ホンのつまみぐい

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こうの史代×おざわゆき「はだしのゲン」をたのしむ@明治大学 2016/4/16 「この世界の片隅に」「あとかたの街」「凍りの掌 シベリア抑留記」にもふれて

このトークイベントは米沢記念図書館で行われたマンガと戦争展+α内の企画として開催されたものです。「はだしのゲン」というテーマを掲げていますが、まさに「マンガ表現と戦争」と作家がいかに向き合うかが語られる内容になっていました。逆に、「はだしのゲン」の話が広がる前に終了時間が来てしまった感もありますが。

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当日のメモから個人的に印象に残った箇所を記載いたします。2016年のイベントの話ですが、今だから有効な箇所もあるかなと。(おざわゆき=お、こうの史代=こ、ヤマダトモコ=ヤ)

 

ーマンガと戦争展+αの展示について

 貝塚ひろしさんの「ゼロ戦行進曲」は続きを読んでみたい。小林よしのりさんの「戦争論」は、戦争マンガとして意識していませんでした。

 今回の展示には入れさせていただきました。こういったテーマ展は考証も含めてお金がかかるし、有名作家の個展の方がうけるけれど、京都国際ミュージアムでの展示を見て、ぜひここでもやりたいと思って。

 戦争マンガを語るとなるとワンパターンになりがちだけど、こういう風に分けることが出来るのかと新鮮でした。これで終わってしまうのはもったいない。

ー印象に残った戦争マンガについて

 幼い頃に読んでいたものには意識せずに何かしら戦争が入っていたから、そういうことが普通だと思っていました。「ガンダム」もそうだし、「気分はもう戦争」もそう。レディコミはまだ夏になると戦争特集をしていて、花村えい子さんが作品を発表しています。フォアミセスは慰安婦の問題も扱っていました。戦争マンガと言われてパッと出てくるのは「紙の砦」。

 「ザ・クレーター」。死んだと思われ、軍神になっていたパイロットが生還した故郷でまた死んでくれと言われる。「これを書かなくては」という手塚さんの気迫を感じました。

 「ザ・クレーター」には強烈な話が多いです。凝縮された本。

 

ザ・クレーター (手塚治虫文庫全集)

ザ・クレーター (手塚治虫文庫全集)

 
手塚治虫「戦争漫画」傑作選〈2〉 (祥伝社新書)

手塚治虫「戦争漫画」傑作選〈2〉 (祥伝社新書)

 

 

ーお互いの作品について

 おざわ先生からこうの先生の作品についてお話しいただきたい。

 「夕凪の街」が大好きで……。映画は病に倒れたところが入っていないのが残念。それまでが平和な雰囲気だったのに、フッと落ち込んだように病気になって死んでしまう。この表現がすごいと思って。

 皆実が倒れたところは編集さんには黒にしてくれと言われましたが、絶対に白にしますと言った。夜だと思えば正しいのだろうけど、黒にしてしまうとあまりにかわいそうで。(友人や親族が代わる代わる見舞いに来る場面のこと)

 暗くなっていく状況なのに白。ふわっと天に昇っていく感じが哀しい。

 「夕凪の街」は最初はジュールに乗る予定だったけれど、担当さんの移動でアクションに。最初は32Pだったのが30Pになったんです。打越さんが皆実をおぶっていく場面があったけれど、あったらあったでいちゃいちゃしすぎだったかも。映画の脚本の方が書いた小説にはこのエピソードも入っています。

 「あとかたの街」を描くときは「この世界の片隅に」を読まないようにしていました。今回対談をするにあたって読ませていただきましたが、やはりそれでよかったと思いました。近い表現が出来なくなってしまう。右手がなくなってしまう場面。読んでいたら描けなかった。

 このマンガは手段を選ばずと言うか、いろいろ選んだというか……。終わりの何回かは毎回画材が違うんです。最終回は何の断りもなく勝手にカラーで描いたから、雑誌では白黒でした。もう少し早くこの演出を思いついていれば、カラーに出来たかもしれないけれど。(最終話は途中から世界が色彩を取り戻したかのようにカラーになる)

 宮本大人×吉村和真トークイベント「僕たちの好きな『戦争マンガ』」では「しあわせの手紙」を書いたのは誰なのかについての考察がありました。吉村さんは真偽をこうのさんに直接聞いたけれど、こうのさんは「それは読者のために取ってある」という反応だったとか。

 別にそんなことないですよ? あれはすずの右手が読者に向かって書いているんです。戦時中に不幸の手紙が流行ったらしいので、それを踏まえて描いています。

 「今此れを讀んだ貴方は死にます」というのは?

 だって、結局死ぬでしょ? みんな。

 

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

 
この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

 

 

「凍りの掌 シベリア抑留記」「あとかたの街」について

 「凍りの掌」は、つらそうで手を出すのを躊躇していたけれど、あっという間に読んでしまいました。

 つらそうってよく言われます。絶望しかない。

 おざわさんの絵は一見簡単に見えるけれど、やせほそった手の絵ひとつで多くのことを語っています。日本に帰ってきてからの話が印象的でした。シベリアからの帰還兵はアカ扱いされ、抑留者なのに補償がなかったなど。

 アカ扱いされると仕事に就けないから、自分が抑留者であることを言わない人が多かったそうです。父と叔父は兄弟で抑留しましたが、叔父はそのことを言わなかった。家から二人もアカを出したと言われるから。
 戦争が終わったからと言って終わりじゃないというのが伝わりました。

 終戦でいろいろ切り替わったけれど、抑留はなんとなく終わらないままで。父も時間が経過したからこそ、話していいと思ったのかも。

 「凍りの掌」はお父さんの体験で、「あとかたの街」はお母さんの体験。印象に残ったのは、鳥鍋の場面。マンガでお腹が空いたという表現を描くのは難しい。「すきっぱらのブルース」にもデートをすっぽかすシーンがあるけれど、共感できませんでした。でも、「あとかたの街」の鳥鍋を食べる場面には共感しました。これまでの作品で、自分にできることはやったつもりだったけれど、私には出来なかったことが描かれています。

 この連載前にグルメものを描いていたので食べる描写には思い入れがあったのかも。

 この時代のリアルが描かれていますよね。昔の人は親に敬語で話しかける。夫婦も知り合い同士が結婚するわけじゃないからずっと敬語だったり。

 昔の本を読むと子供と大人との距離が遠いんです。不自然だとは思うけれど。

 婦人会では、男のいない家族はバカにされるとか。こういう描写は青年誌では描けなかった。

 当時は、男がいない家は役に立たないという引け目があったとか。

 お父さんだけ紙がもらえたという話。「この世界の片隅に」で、水原に「絵なんか描くな」と言わせるつもりだったけど、読む人減るかなと思って描かなかったんです。

 男の子を産まないと離縁というのもあった。こうした差別や貧困は忘れられがちだけど、実はそういうことも戦争につながっているのかなと。

 主人公のあいちゃんが防空壕に入る場面。次の場面で別の防空壕に切り替えて、空爆で死んでしまう子供たちを描く。一瞬あいちゃんたちが死んだかと思わせる描写がすごい。

 防空壕でみんな死ぬという場面を作りたかったので、苦肉の策でした。

 戦時中は髪型も服装も一緒だから、それを利用して「本当は亡くなったのはこの人だったかもしれない」と思わせているのかと。

 そこまでは考えていませんでした。一応服の柄で書分けてはいるけれど。

 

凍りの掌

凍りの掌

 
あとかたの街(1) (BE・LOVEコミックス)

あとかたの街(1) (BE・LOVEコミックス)

 

 

