ホンのつまみぐい

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2月に読んだ本・マンガ

海辺のカイン (MiMiKC) 作者:樹村 みのり 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1981/05/15 メディア: コミック メルカリで買って20年ぶりくらいに読んだ。20年前は図書館で。今も書庫出納すればあるんだろうなあ。前は展子に心を寄せていたけど、今回は「佐野さ…

脇の甘い本だが、結果的に出版業界のしょうもなさを可視化している「私は本屋が好きでした」永江朗

私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏 作者:永江朗 発売日: 2019/11/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) 私はヘイト本に限らず、ニセ医学系の本などを売り続ける出版業界にはっきり批判的だ。出版業界の言い訳は「お客さんが…

1月に読んだ本・マンガ

黒い家 (角川ホラー文庫) 作者:貴志 祐介 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 1998/12/10 メディア: 文庫 「サイコパス」という概念を「社会を脅かす怪物」として丁寧に解説するくだり、精神疾患への誤解を深めること間違いなしで険しい。ホラーだし、そもそ…

興味深いが首肯できない箇所も多い本「娼婦たちは見た イラク、ネパール、中国、韓国」(八木澤高明)

ネパール、イラク、中国、韓国の娼婦たちに話を聞くルポルタージュ。「娼婦たちの見た戦場」という題の単行本の新書化。戦争や貧困にさらされ、結果的に娼婦という選択肢しか選べなかった女性を中心に取材している。 イラクにおけるロマの娼婦。中国の戸籍な…

文学フリマで、一億円稼ぐホストから「失恋ホスト」を買った話

文学フリマ行ったらホストがいた。 文学フリマは「文芸同人誌のコミケ」のようなものなので、基本的にはブースも書き手も客も地味だ。というか、輪郭が薄い。 そんな中、ホストの人たちがいるブースだけは水彩画の中にマジックインキで線を引いたようにくっ…

森鴎外ではじまり、永山則夫で終わる「横濱」/文芸アンソロジーシリーズ紙礫「横浜」

横浜 (シリーズ紙礫10) 作者: 八木澤高明 出版社/メーカー: 皓星社 発売日: 2017/06/10 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 文芸アンソロジー「紙礫」の1冊。編者は「娼婦たちから見た日本」「ストリップの帝王」「黄金町マリア」…

NET21恭文堂コミッククラフト店に閉店二日前にお邪魔しました

閉店二日前にNET21恭文堂コミッククラフト店にお邪魔しました。コミッククラフトは20年以上続いた、学芸大学駅近くのマンガ専門店。閉店後も恭文堂本店でマンガの販売は続きますが、店長のHさんは本店でマンガ以外を担当されるそうです。 H店長とは以前仕事…

誰の言葉をどのように聞くか

www.asahi.com この対談の、ここと、 西 私が影響を受けたのは、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェというナイジェリアの女性作家です。今世界中で新しいフェミニズムが盛り上がってるけど、そのパイオニアのような方です。 田我流 その方、「まにまに」(…

夢眠書店はどんな場所だったか

でんぱ組.incを卒業した夢眠ねむさんが入場予約制の書店を始めたと聞いて、下北沢に出かけたついでに足を運んでみた。 行ってみるまで理解していなかったけど、未来の本好きを作るための本屋というコンセプトで、基本的には女性か子どもか、つきそいの父親し…

いなくなった子どもたちと残った音楽

お盆期間のすっかり人のいなくなった通勤電車の中で、うとうとしながら聴くBELLRING少女ハートの「UNDO THE UNION」がとてもよい。歌詞が脳に染み込む感覚がある。 男の子、女の子 機関車の慌ただしさ Ah あの冬は君の背に 目眩で恋した あのタンジェリン か…

「セッちゃん」(大島智子)読んで泣いてるおっさんキモい

誰とでも寝るからあだ名は「セッちゃん」。そして、セッちゃんとセックスする何事にも無関心なあっくん。停滞感の漂う震災後の日本を背景に、ふたりの若者の日常が描かれる。大島智子の描く震災後の日本では、SEALDをモデルとしたであろうSHIFTという学生に…

“着る”アフリカ展@神奈川県立地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ)

だいぶ前の展示なのだけど、写真集を読んで記憶があざやかによみがえったので、備忘録として。 サプールはフランス語で「お洒落で優雅な紳士協会」を表す言葉の頭文字を取ったコンゴの人々の呼称。彼らは世界最貧国と言われるコンゴ共和国で、自らの年収の4…

ヤクザ・警察・反グレ・ドラッグ……kindle unlimitedで読む裏社会の本

※最初頭にちょっとカッコいいこと書いてたんですが、なんとなく全部消しました。読むたびちょっとずつ増やします。 ※今後読み放題登録を外れる本があったとしても訂正・修正は行いません。 ■ 警察 ニッポン非合法地帯 (扶桑社文庫) 作者: 北芝健 出版社/メー…

カルチュラル・タイフーン2019・1日目→岡田育『40歳までにコレをやめる』 トークイベント→カルチュラル・タイフーン2019・2日目

cultural-typhoon.com このエントリは個人的な備忘録なので、ありとあらゆる点で丁寧ではないです。 カルチュラル・タイフーン2019・1日目。 ■セックス・ワークをめぐる女性表象高原幸子、竹田恵子、小川裕子 ・主体的にセックス・ワークを選ぶ女性もいる。…

文喫行きました

そういや先週、ストリップで知り合ったKさんと、うわさの入場料のある本屋こと「文喫」行きました。それぞれの仕事的に何かプラスになるかなーと思って、文喫の中の人ことAさんとアポ取ってたのですが、Kさんと私がAさんにストリップの話をしまくって終わり…

