ホンのつまみぐい

誤字脱字・事実誤認など遠慮なくご指摘ください。

くだらない、面白い、ラップは楽しいを更新するTinpot Maniax vol.3 @月あかり夢てらす

 というわけで、第3回目のチンポマニアックスでしたが、3回目もちゃんと新鮮な面白さがあった……。すごい。

第3回のオープニングはぽじぽじくんのビートライブ。と言っても、遅れていったので10分も聴けなかったが……。

象の足音とテレビのノイズ音を合わせたようなビートで、ほぼほぼ実験音楽
ぽじくん曰く、「その場で音をいじって作ってるので準備がいらなくてラク」とか。オープニングから攻めてる。

ノイズが終わり、この日アルバム「テンシルエア」を公開したヤボシキイくんがバンダナを頭にハチマキ縛りして登場。オタク記号としてのハチマキなのかもしれないけど、なんだか髪型やゆったりしたジャケットも合わせてポケモンデジモンのキャラみたい。

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自己紹介曲のYABOから、蘇我ハーバーでオランゲーナさん乱入。
蘇我ハーバーは仲間と遊ぶ日々の歌。電車の音のイントロから、ヤボシキイくんの歌パートにオランゲーナさんのラップという流れがエモ。

ああまだ帰りたくない
ガキに戻る時間はあっという間
もういっそ住んじゃおうか

ハーバーシティ蘇我いつもの人たちと呑んで帰る

笑い声3コマ打ち越え
息もできなくなって帰る

ハチマキしばりでヤボシくんと揃えたオランゲーナさん。いい顔でラップしていてかっこよかった。その直後にアカペラでうんちについてラップする流れも含めて。や、マジアカペラでラップを聴かせるのは偉業ですよ。

そこから客演ぽじぽじくんの「な・が・らうんち」。
ビートの渋さとタイトル通りのリリックのくだらなさのギャップと、しれっとした態度の二人のラップが笑える。

「24小節うんちについて書くのすげえ大変だったんですよ」

最後はOTK HUSTLER feat. Jabvara,DocManju

YABO$HIKI-1「OTK HUSTLER feat. Jabvara,DocManju」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

「お前ら犯罪者」「マスターベーションマスター」「もれは走り去る彼女と湾岸」というフックが耳に残るギャングスタラップのパロディみたいな曲で、ライブで見ると音源にさらにふてぶてしさが加わってかっこいい。「もれは走り去る彼女と湾岸」というバースで下手から上手、上手から下手をダッシュし、盛大に歌詞を飛ばすヤボシくんには、後程各所からのツッコミが入った。

ヤボシくんのフリートークからパンチラインカウント制バトル。

時間ないので省略するけど、昼間だったせいかあんまり性癖暴露にはいかず、わりとほのぼのとしたバトルが続く中、「遊牧民 うんこぶり~」という、相変わらずオリジナルすぎるライムの茶怒さんに対し、初バトル参加のばっきーさんが延長を勝ち取る流れが印象的だった。

お次のカクニケンスケくんのライブは本日限定セット。FFの曲でスタートして「ぼくが大好きなゲームの曲に合わせて4曲。今日しかやんないと思います」というあいさつからクロノトリガー龍が如く、パズドラからの曲でラップ。龍が如くでは、ゲーム本編の音声を使い、無礼な客を追い出すヤクザの小芝居を披露。

そこまでお客様がお望みなら、この真島、僭越ながらお相手いたしましょう。ただし、私からは一切手出しはいたしません。なにしろ、「お客様は神様」ですから

100%その後の予想がつくセリフだ! セリフに合わせて流麗なお辞儀の動作をするカクニくんがキュート。普段はあまりやらないような早めのラップをやっていたのも含めて見ごたえあった。

最後はみんなのうたに流れていそうな「回送ブランコ」で〆。

お父さんの転勤で外国に引っ越すことになったんだ。
ぼくの初恋は前向きなことも後ろ向きなことも言えないまま終わってしまったんだ。

声の優しさと太さが歌詞とよく合ってるし、それまでの流れを一度ちゃんと切ってから歌に没頭させるの、つくづく巧い。

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そして、大阪からの来訪者けむりくらげさんのDJ。

アナログレコードでの日本語ラップセットがめちゃくちゃかっこいい。そして、うまく言えないのだけど音の質が全然違う。普段は1方向から1種類の音が面になって迫ってくる印象なんだけど、今回は1種類は上の気流から、もう1種類は下の気流の乗って届いた音が、最終的にこちらに来た時点でひとつの曲になる感じ。3回目の会場なのだけど、やり方や演者でこんなにも音の質が変わるのかと衝撃を受ける。

DJブースの正面で踊り続けるヘルガさんの姿も印象的だった。

骨太なDJ終わって、「チンマニとかいうイベントでこんなの聴けるなんてねえ」「チンマニってクラブイベントだったんだっていう」というぽじくんとヤボシ君の会話。

いつの間にかジャケットを脱いでTシャツ姿になったヤボシくんが「俺DJであがりすぎて疲れたよ〜〜。帰りてえよ〜〜」と一言。

その後のバトルは樫さんと茶怒さんの決勝戦。チンポガールズの仲間・樫さんの奮闘にワッショイサンバちゃんが「運動会のママってこんな感じなんだなー」と言いながら動画を撮影。テーマがちんげで茶怒さん先攻というかなりやりづらい戦いにアンサーをちゃんと返し続ける樫さん、がんばってた!しかし、結局茶怒さん勝利で3連勝。まじチャンピオン。