はだしのゲンについて

 ゲンは少年ジャンプということもあってか明るい。悲惨なマンガとして取り上げられがちだけど、この明るさがあるから楽しく読めるんです。原爆症で髪が抜けるのを見て笑うゲン。悲惨な話ではあるのだけど、このコマがあるから一瞬軽くなる。読みやすさや面白さを意識して描いたのではないでしょうか。

 戦後の話も面白い。恋愛したり、絵で生きようと思って上京しようとする。青春ものになります。

 説明台詞が多いんですよね。「よく寝たわい」とか「サイフを盗まれたわい」とか。

 重い原爆症の夏江さんが死期を悟って作った骨壷を、ゲンが割ってしまうシーンが……。

 気持ちはわかるけれど、割らなくてもいいのにね。夏江さんが必死で作ったのに。女性として生きづらくなっていた夏江さんをはげますために割るんだけど、彼女は骨壷を作り直すこともできずに亡くなってしまう。

 ゲンがはげましたい存在としての女の人なので、女の人は弱いんですよね。ゲンは一直線過ぎて、「それは間違いだろう」という行動がたくさんある。

 読み進めると、次はゲンがどう間違えるかが楽しみになってしまう。彼が物事を素直に受け取って、間違った行動をするのが面白さになってる。

 でも、私たちはものを壊すことはよしとしないけれど、ゲンが相手に優しくしようと思っているのはわかるんですよね。

 今は危ういことを書くと自粛と言われがちだけど、こういう危ないことをする子につっこみながら読む方がいいのかもしれないですね。

はだしのゲンは実は1巻が一番怖い。人間関係の不自由さがヒリヒリした感じで描かれている。爆弾が落ちてくることが怖いとなりがちだけど、人間関係の怖さが戦争物にはかかせない。いつまで続くかわからないご近所のいじめの恐怖。ストレスがたまると人はこうやって排除するのだろうなと。

 みんなお腹が空いているし、すごくイライラするのだと思います。人間性がむきだしになっていがみあいになってしまう。でも、同じ状況に置かれたら自分もやるかわからない。

 戦争のそういう側面って大切なんだけど、マンガではあまり描かれていない。夏江姉ちゃんが桃を食べる場面が強烈で、原爆の日になると桃をお供えしています。
-好きな場面について

 ミツコさんの場面。ゲンはちょっと見ただけの女の子に恋をして、地面にずっと彼女の名前を書いてしまうんですよね。こういうマンガらしい描写がいい。

 ミツコさんをデートに連れて行って、絵を描くところも泣けます。「はだしのゲン」は私にとって自分のふるさとが描かれた地域マンガ。「ゲンのように生きていこう」と思える広島の宝です。

 読み返すとすごく読みやすい。素直に面白いと思える作品。テーマばかりが話題にされるけれど、それを届けるための面白さがすごいんです。

 奇跡のような……。これだけの経験をされた方が、これだけの才能を持ってこれを描かれたことがうれしい。 

はだしのゲン 1

はだしのゲン 1

 

 

-質疑応答

ー「この世界の片隅に」では、横書きの文章を左から右で読むように書いている。これは現代の読み方だけど、作中で使われる字そのものは旧字で書かれている。こうした現実とマンガとの間のリアリティーのバランスはどう意識されているか。

 マンガに描くのが難しい部分というのはあります。たとえばお腹が空くとか。おざわ先生はちゃんと描いてらしたけれど。強いてあげれば昭和14年の辞書を編集さんに買ってもらって、それを普段から引いて、そこに出てくる言葉を使っていました。

-(わだつみのこえ記念館で働いている方から)館長が人が来てくれないと悩んでいる。堅苦しいテーマだと言われがちだと思うが、どのようなモチベーションで描いていたのか。

 両親のことなので。父の話を聞いたときに「これは面白い。作品になるのでは」と思いました。ただ、描くにはあたっては世代差があるので、当然理解の及ばないところも多い。自分の中にある感覚を使って描いていました。

 描くのはつらかったけれど、義務感みたいなものがあったので。戦後マンガの伝統として、手塚治虫の頃から描かれてきたことだから、それを我々も受け継がなくてはいけないと思って。だから、皆さんにも描いてほしい。けっこう人生観が変わりますよ。

 おふたりは今の読者に伝わる形で戦争を描いています。戦後71年(イベント当時)、歴史が消失しようとしている時期に、何を書こうとしているのかを受け継いで体験してほしいですね。

-2016年4月16日 明治大学リバティータワーにて

 

映画「この世界の片隅に」に火がつき始めた頃に、「はだしのゲン火垂るの墓みたいな押しつけがましい話を見るよりこっち!」という言説が流行っていました。ほかならぬこうの史代が「はだしのゲン」への敬意を口にし、戦争を描くという課題を先人から受け継がれてきたものとして語っていたにも関わらず。

 

片渕須直にしても、高畑勲への影響を直接的に語っていて、その延長線上に映画「この世界の片隅に」があるにも関わらず、そうした短絡的な語りを自己肯定をするがごとく語ってしまう。こうしたことこそ、まさしく過去や歴史に対する関心のなさの現れだと思います。


ほんとは映画がブレイクした頃にこれ出せればよかったんですが、ちょっと遅かったですね。マンガと戦争展自体がとても面白かったのですが、当時は変に気負ってしまって感想が書けなかった……。なるべく書くペースを上げて後悔のないようにしたいです。

 

konosekai.jp

【イベント】4/16『こうの史代・おざわゆき:「はだしのゲン」をたのしむ』【アフターレポート】 | マンガ論争Plus

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gigazine.net

http://www.kamatatokyo.com/home.html

 

火垂るの墓 [DVD]

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THA BLUE HERB YEAR END LIVE 2016 @WWW X

2016年末にWWWXでの「THA BLUE HERB」を観てきました。その上で、「今のTHA BLUE HERB」に関しては、こちらのブログに書かれていることが一番共感できました。

yoshimi-deluxe.hatenablog.com

 

でもBOSSの歌ってることって
他のヒップホップもそうなんですけど
ほぼ説教なんですよ。
自分の信じた道を生きろとか
他人の言うことに惑わされるなとか
わずかな金やちょっとした名声のために誇りを売るなとか。
汚れつちまつたババアには暑苦しく感じることも多いんだけど
それをメンタルとフィジカルの両方に響かせるべく
力強くてエモーショナルに訴える
20年戦士のラップだった。

カッコよくてもすぐにイタくなり
常に色んな視点からの評価がメタメタに感じられ気になり
何事も言い切れない、決めきれない 
相対化の大海原にいるからこそ
生き恥でも痛くても、ピークじゃなくても、
おっさんでも、中流階級でも、
俺はこうなんだ、これを信じるんだ、と
熱く押し付けてくれる力を眩しいと感じるのかもしれないなと思う。

 

私もわりと近い感想で、少し付け加えるなら黒澤明の登場人物を思い出したということ。

昔、何かで「黒澤明の作品が描く倫理観を多くの観客は生きる為の指針として求めていた」という趣旨の文章を読んだことがあります。当時はその言葉がピンと来なかったのですが、先日久々に映画館で「赤ひげ」を観て、その意味を理解しました。

hontuma4262.hatenablog.com

社会から墜落してしまって抜け出せないような時や、逃れようのない孤独にとらわれている時こそ、黒澤映画が物語るような分厚い倫理観が必要とされるのだろうなと。正しくあるための倫理でなく、自分らしく、優しくあるための倫理。

