読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

名付けようのない時間を定着させる「家族最後の日の写真」植本一子写真展@Nidi gallery

展覧会タイトルの元になっている書籍はまだ読んでいない。 石田家の日常と、病院での日々と、植本さんの日々。 食道がんで入退院を繰り返しているという今のECDは、私の父がガンで亡くなった年齢と近い。 泣くかと思ったけど、一枚で情動の引き鉄を引くよう…

ハスリングなんかしなくてもヒップホップできるから!「ジャポニカヒップヒップ練習帳」サイプレス上野 from Dreamraps 刊行記念トークイベント

1stアルバムが「ドリーム」。リード曲が「Bay Dream ~フロム課外授業~」。主催レーベルが「ドリーム開発」。 サイプレス上野はよく自分自身のプロダクトに「ドリーム」と名づけますが、これは一般名詞の「夢」だけでなく、固有の場所を示します。それは、…

2014年の地下アイドル現場の記録「ゼロからでも始められるアイドル運営」「サイプレス上野とロベルト吉野のアイドル ライヴオン ダイレクト」

ゼロからでも始められるアイドル運営 楽曲制作からライブ物販まで素人でもできる! (コア新書) 作者: 大坪ケムタ,田家大知 出版社/メーカー: コアマガジン 発売日: 2014/06/03 メディア: 新書 この商品を含むブログ (5件) を見る ゆるめるモ!運営の田家大知…

ストイックで思索的な往復書簡「誰にもわからない短歌入門」鈴木ちはね/三上春海

こういったストイックで思索的な試みこそが、美しいと呼ばれるべきなのだろう。 鈴木ちはねと三上春海がひとつの短歌について、往復書簡の形式を取りながら丁寧に言葉を積み上げていく様を、私の貧しい語彙で表現するのは無粋なので、いくつか引用を。 あと…

磯部涼が真摯でR-指定は紳士「サイゾー2016年6月号ニッポンのラップ」

聞きづらいことも含めて、わりと満遍なく文章化されていて初心者にはありがたい内容でした。 個人的面白かった記事ベスト3。 www.premiumcyzo.com 第1特集、さすがに読み応えあり。 日本語ラップをジャンルとしてみた時に最初に不思議に思ったのがいとうせい…

受難者としての女子プロレスラーとその輝き「リング・リング・リング」つかこうへい

読み終えた瞬間は、女子プロレスを描くためにこんなに長与千種を不幸な人にしなくていいと思った。つかこうへいが虐げられた人々の輝きをそういう手法で書く人だとは知っていても。 まず、最初の夫が半身不随になる。その隙を狙って自分を襲ってきた義父を…

「猫の帰還」ロバート・ウェストール

第二次大戦下のイギリスを出発地とする、黒い雌猫ロード・ゴートによるロード・ムービー調小説。 ロード・ゴートはあらゆる地域、あらゆる環境をさまよい歩き、その場その場の人々に愛される。 戦争という生物的な極限状態におかれた人間たちを、ただただ主…

「鈴狐騒動変化城(すずぎつねそうどうへんげのしろ)」田中哲弥

児童書読書会用に読んだやつ。これすごい。面白いしかない。 田中哲弥といえば電撃文庫の産んだ超絶技巧作家。とにかくめっちゃ文章がうまくて、笑える話を書く人だけど、読者にサービスしようという奉仕の心はない。そして、時々たいそう邪悪なものを書く。…

「夜のふくらみ」窪美澄

タイプの違うイケメン兄弟ふたりと幼なじみの女の子。タッチを彷彿とさせる古典的なシチュエーションの三人。しかし、「夜のふくらみ」の登場人物は夢と希望にあふれた恋愛盛りの高校生ではなく、社会人数年目を迎えてそれぞれがそれぞれの場所でくたびれて…

「Eggs 夜明けなんて見たくない」ジェリー・スピネッリ

何らかの理由で崖っぷちにいる孤独な子供が、崖から離れて歩きだせるようになるという、スピネッリがこれまで繰り返し書いてきた話のひとつ。 母親を事故で亡くした悲しみから立ち直れない少年ジャネット。子育てを半ば放棄して占い師のまねごとをしている母…

味方のつもりで書いたものが、女の子を人間扱いしていない皮肉「武道館」朝井リョウ

武道館 作者: 朝井リョウ 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2015/04/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (19件) を見る ハロオタで若手人気作家の朝井リョウによるアイドル小説。 中学生の頃からアイドルグループ「NEXT YOU」に所属する女の子が、…

「青年のための読書クラブ」「太陽のパスタ 豆のスープ」

青年のための読書クラブ (新潮文庫) 作者: 桜庭一樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2011/06/26 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 9回 この商品を含むブログ (26件) を見る 青年のための読書クラブ(1) (フレックスコミックス フレア) 作者: 桜庭一樹,タ…