お次はフローだけやんMCバトル

お題カードで引いた言葉と、その単語で韻を踏んだ言葉しか使えない「完全に中身がないMCバトルでございます」と主催の説明。ちなみに同じ単語だけで8は厳しいので、4小節2本。

これを聞いて「これからやるやつ、ヒップホップの能力関係ありますよ」という遊牧民さん。

そんな遊牧民さんと今日犬さんの第1試合。お題は「失礼なオタク」。今日犬さんもフローにこだわりがあるタイプなのだけど、遊牧民さんの「ししししっつれいなオタク!」というフローというより、格ゲーのバグみたいなリアクション芸が勝利。

どちらかというと、演劇のワークショップによくある「悲しそうなおはよう」「うれしそうなおはよう」「不満げなおはよう」など、ひとつの言葉を感情を変化させて言っていくメソッドのよう。実際、フローというよりは「いかにしてセリフとして聞かせるか」に終始するバトルがほとんどだったのだけど、ここでけむりくらげ(追記けむりくらげさん、フリースタイルラップ歴半年くらいとのことでした。びっくり!)、ぎぎぎのでにろう、カクニケンスケというラッパー歴の長いメンツが本領発揮。

エネミーコントローラーというお題で、「眠みほんともーや」など、正しく韻を踏みつつ迫るけむりくらげさんや、歌ものも強いぎぎぎのでにろうくん、そして「フローで売ってる」と宣言したカクニケンスケくんが音に乗る力の高さを見せつける。

面白いのが、同じ言葉でずっとラップし続けていても、ちゃんとリズムに乗ったラップを聴くと人がアガっていくこと。カクニケンスケくんの試合で最前の遊牧民さんが飛んだり跳ねたりしているのを見て、その反応の顕著さに感動。

準決勝のカクニケンスケVSぎぎぎのでにろうの電光石火というお題に対して「前哨戦ですか」「援交せんか」「援交せんわ!」など、お互いが韻を踏みつつ、ガチでフローを見せつけあうバトルはほんとに熱かった。

それとは別に、森羅万象というお題でコールアンドレスポンスを誘って2本目を森羅万象の大合唱にさせたあらいぐまさんや、品行方正とちんこほうけいで韻を踏んだ茶怒さんも面白かったけれど。

決勝、かずんどさんを下して「当たり前だよ!フローで売ってんだよ。こっちは!」というカクニさん、かっこよかった。

そして、「でも、これが見たかったんですよ。カクニさんとでにろうくんが無双するところが」というぽじくん。

ウィニングフリースタイルも「ツブ貝」しか使えないということで、無理やりツブ貝でラップするカクニくん。そして、上がりまくる会場。最後に一言「こんなのもう一生やるかい!」で踏んで落とすところも粋!

オープンマイクが続いて、ヘルガさんから異動で福岡に行ってしまうこすもぱわーさんへマイクの贈呈。

「これからもラップやってもらいたいという気持ちを込めて、マイマイクの贈呈です」という言葉に「距離は離れちゃうけど、これからもMAZAIRECODSの仲間としてやっていきたいと思います。これで曲撮るので、みんな聞いてください」と返すこすもぱわーさん。こすもぱわーさん、そういう気持ちの表れなのか、この日はバトルもオープンマイクも力が入っていて、いろいろ葛藤や不安はあるみたいだけどがんばってほしい。

ヘルガさんのDJで幕。

最後の「みんなが楽しんでくれるのがほんとうれしいんで」「これからも新しい面白いことしていきたい」という運営陣の言葉が力強い。

いや、チンマニ味が濃いから、始まる前までは「そろそろ過去のテンションを超える文章は書けなくなるかな」なんて思ってたんだけど、ちゃんと新しいことをやるから全然飽きない。

終わった後に、今回は負けたかと思ったという茶怒さんや、フローバトルに感銘を受けた今日犬さんがいい意味で刺激を受けていたのも、ラップを好きでいてほしいという主催側の想いがちゃんと形になっていて、ただのありがちなパーティーじゃないと思う。

またイベントをやる予定らしいので、その時も現場に居合わせたいと思います。

 

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くせになる味のホームメイドパーティー!もつ酢飯EPリリースパーティー「大もつ酢飯展」@月あかり夢てらす

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 オタクとラップがつないだワッショイサンバ×無能の二人組ラップユニット「もつ酢飯」がついにフィジカルE.P(無配)リリース!