そんなBOSSの、あの日のMCの断片。

「魂の会話んしに帰ってきたんだよ!」

「今日ラッパーひとりやふたり来てんだろ
ボスの格言だ
タダでくれてやる
20代なら20代、30代なら30代
それぞれのライフストーリーを語るのがヒップホップだ」

「タクシーで帰ったらいくら残るんだよというライブを続けていた頃、俺の相棒は『違うよ、俺たちは今徳を積んでるんだよ』と言ったんだ」

「地元を離れなくても食っていけるのを証明する」

自分自身に言い聞かせるような率直なMC。

ライブの中盤、「負けを知ってるあいつがどのくらい強いか思い知ったよ。何度だって始められる。始めようと思ったらそれがその時だ」というMCに呼び込まれて出てきたのはECDドネーションTシャツのYOU THE ROCK☆でした。

YOU THE ROCK☆の印象は何より「声がでかい!! 」。何というか……人間銅鑼? YOU THE ROCK☆の過去はかろうじて知っていて、復帰後あまりよく言われていないことも何となく知っていたのだけど、そういう前評判を吹き飛ばすようなただただ強い声で、いや、すごい説得力でした。

そして最後は来年大きい場所(日比谷野外音楽堂)でライブをやるからという前置きから、「20年やってるうちに、去ってった人たちにも見せたいんだよ」という言葉。

なるほど、「BOSSの説教を聞きに行く」という表現がなされるのもわかるライブでした。誠実で熱い任侠の人だ。

ただ、今回に関して言えば、コンディションが悪かったせいか、予習が足りなかったせいか、あんまり「音楽として楽しむ」ことは出来なかったので、次回はその辺をちゃんと受け止めたいなと。シューゲイザー調で好きな感じの曲もけっこうあったんですが。

 

youtu.be

 

STILLING STILL DREAMING

STILLING STILL DREAMING

 

 

 

ラッパーの一分 [DVD]

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 ちなみに、観に行こうと思ったきっかけはこの本。

 

ヒップホップの詩人たち

ヒップホップの詩人たち

 

 

春ねむり初ワンマン"ひとりでねれるもん!"vol.1@dues新宿 1/10

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彼女の3回目のライブとなったBAYCAMP2016はAbemaTVで中継されていて、ちょうどそれを見ていた私は「大森靖子以後の女の子」という印象を受けたのでした。歌い方のクセや髪型に共通項を見いだすことももちろん出来るのですが、それより私がはっきりと覚えているのは彼女のMCです。

「私は生きづらいなって感じることがめっちゃ多くて、BAYCAMPに出させてもらったのはオーディションなんですけど、CDを出させていただくのとかを、半年前まで仲良くしてた同級生とかに私の見ていないサブアカウント枕営業とか書かれる日々を送っているんですけど。


そういう他意のない言葉って人を殺すじゃないですか。


私には音楽があるから死なないですむけど、私の大切な人はそういうことで殺されちゃう人がすごく多いから。


私は『そういう人が生きていくための最終兵器になりたい』と思って作った曲が、オーディションに受かってBAYCAMPに出れることになりました」

 

怒りと覚悟が含まれた、泣き疲れたような声と鋭利な目つき。そして、自分が向かうべき場所をきちんと定める聡明さ。荒削りなのに研ぎ澄まされたその姿に惹かれたのを覚えています。

 

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彼女の初ワンマンはdues新宿。ディスクユニオンが管理している、ライブハウスと言うより音の出せる会議室のようなスペースです。

開場待ちの列に並ぶ人々の顔ぶれは、本人たちが小声で話していたように「ヒップホップのイベントっぽくない」。アイドルオタクもいれば、音楽好き、女子ラップ好きもいるけれど、「どんな層」とは括りにくい。

60キャパのduesはパンパンで、ゆったりした空気。VJがきちんと用意されていて、世界観のたしかさを感じました。深海の泡を映したようなVJと、水の音をアレンジした音があわさる場面もあり。作り上げた世界をもとにどれだけ大きくなるかという段階なのだと感じました。

映画音楽のような曲調に乗る「ロックンロールは死なない」「ガラス細工の新世界 ぼくは夜明けを告げる新世代」という言葉は、やはり激しくて力強いけど、この日はどこか穏やかな部分も。

それはMCで彼女が「リリースパーティーは友達を呼んだりしたけれど、今回は春ねむりを愛してくれる人だけを集めたくて。そしたらいっぱいで」「2017年はどんなことも肯定していきたい。安心してねって言いたいです」と語ったように、あの場が彼女を祝福したい人たちばかりが集まった場所だったことによるのでしょう。

ゲストにレイトが出てきて、「ロープにクスリ カッターの刃」というフレーズでコールアンドレスポンス。レイトはガンバの冒険やねずみのアーノルドといった、小さな体で走り回る児童文学上のネズミを思い出させる人でした。高い声と、深い色のパーカーがまたネズミっぽくて。後にカッターの刃に続く言葉が「路地裏のネズミ」と知って思わず笑ってしまいました。

Lyrics - レイト / Reito

最後の方でファンが持ち込んだバースデーケーキと一緒に記念撮影。朗らかで熱い夜でした。

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musicshelf.jp

さよなら、ユースフォビア

さよなら、ユースフォビア

 

 

 

アトム・ハート・マザー

アトム・ハート・マザー

 

 

 

ロックンロールは死なない [BROADWAY REMIX feat. GOMESS]

ロックンロールは死なない [BROADWAY REMIX feat. GOMESS]

  • 春ねむり
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥200

 

 

怪物(沈黙を語る人 remix) (feat. レイト)

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  • 春ねむり
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250

 

O'CHAWANZリリーシュイベント 〜ゆったりトーク&ライブ+特典会@dues新宿 4/5 &リミックスコンテストまとめ

校庭カメラガールツヴァイ解散後に結成されたしゅがーしゅらら、のんのんれめるによる2人組ラップユニット。

 
ジャジーヒップホップと紹介サイトには書いてあるけど、ジャズのまとうある種の苦味みたいなものはなく、軽快さを強く引き継いだ音。以前も書いたようにふたりのキャラクターと音の相性は悪くないのです。
 
でも、まだまだライブにおける正解をふたり自身が見つけていないような印象を受けました。
 
他のアイドルの場合はもっと曲がやかましかったり、ダンスの運動量が多かったりするから、ゆるいMCから曲でも客も演者もわりと容易に切り替えられますが、ゆるい曲とゆるいMCだと、肝心のライブに集中させるのが難しいんじゃないかなと。
 
間違いなく今のアイドル界でオンリーワンなふたりなので、「こういうライブにしたい!」という理想をステージとフロアが共有できるように、がんばってほしいと思いました。アルバム出る頃には固まってるといいな。
 
\あ、ムラヌシさんのガヤは拾わなくていいと思います/
 
ところで、入り口で特典券渡されなかったから特典会を何となく見てたら、最後にららちゃんにオマケのお箸を渡されたの、なんかアイドル様に気を使わせてしまった感ありました。(うれしかったけど)
 

私がいない現場での後日談となりますが、正解のとっかかりが見つかったようでよかった……!

