ホンのつまみぐい

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別にスポ根が好きなわけじゃないんですよ

 ついったーでいっつも「巨人の星」のことを話しているのでフォロワーさんに「hontumaさんフォローすると『巨人の星』情報流れてくるよ」とか「池田さんといえば『巨人の星』ですよね!」と言われるようになった。言われるだけならかまわないのだけど、人に紹介される時に「『巨人の星』好きな池田さんですよ」って言われるのちょい困る。
 なぜなら私は野球とそれに伴う体育会系的思考が苦手だし、巨人もあんまり好きじゃない。マンガで頼りになるんだかならないんだか微妙な扱いの川上監督のことはむしろ嫌いだ。自らの監督時に鬱病で死んだ青年に対して「プロ選手として心身が虚弱だったということでしょう」「巨人こそ大被害をこうむった」というなんてどんな男だよ。(川上のこの発言に関しては『巨人軍に葬られた男たち』に詳しい)

 そういう意味ではトレードの際に獲得したい選手の写真を指差して「これにしよう」というシーンは図らずも川上らしさを活写しているといえるのかもしれない。「これ」ってモノ扱いか。

 スポ根が体育会系に根付いていた軍隊的な管理法や思想を肯定してしまったという点については異論はない。だって、今ですらよく「今の日本人に足りないものがここにある」とか言われてますからね。
 しかし私はすでに平成を生きた年月の方が長いので、「巨人の星」を読むと野球をやりたくなくなるし、巨人軍のことは嫌いになる。
 そして、結局体格の差という生まれつきのハンデをくつがえせずに自滅していく青年の物語なのにどうして精神主義と言われるのかがよくわからん。
 大リーグボールも結局ロジックによって技を身につけて、ロジックによって負けるじゃない。

 軍隊的ってい言われるの、よくわかるけど、梶原マンガは結局登場人物がどんどんぼっちになっていって個人の戦いに還元されてしまう。斉藤貴男が言ったように「全体主義者ではない」のね。あいつら人の話聞かないし。

巨人の星」に関してはそういう軍隊的な精神主義と呼ばれるものの価値が作中でどんどん意味を失っていって、極めて個人的な愛憎と成長の物語になってしまうところが好きです。そうなっていくと同時にだんだん人気が落ちていったというところも含めて。むしろこんな内向的な話連載してそれでも人気を博していた当時のマガジン狂ってると思った。おいしいのはそういう根源的な狂気とか人間の弱さとかそういうところで、ほんというと中盤までにときどき出てくる訓話的な部分すごくどうでもいい。

 少年マンガなのにメンヘラが苦悩して暴走してるのを見るのが楽しいのであって!
 
 自他の区別がつかない親子の間にどういう決着をつけるのかを見守るのが楽しいのであって!


 あとちっちゃい頃の飛雄馬はショタかわいい。

梶原一騎伝 夕やけを見ていた男 (文春文庫)

梶原一騎伝 夕やけを見ていた男 (文春文庫)

巨人軍に葬られた男たち (宝島SUGOI文庫 A お 3-1)

巨人軍に葬られた男たち (宝島SUGOI文庫 A お 3-1)