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 ということで、リリースパーティー「大もつ酢飯展」に行ってまいりました。ちなみにイベント名はデパートでの物産展「大北海道展」的な、自分たちに関わってくれた人々が全部のせで集まる場所にしたいという気持ちからつけられたものだとか。

 会場の川崎「月あかり夢てらす」は、これまでもスタジオチンポ主催イベントで使われていたアニソンバー。いつもは4階で行われていたイベントですが、今回は会場を少し広めの5階に移してのパーティー。

 財布を忘れて飛び出てしまい(サ……サイフレス)、開場には間に合わなかったものの、DJyukihillさんのオープニング邦ロックDJセット途中から聴けました。一曲ごとの盛り上がりがすごくて、初っ端から現場がハイテンション。

 もつ酢飯のふたりはワッショイサンバちゃんが作ったという白いパーカー。サンバちゃんのパーカーには左胸に小さく、無能ちゃんのパーカーには鎖骨下に大きくピンクのもつ酢飯のロゴが印字されていました。

 DJタイムの間に黒髪ロングの美女2人が登場。正直ちょっとこの場には迫力がありすぎる存在で、誰の知り合いかと思ったら、Amaterasくんのバックダンサーでした。

 そのAmaterasくん、まずは美女2人にソロを躍らせてから、ラップで割り込んでくるスタイル。先日のタイダルトガリネズミの真摯さと違って、もはやライブというより一発芸。真剣に踊る美女の真ん前で痙攣しながら爆笑するカクニケンスケくんとTUMAくんの姿が若干失礼で、横目に見ながら笑ってしまいました。

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 お次はMAZAIRECORDS所属のMANOYさん。本日初ライブということで、ちょっと緊張気味。

「もつ酢飯が好きで勝手にマザレコ所属を名乗っているMANOYです」という自己紹介。この日は新曲の他にもつ酢飯へのお祝いラップを披露。

「もつ酢飯 正直ゲテモノ料理 煮ても焼いても食えない」というひねった敬意の言葉の後に、「まるで宝石箱みたいなパーティー」という言葉が並ぶのに愛を感じました。

 最後の曲「3+1」MAZACON1に収録)は「衣食住では満たされない 満たされない腹 これが人類のサガ」というシニカルな曲なんですが、「イーアールサンスー 承認欲求」というフックで「承認欲求!」というコーレスを誘っていたのが楽しかった。MANOYさんの曲は体言止めの使い方が気持ちいい。(MAZACON1に収録)

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 ライブは一区切り、お次はタッグマッチバトルのもつ酢飯杯予選。8小節×4と長めのバトル。

 樫×MANOY、ぎぎぎのでにろう×MARUKEN、TUMA×bunTes、ワッショイサンバ×カクニケンスケ、ヤボシキイ×ぽじぽじ、ストローム×T-Tongueの限定タッグで、今回も面白いことやヤバイことを言ったりやったりした数が計上されていくパンチラインカウント制バトル。

 長くなるので詳細は省きますが、ほぼほぼ表に出せない自己の性癖暴露話でどんどん回りをドン引きさせていくMARUKENさんの存在感が悪い意味で光りました。

 他に印象的だったのはヤボシキイ×ぽじぽじvsストローム×T-Tongue戦。フードを深めにかぶって現れ、ストリート感を出してきたストローム×T-Tongueの「お前らギャグラップ 全然黒くねえ」というちゃんと勝ちに来るラップに対して、「わー!こんな怖い人が来るなんて聞いてないよ~~」と言い出すヤボシキイくんと「黒とか白とかこの場で言い出すお前らが空気読めてねえ」というぽじぽじくんチームのラップが勝ってしまったのは端から見ていてちょっと申し訳ない気持ちになりました……。お互い気の利いたバースたくさんあったんですけどね。

 そのT-Tongueくんのライブ。音に乗る力の高さが身体の動かし方にも出ていて、なるほどフィジカル強いなと感心。フックで「マイホームタウンシーサイド湘南」と入れる曲が爽やかでよかったです。聴きとりやすく、ストレートなリリック。ちなみにバックDJワッショイサンバちゃんだったんですが、ミスったところに「おいおい早漏かよ」と言って笑いを取ってました。

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 お次はぎぎぎのでにろうくん。「インターネットからわざわざ来ました」という自己紹介。歌の部分多めで音がかっこいい。MCではいろいろなヒップホップがあるけれどという趣旨の前置きを入れて「横道も王道だと思います」。友人のHaGRmA,A-CONYくんを加えての「P**CE」がよかった。

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 ライブの後はタッグマッチ後半戦。倫理観に挑戦し続けるMARUKENさんに対してキレるカクニケンスケくんや、ヤボキシイくんとぽじぽじくんのコンビネーションの良さが見所でした。

 結局ヤボキシイ×ぽじぽじが優勝。ウィニングラップを求められ、一言も発さず適当なビートボックスをやっていたのに笑いました。

   TUMAくんのライブは3月11日にやることの意味を語るMCも含めて、誠実な人柄が出ている印象。音もリリックもスマートなんだけど、本人はちょっと不器用な感じが微笑ましかった。しかし、そのスマートさと対照的な #チカラNSという筋トレラップが一番テンションがあがりました。

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 バトルでの活躍も印象に残ったカクニケンスケくん。「ぼくはアイドルだから!」という日頃のキャラクター作りとは対照的に、1曲1曲しっかり物語を読み取らせるアンニュイなラップ。童謡のような雰囲気の「風船を割りたくないなら」が特に印象に残りました。20分の持ち時間すべてをどこか寂しい曲でやりこなし、最後まで聴かせるのはなかなか出来ない。また見たくなる内容でした。