 

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オツカレサマ

オツカレサマ

 

 

追記:ところで、O'CHAWANZは現在「ドンギバ!」リミックスコンテストというのを開催していて、それをきっかけにじむじむくんがリミックスにチャレンジし始めたのめっちゃ良い話ですね。猫まみれサイファー界隈もいろいろがんばっていて微笑ましい。リミックスコンテスト自体も、ひとつの曲がまったく違った色に染まっていく様子がなかなか楽しいです。

 リミックスコンテスト参加者のツイート

 

 

 

 

 

 

 

ラップを好きでいろよ-出会う人をラッパーに変える、MAZAI RECORDS運営兼もつ酢飯のビートメイカー・DocManjuが語るヒップホップへの愛情

もし、ラッパーの条件を「自分の曲を作ったことがある」かどうかで線引きするなら、私が2016年の9月に会った時は、多くの現MAZAI RECORDSメンバーはまだラッパーではなかったと思う。それを、2016年の12月のコンピレーション制作をきっかけに、いつの間にかラッパーに仕立て上げたのはもつ酢飯のビートメーカーであるぽじぽじa.k.a DocManjuをはじめとした、MAZAI RECORDSの初期メンバーだ。


週一のサイファー・カレー会、月一の練習会・チンポジム、半年に一度のクラブイベント・チンポマニアックス。人がラップと出会う場所を提供し続け、時にラッパーにしてしまうぽじぽじa.k.a DocManju。


常に飄々とした風袋で、時にシニカルに、時に熱く語る彼の、ラップへの愛情とその歴史について話をうかがった。

 

3人だけで1年間続けたサイファ

-ラップをはじめるきっかけは?

 

中学生の頃にScoobie Doというバンドが好きだったんですが、そのバンドのライブ音源にRHYMESTERとfeaturingしている曲があって。よくバラエティーで芸人とかがラッパーのモノマネとして、「ヨー!ヨー!」とか言ってるじゃないですか。ぼく、それまではあれを失礼な誇張だと思ってたんです。そんな人が現実にいるのかなと。そしたらRHYMESTERが「カモンヨー!」って言い始めて、「あ、ほんとに言うんだ」って気になって聴き始めたのが最初ですね。でも、最初はRHYMESTERしか聴いてなかったです。

 

高校卒業してから出来たラップ好きの友達に教えてもらったりして、いろいろ聴くようになりました。ぼく、高校生の頃に全然勉強してなかったから、大学浪人の時に寮に入れられたんですよ。その寮がいろんな地域から人が集まっている面白いところで。

 

みんな勉強なんかしないし、お金もないから1日中YouTubeを観てたりするんです。そこで戦極の動画を観たり、そこにいたラップ好きなやつに般若の音源を借りたり。その頃から、一緒に遊んでた現MAZAI RECORDSメンバーのヤボシキイとカラオケでフリースタイルをやってみたり。そこからですね。

 

ヤボシキイとはもともとツイッターで知り合ったんですが、ぼくが寮に入るために茨城から東京に来て、そこで遊ぶようになりました。ヤボシとはさして面白くないアニメをカラオケルームで一気見するみたいなことしてて。

 

-カレー会は2年以上続いてる、MAZAI RECORDSの元になっているサイファーだけど、どういう経緯で始まったんですか?

 

ぼくが大学生になった頃、BBQしながらラップやるオフ会をしようという話になって、「じゃあ、ちょっと練習しようか」と言って集まったのが毎週になりました。

 

5人くらいでスタートしたんですが、そこから2人減って3人だけでやってる期間が1年くらいありました。その時の3人が、ぼく、ヤボシキイ、ヘルガa.k.a Jabvaraさんなんですよ。ビートメイカーのヘルガさんもツイッターで知り合ったんです。その頃はアニメアイコンでラップの話をしている人が少なかったから、お互いの仲間意識が強くて。

 

-毎週3人で1年以上サイファーをやり続けていたのすごいね。2時間とかでしょう?

 

やった後にみんなでメシ食いに行って、その後、1〜2時間ラップの話をするのが普通でしたね。「今日寒いからもう終わりにしてカラオケ行こう」とかいう日もあったり。

 

サイファーって、始める人は多いけれど、続けられる人が少ないじゃないですか。

 

サイファーは、ある意味ボランティアじゃないですか。

 

-ボランティア?

 

日本ではニュアンスが違いますが、アメリカ人の書いた本にボランティアは「真剣な遊び」としてやってると書かれていて。「やらずにいられない」「お金がもらえるわけじゃない」「真剣な遊びである」とか。

 

ボランティアが続かない時はどういう時かというと、飽きる時なんです。研究しようと思っていろんなサイファーに行ったこともあるんですが、かかってるビートが15分くらいループし続けたりすることもある。たぶん、そういところは毎週おんなじビートでラップしてるんじゃないかと思うんです。そうすると、退屈してしまう。

 

だから、ヘルガさんとか初期は2〜3時間単位でセトリを組んできてましたよ。皆に来てもらっているのだから、飽きさせないようにというのは意識していました。

 

-だから今でもノイズミュージックでサイファーやバトルをやったり、イベントではカウンターでヤバさや面白さを計測して勝ち負けを決めるパンチラインカウント制バトルや、お題カードで引いた言葉とその単語で韻を踏んだ言葉しか使えないフローだけやんバトルとか、新しいことを取り入れてるんだね。

 

 

カレー会のほかに、月一の第三土曜日に渋谷のスタジオを借りてサイファーやバトルをやるチンポジムを開催しているけど、あれはどうして始めたの?

 

チンポジムは去年の5月くらいからやっています。フリースタイルダンジョンに便乗して仲間を増やそうと思って。あとは、チンポマニアックスというクラブイベントも半年に1回やっているんですが、そこには普段はラップをしない人も来るので、そういう人たちのラップする場所になりたいなって。

 

-3人だった頃からすると、めちゃくちゃ人増えたね。今は常に10人弱集まるようになって。

 

こんなに増えるとは思ってなかったです。でも、うちはダンジョンからの人もいれば、昔から好きな人もいるし、ダンジョンきっかけでハマった人もそれ以降のハマり方はそれぞれ違うのが面白いですね。

 

めんどくさいことは極力やりたくない

-曲を作り始めたのはいつ頃、どういうきっかけで?

 

2015年の末頃です。サイファーをやってた友達がMPCを安く譲ってくれて、自分で録音し始めたのがきっかけです。

 

曲作ろうってなった時に、リミックスとかビートジャックは初心者がやるにはハードルが高いんじゃないかと思って。別の人が乗っても価値のあるものに出来ないと面白くないかなと。だったらビートもオリジナルでいけば「これはこういうものです」という見せ方が出来るかなって。

 

-作ってみてどうですか?

 

音楽の聴き方が変わりましたね。ヒップホップ以外を聴く時はネタに出来るか、ヒップホップを聴いている時は、どういう音をどう配置しているかを考えてしまいます。

 

-制作に関して影響を受けたクリエイターはいますか?

 

ぼくはK-BOMBってラッパーが一番好きなんです。彼はBLACK SMOKER RECORDSというレーベルを運営しているんですが、そこはアブストラクトでノイジーな曲ばっかり作っていて、イベント行ってもヒップホップでは全然馴染みのない音がかかったりします。

 

-ラップ以外に影響を受けたものは?

 

昔はギターやピアノやってたんですが、どれもすぐやめてるんですよ。あと、友達のマネして小説書いたりしたんですが、それもめんどくさくて、すぐやめちゃって。

 

でも、ビートメイクは音楽知識がなくても、楽器の練習しなくても出来る。音の配置を考えるだけですから。あらゆる創作の中で達成感に至るまでのスパンがもっとも短いんです。


色んな人に曲を作らせたがるのも、簡単に達成感を得られるので、ラップをより好きになってくれるかなというのがあって。ぼくもヤボシキイもなんですけど、めんどくさいこと、大変なことはやらないようにしているので。

 

あと、ビートメイクはニコニコ動画のMADとかに影響を受けてます。あれもサンプリングじゃないですか。無限に存在する素材をどう組み合わせて面白いものを作るのかっていう。
だから、ビートメイクに煮詰まった時はヒップホップや音楽から離れてニコニコ動画を観たりします。

 

-MAZAI RECORDS設立のきっかけは?

