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ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

『Cirque Vivant!(シルク・ヴィヴァン!)』

舞台

Le Carre Curieux(カレ・キュリユー)の『Cirque Vivant!(シルク・ヴィヴァン!)』

 分類上はサーカスなのだろうけど、そのまま「サーカスを観た」と表現してしまうと、そのおもしろさが伝わらないような気がしてならない。
 かなりの飛躍を承知で言えば、「スマーフの世界をアクロバティックなパントマイムで表現した舞台を観た」というほうがまだしも近いように感じる。『スマーフ』というのは、ベルギーの作家ペヨが描いたコミックスで、ヨーロッパのどこかの村に住む小人たちの話だ。青い皮膚に三頭身の彼らは、人里離れたスマーフ村という村で暮らしている。彼らは愛嬌も愚かさも人間並みに持っていて、時には女の子を巡って村中で戦争をしたりもする。また、思いつきで王権制を採用してみて争い事を起こしたりもする。

 牧歌的でありながら、時に愚かな人間たちの寓話として描かれる彼らの持つ雰囲気と、今日のパフォーマンスの雰囲気はどこか通じるものがあった。

 舞台の上の道具は、木で出来たソファー、小さなテント、それに天井からつり下がったハンモックと布。シンプルな舞台を四人の男性が行き来する。中にひとり特別愚かな青年がいて、他の3人は彼をからかったり、またその行動に振り回されたり、みんなではしゃいだりする。そのあいまあいまにトスジャグリング(簡単に言えばお手玉)がはじまったり、天井から下がる布に登ったり、ディアボロが演じられたりと、水準の高いサーカス芸が披露される。ただし、その芸はそれぞれの成功を強調するのではなく、あくまで彼らの演じるキャラクターの動作のひとつとして披露されるのだ。だから、スペクタクルを見ているというより、小人の遊びをのぞいているような気分にさせられる。
 小人だから、3mはある棒だってするする登れるし、舞台の上でまるで豹のように美しい背中を見せながらバク転だって出来るのだ。

 神秘性を保証するかのように、彼らの芸はみな水準がとても高い。トスジャグリングで四人が同時にボールを放って、それぞれ相手が投げたボールを受けるなんて芸は初めて観たし、ディアボロも背中の後ろを通したコマを目視せずにヒモで捉えたりと、レベルの高さに驚かされる。

 おもしろいのは、最初はあくまで遊戯的で、どこか道化師的なたたずまいを皆が身にまとっているのに、演技終盤にその空気を一変させるところだ。ソファーの中でパーティーをやるという場面を経て、急に超俗的な演出に切り替わる点である。まず、ひとりがずっと舞台にあった黒いテントをスカート代わりにして、腰に巻き付ける。そのまま一輪車で舞台をぐるぐる回っていると、そこに白い布を巻き付けた青年が、ローラースケートのようなものをはいてあらわれ、二人でぐるぐる舞台を回るのである。これがちょっと色っぽいような、神聖なような空気をまとっていて、「なるほど、道化からはじめて最後に超俗になるのか」などと感じさせられた。

 『手妻のはなし 失われた日本の奇術』では、水芸の解説で、最初は道化役者のようなふるまいの太夫が途中から超俗の世界を作り出すまでの哲学が語られている。同じような見方がベルギーにもあるのだろうか?

 2月11日に富士見市でも公演ありますので、気になった方はぜひ。 

(今回の公演は手妻師藤山晃太郎さんのツイッターでの募集で知りました。藤山さん、ありがとうございました!)