 演者が若いせいもあって、この日のライブは、パワフルなんだけど客をコントロールできていなかったり、音源での洗練をライブで再現できなかったりする瞬間も多かったのですが、カクニくんは高いレベルで客をコントロールしつつ、伝えたいことを表現出来ている印象を受けました。

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 ライブ終わって時間が巻いていたので、シャッフルタッグマッチの前にワッショイサンバちゃんが大学生ラップ選手権から今日までの日々を語り、本日の演者に対する感謝の言葉を述べました。

 シャッフルタッグマッチは樫×MARUKEN、TUMA×ワッショイサンバ、MANOY×bunTes、カクニケンスケ×ヤボシキイ、ぎぎぎのでにろう×ぽじぽじ、いーえっく×コース(飛び入り)。

 変わらず暴走するMARUKENさんをコントロールする樫さんの存在感が素晴らしかった。また、何となく雰囲気の似ているぎぎぎのでにろう×ぽじぽじタッグの安定感のあるバトルも印象的でした。

 シャッフルバトル前半戦の後は、ぽじぽじa.k.aDocManjuくんのビートライブの最後にヤボシキイくんが1曲ライブを披露。リリック飛んだと告白していましたが、声の強さがかっこよかったです。

 さて、いよいよメインのもつ酢飯ライブショーケース。

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 まずは「マザレコのみんなに向けて」という前置きからネット公開のアルバムには入っていないOTKという曲を披露。内容はタイトル通りのオタク賛歌。「ただのオタクがマイクで夢叶えてるぜ」と叫ぶワッショイサンバちゃん。

 次のG.I.R.Lでは、みんなでフックの「社会に立てなミドルフィンガー ついでに添えな メディスンフィンガー」を大合唱!

 そして「女同士の会話は常に相手のあらをすくうMCバトルなのです」というMCから1on1。

てかいつまでも出来ないね 本命彼氏
奇跡おこるかもね どんでん返し(笑) 

下着はもちろん上下でおそろ?
見せる相手もいないのに? ワラ

 という辛辣でゴミのような嫌みの言い合いが延々続くバトル曲。お互いが顔を見合わせる小芝居はたしかに見た目完全にMCバトルで、ちょっと恐ろしいけど笑えちゃう。最後に二人がお互いの思想を叫ぶバースも含め、これはぜひ現場で見てほしい。

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 お次は通称ポガ、正式名称「チンポガールズ」のマイクリレー曲「random fortunes」。ワッショイサンバ、無能、MANOY、樫で3本マイクを回しながらの「サンバ 無能 樫 MANOY がんばるぞい」は可愛かった……。(Python Codeに収録)

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 G.I.R.L.2の前に無能ちゃんのご両親が会場に到着。アドリブでワッショイサンバちゃんが「え~、〇〇(無能ちゃんの本名)さんのお母様。私、娘さんとラップが出来てとても幸せです」と言い出し、笑う会場。

 最後は「もつ酢飯×7 割れ鍋に綴じ蓋 もつ酢飯」という明快なフックと疾走感のあるビートのもつ酢飯のテーマで終了。

 「ガラスの靴なんてたたき割ってやる!」などと前のめりなパワーワードを投げるワッショイサンバちゃんに、ちょいちょい韻を踏みながらツッコミを入れる無能ちゃんのコンビネーションがとても面白くて、MCも退屈させない濃い30分でした。

 シャッフルマッチ後半戦は、樫×MARUKEN、カクニケンスケ×ヤボvイ、ぎぎぎのでにろう×ぽじぽじの総当たり戦。対戦相手を忘れてしまいましたが、カクニケンスケくんが、バトルのあまりの下品な内容にあきれて自分のバース7小節分を無言で過ごし、最後の1小節で「ついていけない」と一言だけ言い放つ場面に笑いました。後でヤボシキイくんが「俺までカクニさんに嫌われたんじゃないかと思ってハラハラした」と言ってましたが、そのカクニケンスケ×ヤボシキイがコンビネーションの良さとファニーさで優勝。

 最後はJavaraさんのエレクトロとダブステップ中心のDJ。サプライズで3月生まれのTUMAくんとMANOYさん、そしてワッショイサンバちゃんのためにケーキが登場。クラッカーを片手にありったけ持って引き抜くワッショイサンバちゃんの笑顔がとてもキュートでした。

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 〆のあいさつで、ちょっと涙ぐみながら「人の優しさの上に成り立ってるなって。かっこいいと思って今日呼んだ人たちなんで、それを目の前で観れてすごいうれしかったです。これがいつか伝説の幕開けと言われるようにがんばりたいと思います!」というワッショイサンバちゃん。そして、全部言われちゃったと前置きしながら「こうやっていろんな人に支えてもらって楽しいパーティーができて本当にありがとうございます。これからも面白いことやっていきたいと思います!」という無能ちゃん。

 ほがらかで暖かいパーティーの、熱のこもったエンドロールでした。

 

 

 サンバちゃん、無能ちゃんお疲れ様でした!もつ酢飯EPがメルカリで高額取引できるようになるまで追いかけますね。

 MAZAIRECORDSのみんなもこれからどんどん音源を出していく予定なので、もちろんそっちもちゃんと聴いていきたいと思います。マザレコメンバーの誠実で優しいけど、そこそこ人が悪いところ、本当に最高です。