「ソーネチカ」リュドミラ・ウリツカヤ

ソーネチカみたいな判断は絶対出来ないな。憧れもしない。でも、すごいとは思う。 「ソーネチカ」はソビエト体制下のロシアに生まれた女性の一代記だ。見た目には自信がないけれど、本が大好きな彼女は学校を出てからも家族のもとで幸福に暮らしていた。しか…

長新太の脳内地図@横須賀美術館

駅から最低でも30分近くバスに乗らなくてはいけない横須賀美術館が会場というのに、結構混んでいて、併設のレストランがずっと10〜20人待ち状態だった!今回最大の衝撃。 長新太の原画はいわさきちひろ美術館で見て以来だけど、私の状態があまりよくなく、…

「華やかな食物誌」澁澤龍彦

華やかな食物誌 澁澤龍彦コレクション (河出文庫)作者: 澁澤龍彦出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/02/15メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る これに限らないのだけど、「一昔前のエッセイ」の類いはなぜ読むに耐えなくなるのか。 大幅な…

「少年アヤちゃん焦心日記」

少年アヤちゃん焦心日記作者: 少年アヤ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2014/07/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る アヤちゃんは「オカマの自虐」で、まずブロガーとして世に出た人だ。だから、前作「尼のような子」では、一貫して…

「楽園のカンヴァス」

楽園のカンヴァス (新潮文庫)作者: 原田マハ出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/06/27メディア: 文庫この商品を含むブログ (21件) を見る 幻のコレクター、ジョセフ・バイラーはいまだ公になっていないアンリ・ルソーの作品を手にしている。しかし、それが…

最近読んだ本「オズマガジン横浜」「因果鉄道の夜」「『東洋の魔女』論」「タモリ伝」

オズマガジン出版社/メーカー: スターツ出版発売日: 2015/03/12メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る ふだんは見ても買わないオズマガジンですが、よくお邪魔したり、仕事でお世話になったりしている方々がけっこう出ているので買ってしまいまし…

おすすめ絵本10冊

横浜へそまがりという喫茶店で絵本紹介するイベントをやりました。(へそまがりのTさん、ありがとうございました)来場者ふたり(知り合い)だったんですが、喜んでいただけてほっとしました。その時のログです。つきよのかいじゅう作者: 長新太出版社/メー…

「幸せを呼ぶ赤い袋」

幸せを運ぶ赤い袋作者: 三藤達男出版社/メーカー: 神奈川新聞社発売日: 2012/10/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 地元では言わずと知れたパン屋「ポンパドウル」。元町を代表する同店の2代目社長が綴る社史。文章は素朴なものだけど、戦後すぐ…

「まばたき」酒井駒子・穂村弘

くまとやまねこ作者: 湯本香樹実,酒井駒子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2008/04/17メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 55回この商品を含むブログ (73件) を見る 黒を多用しながら透明感を感じさせる酒井駒子の絵には、それだけで大きな説得力が…

え「永遠」

商業BLにほとんど関心を示さないので友人に「Iさんは腐女子じゃないんですよね?」と言われたことがある。 商業BLはともかく、二次創作では同人誌を買い漁ったり、pixivを皿のように見つめたりした実績もあるのだが。萌えツボがニッチだから、あんまり萌え話…

「島はぼくらと」

島はぼくらと作者: 辻村深月,五十嵐大介出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/06/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (32件) を見る 人口3000人に小さな島で暮らす人々を、4人の高校生の目線から描いた長編小説。 地方を舞台にすると経済的にも心情的に…

Quick Japan vol.111

初期の「Quick Japan」は今よりずっとアングラで、ほぼ風紀に反する内容だった印象があります。 それがいつの間にか、お笑い芸人やアイドルの特集が中心になって、ずいぶん尖ったところのない雑誌に。それが悪いというつもりはなく、読者の求めるものに応じ…

一点ものであろうとする女の子たち「原宿女子」

原宿女子~原J作者: 米原康正,女性自身編集部出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/11/12メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る 「パブリックな場で必要最低限馬鹿にされない程度の格好はしよう」と考えてはきたものの、めかすことに対してほぼ無…

アイドルを記録する「MOBiSPROOF」「でんぱブック」

最近ドルオタ悪化してます。どういう悪化かというと、応援している子が一般人だった頃の削除されたアカウントを何とかして読もうと努力したりとかそういうやつです。 私の能力では消えたツイートを復活させることは出来ないものの、ふぁぼったーやfavstar、…

井上ひさし展−21世紀の君たちへ(神奈川近代文学館)