 

カレー会に人が集まるようになって、音源出すなら名前が欲しいよねってなって、カレー屋で5秒くらいで決めました。MAZAIというのは「マジ?」を「魔剤?」と書くネットスラングがあって、そこからですね。

 

-2016年の12月にMAZAI RECORDSのコンピレーションを出していますが、あれはどういうきっかけで?

 

人が増えたから、せっかくだからまだ曲を作ったことのない人たちも含めて何かやりたいなって。音源を作るためにゼロから考えると、ラップの聴き方が変わるんです。

ラップが流行らない理由のひとつに、何が技術かがわかりにくいというのがあると思うんです。でも曲を作るために考える時間を持つと、ラッパーのすごさがわかるようになって、楽しめる音源が増えるんですよ。

 

MAZAI RECORDS - "Python Code" - Download | Added by MAZAI RECORDS | Audiomack

MAZAI RECORDS - "MAZACON1" - Download | Added by MAZAI RECORDS | Audiomack

遠回りさせたくないから、自分たちの知っていることは伝えておく

-もつ酢飯のEPを作ろうと思ったのは?

 

2人がMCバトルに出て、奇抜なスタイルで有名になったじゃないですか。でも、バトルだけに出ていると「あいつはヒップホップ好きじゃない」と言う人も出てくる。それはかわいそうだから、名刺になるようなものを作ってあげられたらいいかなと思って、ぼくがLINEで持ちかけたんです。

 

そしたら、スルッと決まってもつ酢飯からやりたい曲のトピックが送られてきて、それにあわせて曲を作ったりしました。もともとあった曲も使っていますが。

 

-もつ酢飯のテーマの「母音をイで揃える」はぽじくんが提案したんだよね?


こういう風にずっと同じ韻が続いたほうがグルービーになるから、ぼくから「イ」で終わらせてくれって提案したんです。

G.I.R.L.(ギリギリで生きてるラップやってるロンリーガールズ)、G.I.R.L. part2はデカめの文字数を踏んでますよね。「彼氏がくれた サマンサタバサ 果てし無くベタ 黙んなバカが」とか。これ、バトルから入ったヘッズがやりがちなんです。リリックは自由に言葉を繋げられるから、うれしくてとにかく踏みたがるんですけど、これは2小節で1コじゃないですか。実は次の小節とあまり関係がないんです。だからもうちょっと音楽的にしたいなと思って。

G.I.R.L.(12/25スタジオ練習ver.) by wasshoisanba | Free Listening on SoundCloud

もつ酢飯「もつ酢飯のテーマ」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

 

-フックでもアドバイスを受けたと言ってたけど。

 

ラップで一番難しいのは、実はフックを作ることなんです。フックとビートのバースが露骨に変化していればいいんですが、変化のない曲だとわかりにくい。

もつ酢飯はポップな感じでやってるし、バトル現場で大声を出して笑ってくれるような人に人気があるのかなと思ったので、露骨にフックを歌いやすくしたり、展開を変えたりしています。

 

以前からあるビートも使っていますが、もつ酢飯からは最初にトラックリストが来て、「こういう雰囲気でやりたい」という説明があったので、ある程度はそれに沿って作りました。

 

逆にG.I.R.L. part2は好き勝手やってますね。ドラムのハイハットを不規則に配置しているので、ラッパーに優しくない。

 

もつ酢飯「G.I.R.L part.2」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

他にinterludeも好きなように作りました。これは元ネタがThe Shaggsというバンドで、演奏も歌も下手で有名なんですよ。
The Jackson 5に憧れたお父さんが、娘に無理やりバンドをやらせてるから全然うまくならない。音を歪ませていないのにふにゃふにゃしていて、もつ酢飯は初心者だから、そのラップのあどけなさに合わせると面白いかなと。

 

-ホワイト・リザレクションはレックが大変だったという話を2人がしていましたが。

 

そうですね。ぼくが気に入らなくて……。

 

-ムノウちゃんは達成感がなかったという表現を使っていたけど。

 

それはぼくがこのEPを作っている時に、唯一失敗したと思っていることです。達成感がないというのは、ゴールが見えなかったということなんですよ。こういう曲をやってみたいとか、あの人みたいなラップがしてみたいとか。それが出来ていない状態でレックに入ってしまった。ゴールを決めるラインまで2人を持っていけなかったのかなって。

 

ぼく、実は制作中に「自分らの名前を出して、お世話になった人たちを呼んでリリースパーティーをやるならラップがうまくなくちゃダメだから、2日に最低1枚は新しいアルバムを聴いて」って無理やり聴かせてたんですけど。やっぱ聴かないとダメなんで。

 

-2人とも課題はクリアしてきたの?

 

聴いたアルバム1週間分のリストが送られてきてました。それもぼくが要求したんですけど。「ぼくも聴いて、どういう雰囲気に乗せたいか考えるから送って」て。

 

その人が好きな音源をレックの前に聴いて、やりたい雰囲気をあらかじめ探っておくと楽かなと思って。自分たちがけっこう手探りでやってたので、なるべく遠回りさせないようにしたいから。

 

あとは、簡単だけど効果的な技術とかもアドバイスしてます。たとえば、簡単なフロウの作り方とか。小さいッを文章の中に2カ所、3カ所入れておくとその中にフロウが出来るんですよ。音がつまるとグルーブになるから、小さいッを入れると簡単にそれっぽくなる。

 

-気に入ってる曲はありますか?

 

最初の方に取った曲は体力があって好きですね。一発目はラップに対する初期衝動である程度こなせるんですけど、それがなくなった時にどれだけ出来るかっていうのに地力が出ますね。もつ酢飯はこれからそういうのが求められると思うので、ぜひがんばってほしいです。

 

KREVAがパチンコになったら絶対みんなdisりますよ

ツイッターのプロフィールに「ヒップホップ要素はないです」って書いてあるけど、あれはどういう意図があるの?

 

真夏の夜の淫夢という動画のMADを投稿する時に「淫夢要素はないです」ってつけるのが流行ったことがあったんです。その流れで「〜〜はないです」って書くと、実はそれが好きというのがわかる。

 

ぼくはネットもオタクとしてやってて、なおかつヒップホップ好きな人とつながりたいというのがあるので、オタクにしかわからないスラングを使ったりしますね。

 

そうだ。19歳の頃、なんでRHYMESTER以外を聴くようになったのかっていうと、ぼくはアニオタだったんですけど、90年代後半のエヴァの真似して滑ったアニメがすごく好きで。最初は普通にロボットが戦ってたのに、最終回で精神世界に行ってだだ滑りして終わるっていう。

 

でも、当時は日常系アニメがあまりにも流行ってて、しかもそのどれもがとりあえずヒットするみたいな状態で。……なんか嫌悪感みたいなのを抱かざるをえない時期があったんです。でも、そういうことをツイッターに書いたりすると「変な奴」って思われるだけで終わりじゃないですか。

 

そしたら、ヒップホップっていう界隈にはセルアウトを堂々と悪く言っていい文化があるって知って。売れてるっていう理由だけでKREVAがdisられるっていう。これはすごいなって。

 

だって、アニメが売れるとパチンコになったりしますけど、そこで「オタクから金巻き上げようとしてる」と言っても「いや、でもまどマギは悪くないから」とか言われるじゃないですか。でも、仮にCR KREVAとか出たらラッパー全員でdisりますよね。

 

そういうところがめちゃくちゃ自由でいいなって。ダサい・かっこいいはもちろんありますけど、それぞれの見方が存在する。その、ダサい・かっこいいも全部聴く側に委ねられているのが面白いなと。

 

-そういえば、ヒップホップはけっこう似たり寄ったりの曲を作りがちなのに、MAZAI RECORDSの楽曲はみんなオリジナリティあるよね。

 

自由にやってほしいというのはありますね。オラディーさんなんかは女性声優の曲を2曲作ってたりしますし。あとは声優興味なしっていう曲を作っているぽ太郎さんとか。ぽ太郎さんはKREVAが大好きでラップもKREVAっぽいんですけど、中身はまったくそうじゃない。あとは、二郎のラーメンを残すやつにぶち切れるとか、トイレでツイッターやりながらウンチするとか。

 

でも、ラップがうまいのは絶対に正義だからとは言ってます。オラディーさんやぽ太郎さんの声豚ラップにしても、評判がいいのはラップとしてよく出来てるからなので。

 

ぽ太郎「声優興味なし(ごめんね)」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

どんな人にもラップを好きになってほしい

-ぽじくんは自分ではあんまり曲出さないけど、教える方が楽しいタイプなの?