 

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もつ酢飯のリリックはこちらで読めます。

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オンリーワン文化系ラッパーたちとアイドルラッパーたちの競演 "tapes lounge" @中目黒solfa

 校庭カメラガールツヴァイ(以後コウテカ2)、校庭カメラギャル(以後ウテギャ)、もるももる、colobs、faelaが所属するインディーズレーベルtapestok recordsの主催企画。

tapestok records | Free Listening on SoundCloud

 1月30日にセカンドEPシューマッハ、4月にはアルバムとリリースの続くウテギャがこの日のOPとトリ。

 会場の中目黒solfaはクラブミュージックに強い箱のようで、入り口のガラスのドアや、メインフロア奥に用意されたイスと小さなテーブル。そしてバラエティー豊かなアルコールメニューと、瀟洒なバーのような雰囲気。ライブハウスと違ってくつろぎながら音とお酒を楽しむ場という感じ。

 この日のブッキングも通常のアイドルイベントとはちょっと違い、ソロラッパー4人にアコースティックギター1人、アイドルラップユニット2組という顔ぶれ。

ギャルトーク

 MCの下手なウテギャ2人のためのトークコーナーだとか。「最近何してる?」というラミタタラッタの振りに「夜な夜な男をくどいている」と答えるパタコアンドパタコ。ゆるくソシャゲの話で盛り上がる。微妙な表情で見守りつつ、ちゃんと反応してあげるオタクの健気さに胸を打たれる。

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maco marets

 20代前半と思われる男性ラッパー。細身の体にジャジーなトラック、そして何気ない日常の情景を気負いなく描くリリック。聴きながら佐内正史平間至の写真を連想する。

 MC中に「前も出させてもらって。その時、アイドルのお客さんっていいなって思って。『ぼくはかわいい女の子じゃないですけど』って言ったら『かわいいよー!』って返してくれて。そういうあったかい感じが」という言葉に、「かわいー!」の合いの手。うん、かわいい。余談だけど、彼のライブをアエロさんがうまく言語化していてなるほど。同じライブを見た人の感想はいつでもいくらでも読みたい。

 

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ORANG PENDEK

ORANG PENDEK

 

 

 次の演者の前に、つなぎでハハノシキュウのフリースタイル。「フリースタイルダンジョン呼ばれてない!」「フリースタイルダンジョン呼ばれてないイベントにも呼ばれてない!」「ジブラの箸投げたやつらというライン、ずっと日本人だからわざとそうしてるんだよって言ってたら、ツイッターで勘違いだって謝ってた!」など、サービス精神旺盛なラインに笑ってしまった。

Vivid Jas

 tapestokのディレクターであり、リリックの担当者。DJからフリースタイル、オリジナル曲、Curtain Callの原曲という流れだったかな。やっぱりクルーのもとになる人なんだなというのを確認。そして、このリリシズムがアイドルと出会えてよかったなというのも改めて実感。

隼マサカド

 ポストロックバンドcolobsのボーカル&ギターであり、コウテカ曲として、Where the Wild Things、Unchanging end Roll、iUMなどを手掛ける隼マサカドのアコギ弾き語り。ふくらみのある声、宇宙や透明といった抽象度の高い歌詞、そしてギターの無理のない演奏が心地よい。Where the Wild Thingsのセルフカバーも聴けた。

 

【MV】ぼくたちの流星群 / colobs

音像とコスモス

音像とコスモス

 

 

春ねむり

 「ロックンロールは死なない」Tシャツで登場。「ジャンルはヒップホップで、こころはロックンロール」とある通り、泣き出しそうなのに強い意志の宿る声や、ステージから降りて客をあおる姿、怒りを覚える対象に対する辛辣なMCは少し前の大森靖子を思い出させる。誰かに似ていると言われるのは本意ではないだろうけど、猿真似というわけではなく、表現のための最適を追求し続けた結果としてそうなったという印象。
「ずっとずっと夢を見てる」「ロックンロールは死なないよ」というサビが声色とともに耳に残る。この日はMCで蔦谷好位置プロデュース「さよならぼくのシンデレラ」のMV制作に関するクラウドファンディングについて説明していて、マネージャーが懸命にチラシを配っていた。


BAYCAMP2016 TIP OFF ACT 春ねむり(完全版)

 

さよなら、ユースフォビア

さよなら、ユースフォビア

 

 

ハハノシキュウ

 最前が女の子10人ほどに入れ替わる。咆哮系ラッパー2人目なんて書くと怒られるかな。ただ、春ねむりが歌詞には属人的な言葉を使いながら、大きな救いを歌うことに挑戦し続けているのと対照的に、ハハノシキュウは歌詞にあまり一人称を用いず、顔をキャップとマスクで隠し、地声をつぶしたしゃがれ声で、語るほど結論から遠くなるようなリリックをラップする。以前「僕の私小説は語るに値しないくらい空っぽだから」と書いていたけど、その思想が外見にも反映されているのだろう。ただ、一人MCバトル(客席からお題を募って披露するフリースタイル)という余興を挟んだ後に披露された「ストーリーテラー」は明白な自分語りの曲。彼がこれまで見聞きしてきた現場の空気や感情の揺れが端正な言葉でつづられていて、描かれる風景に迷いがない。