井上ひさしの作品は高校生の頃に熱心に読んだ。どの作品も対象のことをとても丁寧に調べていて、言葉の中には過剰なまでの情報が詰め込まれていた。しかし、間に挟まる笑いを楽しみながら読んでいくと、闊達に作品の中を動き回っていた人物たちは、多くの場…

「マグロとDS」という「いらないもの」の必然

香川照之の歌舞伎界進出の道のりを描いたドキュメンタリー「父と子」は、父と子の確執を描いた息苦しい内容だった。理不尽な理由で父である三代目市川猿之助に縁を切られた香川は、周囲に快く思われていないも関わらず、息子とともに46歳での歌舞伎俳優デビ…

オンディーヌとさかな共和国

小さい頃に読んで印象に残っていた本が図書館にあったのでつい手にとった。魚嫌いの少女オンディーヌは、食卓に登場しないでほしいと海の中の魚たちに直訴しにゆくが、魚の大統領にとらえられ、改造手術を受けてしまう。さらに、大統領はオンディーヌと婚約…

最近読んだ本

戦時児童文学論―小川未明、浜田広介、坪田譲治に沿って作者: 山中恒出版社/メーカー: 大月書店発売日: 2010/11メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 60回この商品を含むブログ (5件) を見る『戦時児童文学論』 小川未明、浜田広介、坪田譲治を中心に、第二次…

「カンナ道のむこうへ」

この本に関しては公平に語る自信がないのです。発売前にゲラを見せてもらって、作者であるくぼさんの意図を聞いてしまっているので。カンナ道のむこうへ (Green Books)作者: くぼひでき,志村貴子出版社/メーカー: 小峰書店発売日: 2012/07メディア: 単行本 …

「あたたかい水の出るところ」木地雅映子 書評というより感想です

木地雅映子はデビューから一貫してサバイバーを書いている。 あるいは学校に、あるいは家族に殺されないために、少年少女はいかにして生きていくるべきか。そういうことをずっと書いている作家だ。 彼女のデビュー作である「氷の海のガレオン」は、「自らを…

「ああ、玉杯に花うけて」を青空文庫で読了

なんで佐藤紅録なんか読んでるのって、そりゃあ、かの少年マガジン編集者宮原照夫が梶原一騎を「少年マガジンの佐藤紅録になってくれ」ってくどいたっていうあの逸話を聞いたからですよ、はい。 さて、「ああ、玉杯に花うけて」は、誇り高き貧乏人と、人身卑…

児童書読書会に行ってます。

最近ツイッター有志の児童書の読書会に行っています。 主催は@ko_ffeeさん、@yasumisuさん、@yamada_5さん。 レジュメをきっちり切ってくるようなまじめなメンズの中でぼんやり聴講している私ですが、あまり普段自分から読まないような本ばかり課題に挙がる…

最近読んだ本

子どもの本と〈食〉物語の新しい食べ方作者: 川端有子,西村醇子出版社/メーカー: 玉川大学出版部発売日: 2007/01/30メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 4回この商品を含むブログ (9件) を見るベジタリアンになる竜の話とか、『秘密の花園』と『小公…

代官山蔦屋書店はおしゃれなヴィレッジヴァンガードだった

古い雑誌が読めるラウンジとか、ソフト化されていない作品をオンデマンドでDVD化してくれるシステムとか、ほんとうに豊かでありがたいなーと思いつつ、現段階では「金のかかったヴィレッジ・ヴァンガード」というのが一番実感に近いような…。かつて書店員だ…

「ハーレクインの世界」を読んで ハーレクインとBLと

「(前略)ハーレクインの世界だと、言葉で愛を表現するじゃないですか。(中略)言葉がないと二人の愛が承認されないシステムになってるんです。女性は、愛を言葉で説明して欲しいと常に思っている部分があると思うんです。(後略)」「(前略)楽しみ方と…

『遺体』石井光太

震災以来、ずっと問いかけていたことがある。ボロボロになった心は、果たして回復するものなのだろうかということだ。私は4年前に父を亡くしているが、その時のことを思い出すと今でも胸がつかえるような気分になる。父は何年かの闘病の末に亡くなったので…

「森山大道 路上スナップのススメ」森山大道・仲本剛

「もっとも大切なのは、欲望だね。撮る本人は、そのとき、その瞬間に抱えている欲望。それを持ってないと、見ることすら出来ないから」著者の仲本剛が森山に同行してその際に発した言葉を拾い集めるという構成。 ある程度彼のことを知っている人にとっては「…

ホンマタカシ ニュードキュメンタリー

ホンマタカシの仕事でいちばん有名なのって「東京の子供」なのかな。 子供を撮ってるのにぜんぜんかわいくない。大人の考える枠組みからはずれた、異質な他者として児童を撮った写真集。あれがわかりやすくかっこよくて好きだった。写真の持つ観察の力のよう…