本をほめられるのはうれしい

地元にちょっと変な人が集まりがちな喫茶店があって、そこでだいぶ知り合いを増やしたのですが、数年前に閉店してしまいました。 店長が入れるコーヒーが美味しくて評判で、彼は今、月イチで地元のライブバーで一日店長をやっています。 この間久々に元店長…

「ストリップの過去と未来」を考えるにあたって参考にした文献リスト

キャバレー&ストリップ同人の書き手として名高いうさぎいぬさんに「ブックリスト公開します」と約束していたので参考文献の一部を紹介します。 小沢昭一の著書に代表されるような、古いストリップに関しての本や、フェミニズム関連の本もいろいろ読みました…

ここで買えますストリップ同人誌

どうもです。 今messyでストリップに関する連載をやっています。(追記:全4回完結しました) mess-y.com mess-y.com mess-y.com mess-y.com 第3回にご登場いただいたストリップ同人誌について、「どこで買えるのか」という質問をいただいたので、まとめてご…

トムズボックスの作ってきた本たち展@gallery福果

絵本編集者で、トムズボックスという小さな子どもの本専門店を運営していた土井章史さんが、トムズボックス名義で発行していた本の展示。 土井さんが編集した子どもの本かと思ったけど、土井さんが編集した絵本作家たちの私家版の展示だった。 ちょっとあて…

早朝のNHKで放送されていた「こころの時代~『個』として生きる」を観た

ECDが特集されるというので「こころの時代~『個』として生きる」というドキュメンタリーを観た。 普段は宗教家や哲学者に話をうかがう番組らしい。過去の放送内容を見る限り、亡くなって1年経ってないラッパーを特集するというのは異例のことに思える。 番…

オピニオン・ファクト・表現

開沼博のインタビュー集「社会が漂白され尽くす前に」を読んでいたら、ドキュメンタリー映画「ヤクザと憲法」の、プロデューサー・阿武野勝彦と監督・土方宏史が登場していた。 監督とプロデューサーのどっちの弁か忘れたけど、「オピニオンを伝えることを優…

萩尾望都と青池保子が私たちの代わりに「どうして木原敏江が好きなのか」直接本人に伝えてくれる「総特集木原敏江-エレガンスの女王-」

なんといっても木原敏江×萩尾望都×青池保子鼎談。そして、この写真。 萩尾と青池がタッグを組んで当時の思い出を交えながらどんどん木原敏江の魅力を言語化してくれるのがとても頼もしい。 そして、2016年刊の「少年の名はジルベール」もそうなのだけど、こ…

第2回「月に吠えらんねえ」(清家雪子)読書会の抄録(2018年4月22日)

4月22日に「月に吠えらんねえ」読書会の第2回を行いました。今回は、現在大学院で北原白秋について研究しているささ山もも子さんが参加して下さり、鳥井雪さん、高原英理さん、佐藤弓生さん、嘉納、池田での6名での開催となりました。前回の起こしがかなり大…

渋谷・道玄坂にある森の図書室は、スノッブな本好きの脳内妄想を具現化したしょうもない空間だった

MAZAIRECORDSのMANOYさんがRAP酒場でライブをやるというの渋谷Dimensionへ。ライブ自体は20時半からというので、ごはんを先に済ませようかなと思ってとりあえず会場前まで行くと、同じビルに森の図書室というカフェっぽいものが。 名前はなんとなく聞いたこ…

その地獄は他人事か、地獄に文化は必要か? ラップの似合う街・川崎の今を書くルポルタージュ「ルポ川崎」(磯部涼)

「気付いたら15の時にはヤクザの鞄持ち」 ヒップホップグループ・BADHOPのメンバーの一人・T-PablowがTV番組「フリースタイルダンジョン」内で、この言葉を口にした時に、一部で「あんなのハッタリで、本当はまともな家の子なんだろ」と毒づく人間が現れた。…

「月に吠えらんねえ」(清家雪子)読書会の記録(2017年8月13日)

8月13日に「月に吠えらんねえ」の読書会を行いました。 この企画は、もともと池田の友人の「『月吠え』好きの鳥井さん(俳句好きプログラマー)とかつらさん(15年来の清家雪子ファン)を会わせてみたら面白いのではないか」という動機から始まったものです…

社会福祉機関としての図書館を書く「青い図書カード」(ジェリースピネッリ)

図書館を舞台とした少年少女のオムニバスストーリー。 スピネッリの「少年少女が何かと出会って心を解放していく」表現がとても好きなのですが、「青い図書カード」はそれがすべて本であり、図書館であるという意味で、本好きが読んだらニコニコしてしまう内…

BL・レディコミ・TL-女性向けポルノを読み解く丁寧な試み「欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差」(堀あきこ)

最近、「BLって女の子にとって何なんだろう」と思うことが多かったので読んでみました。もちろん、BLの読者は女の子だけではありませんが、ここ最近の私の関心が「女の子にとって」なので、あえてこの文章でも「女の子にとって」を強調します。 本書は「はじ…

「夫のちんぽが入らない」こだま

著者の体験をもとにした、不思議な私小説だ。 主人公は封建的な地方から大学進学のために上京し、そこで後の夫と出会う。互いに教職の道を選び、まるで兄妹のようと形容される仲の良いふたりだが、夫の陰茎を挿入すると膣が裂けてしまうため、セックスができ…

神様は大森靖子に憧れた人の数だけいる/ ユリイカ2017年4月号特集「大森靖子」

神様をやるなら断言してしまった方がいい。 みんな自分の生を肯定してほしいし、自分が立っている場所を否定したくない。 だから、「お前はこうだよ」と断言してあげると安心する。「私の言うことを聞いてればOKだよ」と言えばいい。信者を作るにはそれが一…