 聴き終えた瞬間、ふいに高校・大学のころに春ねむりやハハノシキュウに出会っていたら「こんな人がこんな小さな場所で歌っていて、自分がそれを見ている」ことに優越感やいらだちを感じただろうと思う。神秘性の高いキャラクターなので、女性ファンが多いのもよくわかる。これも小さいけれどフリースタイルダンジョンの成果なのだろう。

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リップクリームを絶対になくさない方法

リップクリームを絶対になくさない方法

  • アーティスト: ハハノシキュウ,沈黙を語る人
  • 出版社/メーカー: インディーズレーベル
  • 発売日: 2012/05/11
  • メディア: CD
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ストーリーテラー

ストーリーテラー

  • ハハノシキュウ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥200

 

O'CHAWANZ

 コウテカ2メンバーがセカンドファクトリーに移籍して2人組アイドルラップユニットとして活動開始。赤チェックのワンピースののんのんれめると白のブラウスに若草色のスカートのしゅがーしゅらら。コウテカは世界観へのこだわりのためか、MCがほぼないのが常だったけれど、「今日で2回目のライブなのに、持ち時間が30分もあって……。でも、これはJasさんからの試練だと思う!」などの呑気なMCがほがらか。

 ただ、曲が以前同事務所に所属していた双子のアイドルラップユニットMIKA☆RIKAのカバーだったのはやはり気になった。技術的にも声質的にも問題はないと思うけど、何せMIKA☆RIKAのイメージが強すぎて。オリジナル曲が増えれば安心して見られると思うのだけど。恋愛サーキュレーションのカバーはとてもかわいかった。

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校庭カメラギャル

 

 事前のツイッターでのあおりから、1曲目から新曲「ギャルバーガー」投入。ミクスチャーロックというジャンルらしいけれど、攻撃的な音でオタクの熱量がガーッと上がるさまがすごかった。

 改めてウテギャは不思議なユニットだ。冒頭でたわいもないトークを繰り広げていたほわっとした女の子2人が、ステージでいきなりキレ気味に客をあおりだす。時には客へのdisも交えて。それに答えるように熱量をあげていくオタク……。やっぱ、ちょっと特殊。

 でもパタコやラミタのヤケクソ気味のラップには嘘がない。普段はおとなしい女の子たちの中に宿るルサンチマンや衝動を、「disるアイドルラップ」という形式が引き出している。

 E-TICKET PRODUCTIONプロデュースのライムベリーにも挑発的なリリックはあったけれど、あれは小生意気の範疇。コウテカのdisは歌詞の属人性が低いために言葉遊びの一環という印象。

 しかし、ウテギャは
「音楽知らないから 首降らずカカシ 今日もつぶやく音楽の話 と見せかけてただのアイドルの話」
「別にここは君の夢を再現する現場じゃないんだよ うっさいなもう黙ってろよ」
「おいそこのおっさん背後に気をつけな」

などと過剰に目の前の客に対して攻撃的なのだ。それを面白がるオタクとアイドルの不思議な共闘関係。

 1曲目から最後まで盛り上がりの途切れないステージで、終わった後のオタクたちのイイ顔ぶりが光っていた。

 

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 体調不良のために終わってすぐに帰宅したけれど、世界観をしっかり持ったアーティストばかりで全組楽しめた。

 日頃アイドルアップと日本語ラップは互いを別物扱いしている印象で、どちらも好きな立場としてはちょっと寂しい。別にハマらなくてもいいので「あっちはあっちで面白いことやってるんだな」と思ってくれる人が増えないかなとは思っていて、このイベントはまさにそういう内容だったと思う。主催イベントは大変だと思うけれど、またtapestok recordsにこういう企画をやってほしい。

#日本語ラップ批評ナイト vol.2面白かったです

会場は文禄堂高円寺店。書店員兼ラッパーの有地和毅さん主催イベント第2回。

あの小さな店舗にどうやってイベントスペースを作るのかと思ってたら、コミック売り場と文庫売り場を潰してイスを並べるんですね。街の本屋の土曜の夜に、なかなか思い切ったレイアウト。

韻踏み夫さんが詳細な書き起こしに着手しているようなので、学術的価値のある記録はそちらにお任せするとして、当日の現場の空気と雑感を少し。

オープニングから主催の有地さんの「今夜日本語ラップ批評が始まると言っても過言ではない」という趣旨の演説。さすがラッパー、言いたいことがたくさんあるんだなあという長さ。

最初に挙手で1回目に来た人を聞いていました。全体を見渡せる位置ではなかったので正確なところはわからないけれど、おそらく10人いないくらい。

前半は磯部涼さんのレジメを基調にした日本語ラップ批評の歴史について。

近田春夫×いとうせいこう対談から、FRONTでの佐々木士郎の連載B-BOYイズムの話へ。

途中に「LB関連は?」と言われた磯部さんが「それは完全に手打ちです」と返し「佐々木士郎が作り上げようとしてきたハードコア史観についての資料」とつなぐ場面がありましたが、全体的に日本語ラップ批評における宇多丸さんの重要性を確認するような内容でした。