 

ラッパーいっぱいいるし、別にいいかなって。今回ヤボシキイが出すアルバムの客演でぼくも何曲か参加しているんですが、歌詞を書いているときもこの時間でレックできれば後2~3人ラップできるなって思うんですよ。

 

ぼく、ラップ始めたばかりの頃に、SIMON JAPさんが運営していたWARUGAKI GYMっていうのに行っていたんです。ヤボシキイと「ラップ出来るところあるみたいだから行こうよ」って。

 

毎週水曜日の8時からスタジオノア2号店に行くと、SIMON JAPさんがラップしてくれるんです。UZIさんや黄猿さん、CHICO CARLITOさんも来てくれて。SIMONさんが最後の方で「それはこうした方がいいよ」って人生相談してくれたり。

 

WARUGAKI GYMはアシッドパンダカフェで開催される日が定期的にあったんですが、そこでSIMONさんと運営の麻猿さんとぼくだけでフリースタイルっていう気まずい状態になったことがあって。

 

その時にぼくが当時バイトしていた古着屋の話をしたら、SIMONさんに「そこに来る女の子にヒップホップを広めろ〜〜」みたいなことを言われたんです。「いや、うちはおばちゃんしか来ないんで」と返事をしたら、「おばちゃんでもヒップホップを広めるのは大事だから」って言われて、「わかりました」って。

 

そこで「どんな人にでも普及できるのかも」と思ったんです。SIMONさんは冗談のつもりだったかもしれませんが。


-今後の予定は?

 

来週にヤボシキイのアルバム「テンシルエア」が出ます。あとは、ヘルガさんもビートアルバムを出します。(どちらも公開済み)

ちょっと先ですが、チンポガールズ※メンバーのMANOYさんも夏くらいにはアルバムを出そうって言ってます。(※MAZAI RECORDS女子メンバーユニット。ワッショイサンバ、ムノウ、MANOY、樫で構成)

 

YABO$HIKI-1 - "テンシルエア" - Download | Added by MAZAI RECORDS | Audiomack

Jabvara - "Earthbound" - Download | Added by MAZAI RECORDS | Audiomack

 

MANOYさんも樫もめちゃくちゃ音源聴いてるんですよ。でも、スタートダッシュの勢いはそんなにない。勢いで出てったもつ酢飯がどれだけ距離を保てるかっていうのがあると思います。

 

ぜひクルーの中で競い合ってほしいですね。フリースタイルがスポーツ化したとか言われますけど、ラップ自体がスポーツみたいなところがあって、うまくならないと面白くならない。誰かのスキルが上がったときに、他の人が悔しいと思ってうまくなってくれればうれしいです。

ぼくは来年就職なので、残りの時間でどれだけ制作出来るかなってとこですね。

 

-やっぱり音楽関係の仕事に就きたいの?

 

いや、全然。むしろ違うことするつもりです。制作を続けて行くにはいろんな人と予定を合わせる必要があるので、土日休みの仕事がいいなとは思ってます。仕事始めたからって制作辞めるってのはないので。周りの人たちが半分くらい社会人で、ずっと制作を続けているのに自分が辞めるのはないと思ってます。

 

-最後の質問、何か言い残したことはありますか?

 

うーん、さっき話したセルアウトうんぬんのことで、言い残したことはないと思うんですけど……。

 

-あれは本質的ないい話でしたね。

 

そうだ。この間「海外のラップをいかに技術的に研究分析して、オリジナルなラップに落とし込むか」について語っているインタビューがあって。それはそれですごいなと思うんですけど、一方でちょっと息苦しいなという気がして。ラップのハードルをすごいあげてるなと。

 

ぼくは技術みたいなのは後から必要になってくると思うんですけど、ラップ始めるだけなら誰でも出来ると思ってて、それが魅力かなって。むしろラップっていうすごい簡単な技術を使って内面がアウトプットできるってところが面白い。だからみんないろんな曲作ってくれるのかなと。

 

-読んでくれる人に何か言いたいことはありますか?


「ラップがすごく好きだけど、回りにラップ好きがいない」って人がいたら、ぜひ一緒に遊びましょう。

 

※表題の「ラップを好きでいろよ」というシンプルな言葉は、ヘルガa.k.a Jabvaraのアルバム「Earthbound」収録のMi AKAIから。DocManjuのラップとフッドへの哲学と愛情が静謐なビートで語られる名曲。

 

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KAO「ブームの前から好きでした feat. YABO$HIKI-1,DocManju」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

YABO$HIKI-1「OTK HUSTLER feat. Jabvara,DocManju」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

 

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私は自分の人生の当事者なんだ―自称「ただのオタク女子」が、もつ酢飯のラッパーMCムノウになるまで

MCムノウは腰の低い小動物っぽい見た目の女の子で、一見するとヒップホップがまとうヤンキー的な空気にそぐわない。しかし、小柄な体から放つ言葉の切れ味は強烈で、まだ公の大会に出る前から、そのギャップには不思議なインパクトがあった。

 

彼女のラップを初めて見たのは8月の女性向けラップ練習会。その時、テレビの企画で参加していた中年お笑い芸人とのバトルで、「肉じゃがの作り方を教えろ」という先攻のバースに対して「女が肉じゃがなんて前時代的だな」と返していたのをよく覚えている。
見た目からは予測できないタチが悪くて芯のある言葉が女の子の中に詰まっていて、それがラップという形を通して飛び出してくる。

 

サイファー、バトル、音源制作……。ラップと出会ったことによって、自分自身の内面を外に出していくことを覚えた人間が、その過程で改めて自分を見つめなおす。

彼女は「ただのオタクを自称していた女の子が、ラッパーというステージの上の人になるまで」の歴史を率直に話してくれた。


サイファーは自己解放できる場所だった
-ラップをはじめるきっかけを教えてください。

 

私、去年までラップというものにまったくふれたことがなくて。大学生の頃はジャニオタだったので、その頃のiTunesを見るとジャニーズの曲が7割。あとはその時々ハマってたアニメという。音楽に関してはそんな感じでした。

 

だけど、フリースタイルダンジョンが周りで流行ってて、それを見て一気にはまったんですよ。1話から最新話までをガーッと見てyoutubeで昔の動画を調べたり、ツイッターをフォローしたり。そこで見つけたのが、今ビートを作ってくれているぽじぽじa.k.aDocManjuさんたちが企画していたオタク向けの初心者ラップ練習会「チンポジム」だったんです。

 

ラップなんてやったことなかったから迷ってたんですが、ちょうど大学3年間友達がいなくてつまんなかったし、せっかくだからと思って6月に渋谷のスタジオノアであったチンポジムに参加したんです。

 

少し遅れて行って、ドアのガラスから中をのぞいたら、マイクリレーをやっているところで、B-BOYっぽい人もいれば、普通の格好の人もいて。でも女の子はいなくて、ちょっと「怖っ」と思ったりして。

 

サイファーを見るのも初めてで、おそるおそる輪の中に入ったらマイクを渡されて。そこでバーッと言葉を吐いたら「初めて? めっちゃうまいじゃん」「やってたの? ビートに乗れてる」ってほめてもらえたんですよ。しかも、その日のバトル。チンポジムのバトルはパンチラインカウント制っていう面白いこと言った方が勝ちみたいな感じなんですけど、初参加で優勝出来て。

 

私下ネタ大好きなんですけど、日常ではあんまりそんな話しないじゃないですか。でも、チンポジムでは下ネタがめっちゃ飛び交ってて、私が女の子がしないような下ネタとかオタク話をしてもみんな笑ってくれて。すごく解放感があったんです。それが初めてのラップですね。

 

-それまではどんなものが好きでしたか?

