、なかなか時代を反映した内容で今読むと笑えます。(すみません、草森さんの評論じっくり読んだら面白かったし歴史的意義のあるものでした。上記の文章は自戒をこめて残しておきます)

会期中は『COM』閲覧可ですので、興味のある方はぜひ足をお運びいただければと。
竹宮惠子岡田史子が投稿していたりと、新しいものが生まれていく瞬間が雑誌の中に凝縮されています。

鉄腕アトムクラブ』の作成中も、「頼みもしないのにどんどん投稿作が送られてきた」そうですが、『COM』にも毎月何百という投稿作が送られてきて、石井氏は必死だったそう。時代の熱気と野心をトークと、『COM』そのものから感じとれます。

石井氏「先生はわれわれを信用してたとは思わないんですが、それなりにまかせてくれてたとは思うんですよ」「自由な会社でした。だからつぶれちゃったんでしょうが」

夏目房之介の著書に『あの頃マンガは思春期だった』という本がありますが、まさに未成熟な時代の歴史の1ページとしての『COM』を確認させてくれるイベントでした。

COM 40年目の終刊号

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