他には「FRONT」および「BLAST」が権威になってしまい、アーティストと共依存的な関係に陥り、ジャーナリズムあるいは批評としての役割を果たさなくなってしまうまでの過程や、アメリカの情報誌についての話なども。

前半は基調報告から各人の批評の方法論を語る流れに。後半は質疑応答という構成でした。

振り返ると各登壇者の批評への距離感や方法論がわかりやすく理解できる内容になったのではと思います。

佐藤雄一
詩人であり現代詩手帖に「絶対的にHIP HOPであらねばならない」という連載を持っていた佐藤雄一さん。模様のようなリリックという表現を軸にKOHHを語った、ユリイカ掲載の「なぜ貧しいリリックのKOHHを何度も聴いてしまうのか?」でお名前を存じていたのですが、さすが詩人だけあって言葉の使い方がドラマチックでした。

日本語ラップ批評とは二文字であらわすことができるんですよ!何だと思います?『でも』です。批評は『でも』から始まるんですよ。『でも』の続きを考えるのが批評。いいね!より短い」という啖呵を切ったり、「なんで批評をやるのか?」という来場者からの問いに対して「感染したからですよ!」と答えたりと、「批評に囚われること」の快楽を饒舌に語る様が印象的でした。

togetter.com

中島晴矢

現代美術家でラッパーの中島晴矢さん。インスタレーションの一部に自分がラップする姿を組み込んだこともあるとか。中島さんは年代的にBLASTの連載はリアルタイムでは読んでいなかったものの「曲を通してライムスターに説得されていた」ことが、自身がプレイヤーとして日本語ラップに参加するきっかけになっているとか。

これ、何となくわかります。磯部さんがトーク中で「常にお前はどうだと問われる」と表現していたけど、ヒップホップって何故か「参加しなくてはいけない」気にさせられますよね。敷居が低いのも大きいのでしょうが。

www.youtube.com

韻踏み夫

私批評から離れ、文芸批評の方法論で韻の構造について語る韻踏み夫さん。印象的だったのは、SEEDAが般若のリリックについて「一回目が表で二回目が裏」と話していたけれど、それをうまく説明できずに終わっていたのを見て、自分が言葉にしなくてはと思ったという話でした。当事者すらうまく語れない「そこで起こっている何か」について言語化するというのは、たしかに評論家の仕事ですね。

bobdeema.hatenablog.com

磯部涼

自分はあくまで音楽ライターで批評家ではないという磯部さん。「スタジオに行ってアーティストに話を聞いたことを大きな言葉で書くことに限界を感じた。それなら面白いアーティストを自分で探したほうが自分の原稿が面白くなる」という話と、「川崎」について、どなたかに「今度はこれから音楽をやる子の話を書き始めたんだね」と言われたのがうれしかった」というお話が印象的でした。

cakes.mu

吉田雅史

ビートメイカーとしても活動する吉田さん。基本的に司会としてお話を回す役割に徹されていましたが、印象的だったのはビートを語る言説がないという指摘。ビートメイカーがビートメイクの方法論を語る場が必要という話は、質疑の際の「日本オリジナルの強いビートが(国際的に伝搬していくような)ない」という問いを引き出していたのではないかと思います。「ビートメイカーにとっての勝ちはフォロワーを作り出すこと」「日本国内で完結したガラパゴス化したものになっていないか」という話から「アメリカなんか自分の州の曲しか聴かない」「批評家としてはオリジンは存在せず、必ず何かの影響を受けているという立場になる」という議論が生まれたのが面白かった。誰がどのビートに影響を受けているかなどを語ることでこれまでとは違った文脈が見出せるのではないかという話、とても刺激的でした。

school.genron.co.jp

このほか、佐藤さんの「今はラッパーがロックスターを目指している」という指摘は、「日本語ラップの今後」につながる部分だと思うので、もっと掘り下げることができるのではないかと思いました。

余談ですが、佐藤さんがいきなり「今日神戸から来てる高校生!俺のギャラあげる!」と言い出して本当に渡しちゃったり、その「共通一次を終えてここに来た」という高校生に登壇者が皆興味津々で質問したり、質疑でフリースタイルを披露する人がいたりと、なんだかファニーというかチャーミングな場面も多くて、そういう意味でも楽しかったです。ちなみに質問したラッパーさんは佐藤さんに「長いよ!16小節にまとめろよ!」と言われてましたが。

私が「音楽を文字で表現するにはどうすればいいか。専門用語の羅列になってしまうと伝わらないのではないか」という質問をし、流れで「アイドルラップが好き」という話をすることになったのですが、そこから佐藤さんが「ライムベリーのMIRIちゃんがね!ライブでCOMA-CHIのB-GIRLイズムをカバーしたんだけど、その時にMCでそのことを言わなくて、B-BOYイズムだって話になっちゃってCOMA-CHIが怒ったんですよ!」と言い出して「何を言い出すんだ?」と思ったら、「吉田さんはそのことについて話してください!」というフリに、吉田さんが「え~?」という顔をされたの今思い出しても笑ってしまいます。