 

うーん、今までほんと薄っぺらい人生だったんで……。特に真剣に向き合ったものもなく、絵を描いたりマンガを読んだりのオタク活動が趣味みたいな……。オタクであることにコンプレックスはあったけれど、それを直さないまま来ちゃって。オタクと言っても人によって言葉の解釈が違うのでアレなんですけど、便宜上このワードを使わせてもらいます。

 

コンプレックスの話をすると小学生の頃までさかのぼるんですが、まず小学4年生の頃にボボボーボ・ボーボボに出会ったことで人生が狂いまして。そこから少年ジャンプを読むようになって男の子とばっかりつるむようになったんです。小6まで、放課後はランドセル置いて家出て「遊戯王やるぞ!」「スマッシュブラザーズやるぞ!」という感じで。

 

でも、中学にあがるとお互い環境も変わるし思春期だし、それまで仲良く遊んでた男子たちとよそよそしくなっちゃって。女子は女子なりの処世術を身につけた子同士で仲良くしてる。私はそこには入れない人同士でつるんでたんですけど、一度そのうちの1人が「オタクまじキモいよ」って豹変して。今思うと彼女がオタク趣味じゃないのに私たちに合わせてくれていたんですが、とにかくそこでガーンとコンプレックスを植え付けられて。

 

でも、同じ趣味を持った子たちとどうにか楽しくやってたし、「キモくたっていいじゃん」と思ってもいたんですが、心のどこかに「普通になれたら」というのがずっとありました。

 

-ムノウちゃんの言う普通って?

 

モデル体型とか、すごくかわいいとかじゃなく、男の子と普通に話せたりする日常にいるような女の子ですね。虐げられない人間というか。女の子何人かで行動した時に、「私だけちょっと女子のカテゴリーに入ってないな」みたいなのがあって。

 

オタク友達以外とのコミュニケーションの取り方を知らないまま来てしまったので。いろんな人と会話が出来た上で、「一番仲がいいのはここ」ならいいんですけど、仲いい人以外とうまくコミュニケーションが取れないというか。

 

高校を卒業して専門学校に入って、オタクでない女友達が出来て、箱根に旅行に行ったり、芸能人にキャーキャー言ったりしてたんですが、向こうの彼氏や先輩たちとの話を聞いて、だんだん「自分とは違うな。キラキラしてるな」と思うようになって。

 

そのあと大学に編入してから、向こうは話しかけてくれるのに、私が斜に構えてフェードアウトしちゃったんです。去年ラップに会って、やっと新しい友達が出来た感じですね。


憧れと楽しさと申し訳なさの後に訪れたもの
-バトルに出ようと思ったきっかけは?

 

7月のチンポジムでワッショイサンバさんと仲良くなって、彼女が大学生ラップ選手権の予選に出ることになったから応援に行ったんです。そこで彼女が会場を大いに盛り上げて、ベスト8まで残ったんですよ。

 

同い年で、同じタイミングでラップを始めた女の子があんなにたくさんの人の前で歓声を受けてる。すごくかっこいいと思って。帰りの電車の中で「私も出てみたい」という気持ちが芽生えてきたんです。

 

でも、「まだラッパーと言えるほどじゃないし、怖いし」で迷ってたんですが、ちょうどその時のQuickJAPANに掲載されていたハハノシキュウさんのコラムを読んだんです。それは初めてバトルに出た人のきらめきや面白さを書いた内容で、「これを読んで出ないわけにはいかない」という謎の使命感が湧いてきて、「どうにでもなれ」って感じで運営にメールを送りました。

 

-出てみてどうでしたか?

 

あの時すごく緊張していて、電車の中で名前のdisができそうな人をチェックしたりしながらRラウンジに行きました。エスカレーター上がってドアを開けたらサンバさんがいてホッとしたんですけど。

 

最初の相手がclockくんだったので、「お前の時計を止めに来た」とか、ジョジョの奇妙な冒険DIOの話や、Mr.FULLSWINGのネタをいろいろガーッって言ったらお客さんがワーッと盛り上がってくれて、終わった後もいろんな人が「よかったね」って声をかけてくれたんです。「うわー!バトル楽しい!もっとやりたい!」と思うようになりました。

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-女性だけの大会・シンデレラMCバトルは転機として大きいと思うんだけど、どうして参加しようと思ったんですか?

 

もともとサンバさんは、正社員さんから「女子だけのMCバトルをやる」ってことで声をかけてられてたんです。そこでサンバさんから「オーディションだけどムノウちゃんも出る?」と言われて、「じゃあ、一緒にエントリーしよう」と。フィメールの子とやる機会はなかなかないし、せっかくだからと。ちょうどその頃別のバトル現場で楽しくやれていたから、調子に乗っていたんだと思います。

 

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ームノウちゃんはバトル経験豊富なアイドルラッパー・ライムベリーのMIRIちゃんと対戦して一回戦負けでしたね。あの前後で何か変化はありましたか?

 

なんだろう……。終わった後に悔しいというより申し訳なくてゾッとしたんですよ。前々日からずっとサンバさんと一緒にサイファーやったり、前日はお世話になってるラッパーさんたちにスタジオでバトルの稽古をつけてもらったりしたんです。

 

それなのに、本番では全然自信のないままバトルに出て、自分らしさも出せない百ゼロの負け試合をしてしまって……。負けたことよりまず、MIRIちゃんにも真摯でない、気持ちの入ってないバトルをしてしまったのが一番よくないなって。稽古をつけてくれた2人や、「がんばろう」って言ってくれたサンバさんはもちろん、見に来てくれた人、今まで関わってくれた人にも申し訳なくて。

 

めちゃくちゃ落ち込んで、しばらくバトルが怖くなったりもしたんですけど、終わってからエゴサして「MIRIちゃんの楽曲のサンプリング面白かった」とか書いてくれているところを読んだりして、ばんそうこう貼るじゃないですけど、「よし、切り替えてがんばろう」と。アホほど落ち込むんですけど、「ま、いっか」となるのが早いんですよね。悪い癖だと思うんですが。

 

その後、テレビのエキストラに出てバトルをやったり、ぽじぽじさんたちが運営しているサイファーのカレー会で、ノイズミュージックをバックに大声でラップしたりして、またラップが楽しいと思えるようになったんです。


バトルの稽古をつけてくれた先輩ラッパーさんは、あの後「この間の試合は僕にも責任があるから」って、それからもバトルの特訓をしてくれて。彼の指導で動画を見直しながら、自分の反省点を言い合ったり、バトルのコツを教えてもらったりしていました。

 

だから、やっぱりここから音源とライブを本当にがんばらなくちゃと。今まで期待してくれた人たちに、「シンデレラは負けちゃったけど、もつ酢飯いいじゃん」と思ってもらえるようにしなくてはと思いました。

 

私、今まで何やるにも当事者意識が低い感じだったんですよ。自分はどうでもいい存在だと思っていたから、どこかゲスト参加みたいな意識があって。でも、シンデレラの負けの後に「客席の人じゃなかったんだ」「自分の人生の当事者なんだ」というのを思うようになりました。


もつ酢飯に対しても、ずっと「ワッショイサンバありき」という気持ちがあったけど、せめて自信を持って隣にいられるように。ちゃんとパートナーにならなくちゃと。以前、「花火と花火師みたいな関係がいい」という話をしたんです。サンバさんはエンターティナーだし、花火みたいに前にバーンと出ていく。でも、打ち上げるには花火師が絶対必要なので、私は支えとしてやっていかなくちゃいけないなって。


競いあったり、笑いあったり。2人で作るリリック
-もつ酢飯のEPはどうやって作っていったんですか?

 

「テーマ何にする?」という話を最初にした時、「ふわふわ女子に立てる中指」って答えが返ってきて。もともとサンバさんと「歪み方が一緒だね」という話をしていたので、お互いにLINEでリリックを送り合いながらG.I.R.L.(ギリギリで生きてるラップやってるロンリーガールズ)を作りました。サンバさんのリリックに私が返してっていう。

 

初めてのライブでG.I.R.Lのウケがよくて、じゃあ、G.I.R.L. part2を作ろうと。G.I.R.L.、無限に出来るんですよ。ゆくゆくはヤバすぎるスキルみたいに10まで作ろうなんてふざけたことを言ってたんですけど。

G.I.R.L.(12/25スタジオ練習ver.) by wasshoisanba | Free Listening on SoundCloud

もつ酢飯「G.I.R.L part.2」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud


1on1は、サンバさんの「マウント取ってくる同級生がいる」という話から来てますね。仲がいいふりして見栄の張り合いするなんて、ほんとしょうもないって。後半の「虚構で自分とあいつをだまし」とかを教訓パートと呼んでます。ここはお互いに気にいってるところですね。

 

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ブラック・リフレクションはすべてのオタク女子に聞かせたい服と化粧の黒歴史の歌ですね。サンバさんとLINEで「姫カット〜〜。ああ~~」「赤いリップ〜〜」とかキャッキャッ言いながら作って。「何がアウトで何がセーフ」って、未だにまじわからんと。迷走する女の叫びですね。

もつ酢飯「ブラック・リフレクション」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

 

チョコレートマカロンは、もつ酢飯の由来の2人の好きな食べ物が、もし「チョコレートとマカロンだったら」という話を前からしていて。「略してチョコマカとか超可愛いよね。じゃあ、チョコマカ用MCは何にする?」なんて言いながら作った曲です。私がゆめのんで、サンバさんがマイカで。ゆめのんはスイマーやフレッシュパンチなんかのゆめかわいい系で、マイカはビレッジヴァンガード寄り、中野以上阿佐ヶ谷未満みたいな設定を作りながら。

 

これは珍しく私が先にバースを出してますね。自分の変身願望がけっこう入っています。ポエム書くのって気恥ずかしいじゃないですか。でも、これはゆめのんとマイカの曲という設定を免罪符に好き勝手書いた感じです。

 

-もつ酢飯の曲は固有名詞が多いよね。

 

G.I.R.Lの「彼氏がくれた サマンサタバサ 果てし無くベタ 黙んなバカが」はサンバさんのリリックなんですが、これは全踏みなんですよ。それで、「おおっ!私も固有名詞で揃えたい」と思って、「“たまにはおねだり♡” SABONにLUSHb 黙りなお願い! I don't give a fuck you!」みたいにブランド名を入れたりしてます。別にサボンにもラッシュにも恨みはないんですけど、女子大生が聞けばピンと来るかなと。

 

-逆に、ホワイト・リザレクションはわりと抽象的な言葉が多いね。

 

お互いの内面コンプレックスについての歌をやろうという曲で、ラップに出会うまでの話でもあるし、自分の性格の悪いところでもあるし。暗い時に考える自分の悪いところを歌詞にした感じですね。「メッキ剥がれ いつかお別れ 離れ離れの 自分は誰」とかは、取り繕ってがんばっても自分から離れちゃうようなところがあるというのを書いていて……。

 

これはイメージがあまり固まらないままレックをしてしまって、達成感がなかったというか、結果として各々の持つ目標値に達しなかった……。自分のスキルの足りなさとか、インプットの乏しさが出てしまった曲です。

 

-もつ酢飯のテーマは全部母音がイで終わってますね。

 

これはぽじぽじさんが提案してくれました。聴いて気持ちいい感じになりましたよね。私はリリックでカッコつけたがりなので、かなりセルフボーストが入っています。今までの自分の道のりと、ここからやっていくぞ!という気持ちと。

「ノアの導き」は、スタジオノアのことだし、「この青春は遅咲き」はラップを始めて友達が出来たという。「剥き出しの恥だけど 癖になる味」は、「ゲテモノって言われるけどやってやる」という意味で。

 

もつ酢飯「もつ酢飯のテーマ」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

-リリックは基本LINEで作ってるの?

 

「打ち合わせのために会おう」とかいう話もするんですけど、結局つい遊んじゃうから。LINEのノートに書いてつなげていって、それをぽじぽじさんに渡してアドバイスもらうってやり方にしています。

もつ酢飯のテーマも最初はもっと言葉が多かったんですけど、ぽじぽじさんに「もっともっとキャッチーでシンプルな方がいい」と言われて。G.I.R.L. part2を最後にしようと提案してくれたのもぽじぽじさんなんですよ。通して聴いた時の聴き心地が一番いいからって。ぽじさんには感謝しても仕切れないくらいお世話になってます。


恩返しができるようなことをやっていきたい
-ライブや制作に当たって、参考にしている人はいますか?

 

今まで、もうがむしゃらにやっていたから、具体的に「こういうステージングをしたい」とか、「こういうリリックの作り方をしたい」とかがまだないから、そういうのも固めていかなくちゃなと思っていて。経験も圧倒的に足りていないし、いい面でも悪い面でも粗削りなんですよ。


すごくいい環境でやらせてもらってるから、関わっている人たちに「いいね」「面白いね」と思ってもらえるようにがんばらないと。私がラップを始めてまだ1年もたってないし、もつ酢飯は音源作り始めてから半年もないくらいなのに、すごく注目してもらって応援してくれる人がいる。それを考えると、それだけの期待や責任を意識しなければと思うんです。

 

-やることがいっぱいあると。

 

とりあえずリリースパーティーが終わったら、もつ酢飯ふたりの音源はしばらく開けて、その間にお互いのスキルやヒップホップに対する思いを上げていきたいです。今まで「曲作る」「出す」「バトルやる」みたいなわんこそばみたいな感じでやってきたので、落ち着いてお互いがどうなりたいかを考え直す時間かなって。2人とも就職があるし。

 

でもこれからも、自分たちが楽しくて、みんなも楽しんでもらえるようなことをどんどんやっていけたらうれしいです。関わってくれた人が笑顔になってくれればいいなって。……なんか企業理念みたいですね。

 

※MAZACON1収録の「頭文字M」は、彼女が初めて作った曲で、MCムノウ前夜のことを綴ったもの。つたないラップから彼女の内面がこぼれ出る内容になっていて、こちらも必聴。

ビートメーカー・ぽじぽじa.k.a DocManjuのインタビューは4月17~18日公開を予定しています。→公開しました。

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