トークイベントも一種のセッションだと思うので、そういう意味ではとても面白いイベントだったのではないでしょうか。

批評の批評にとどまっていて物足りなかったという指摘が多かったようですが、私自身は自分も書く側なので学ぶところが多かったです。二次会で伺ったお話も含めて、自分のやりたいことややらなくてはいけないことがはっきりしたように感じました。

ところで、韻踏み夫さんが「雑誌を出す」旨を発表していたのに、まったく話題になっていないのがもったいないので、概要が決まりましたらまた盛り上がっていきたいなと思います。

しかし、磯部さんの「ヒップホップにとって最も美しいのは、自分の生まれたところで仲間の作った音楽をずっと聴いていくこと」という言葉は忘れられません。ジャンルの限界という意味も含め、あまりにいろいろなことを考えてしまう。また、客席にサイファーを見学もしくは参加したことがある人がほとんどいなかったのがちょっと意外でした。

(まったく個人的な話ですが、終電を逃して結局始発まで呑み屋にいて、湘南台でやっていた川崎のぼる×ビッグ錠×南波健二のトークイベントを逃したのだけは割とかなり後悔……)

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tower.jp

 

サイゾー 2016年 6月号 [雑誌]

サイゾー 2016年 6月号 [雑誌]

 
ユリイカ 2016年6月号 特集=日本語ラップ

ユリイカ 2016年6月号 特集=日本語ラップ

 
ゲンロンβ11

ゲンロンβ11

 

 

雑多であることは「たのしい」、いろんなところから人が集まるのも「たのしい」/タイダルフロー&トウキョウトガリネズミ「タイダルトガリネズミ」2017年2月11日@Rlounge-7階

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2017年2月11日の渋谷Rラウンジ7階では、タイダルトガリネズミという賑やかなパーティーが行われました。タイダルトガリネズミ、それはタイダルフロー&トウキョウトガリネズミのコラボレーション……。

 
タイダルフローはラッパーのTUMAさんの主催イベント。
 
私は「もつ酢飯」のふたりの出演をきっかけに知ったので、同イベントに対する知見は浅いのですが、TUMAさんがこのために用意したブログの丁寧な出演者紹介や、毎度可愛らしいフライヤーデザインからイベントの性格が少し感じ取れるんじゃないかと思います。

TUMAです

※これまでのイベントや出演者について書いたブログ

トウキョウトガリネズミはMC松島さんが立ち上げたレーベルで、全国各地からMC、DJ、トラックメーカー、イラストレーター、映像制作者、マンガ家など様々な立場の人々が所属する不思議な団体。
MC松島さん、吉田沙保里について歌い続けるアルバムを発表したり、みたらし団子を食べられたことをビーフにしたりというとぼけた活動に反してインタビューが攻撃的で、そのギャップが以前から気になっておりました。ちなみにMC松島さんのインタビューで、私が個人的に好きなのはこの2つ。
 
松島 何なんですかね? でもたぶん、もともと不良の人たちがやってる音楽だからだと思うんです。不良の人たちはウソついちゃダメなんですよね、きっと。なおかつ、もとは不良じゃないとラップをやっちゃいけなかったから、必然的にウソが書けなくなるっていう。(一同笑)でもようやく不良じゃない人でもラップしてよくなって、不良じゃないからウソもつけるようになってきたのかなあ。

 

 いや、みんなうまいですよ。お金払って見たいと思うアーティストはみんなうまいですね。でも、正直ヒップホップのライブはやっぱ耐えれないですね。僕個人の趣味としてもそうですし、野球場でやれるか?っていうのは正直あります。どんなに上手くても。

LARGE IRON × MC松島「真髄TV収録後トーク(Q1 2016)」文字起こし | ライムハック

#タイダルトガリネズミ のヤマを張る予習 : TUMAです

※TUMAさんによるトウキョウトガリネズミの出演者紹介
 
さらに、この日はもつ酢飯(ワッショイサンバ&無能の2MCユニット)が出るということで「こりゃ、いかなあかんでしょう」ということで、オープン時間に間に合うように渋谷へ。
 
エレベーターの前に立つと、ちょうどもつ酢飯のふたりが会場に上がるところで、前日にsoundcloudにアップされたばかりの「もつ酢飯のテーマ」についての話などをしながら7階へ。
バーカウンターでドリンクを受け取っているうちにもつ酢飯のライブがスタート。振り返ると、2人がキャパ300くらいのRラウンジ7階のステージで多くの人に囲まれて歌っていて、ちょっと壮観。
 
初披露のもつ酢飯のテーマ。サンバちゃんは「世界で一番簡単なフックです。もつ酢飯!!」を繰り返してフロアを巻き込みます。直前に「リリックが覚えきれてない」と不安を訴えていた無能ちゃんは歌詞を飛ばして一瞬うろたえていて、ちょっとハラハラ。
 
「もつ酢飯のテーマ」はDocManjuくん作ビートの中ではわりと疾走感があって、シューティングゲームのオープニングのような明るさがあります。そこに2人のファニーなリリックが乗るのが楽しい。
次の曲が始まる頃にはフロアに降りて少し前の方で観覧。フロアを見回すと、ヒップホップ好きだけでなく、2人の友人や現場仲間、MAZAIRECORDSの仲間が各々の方法でライブを楽しんでいました。まだ4回目のライブなのに、オープニングアクトとはいえ、ここまでの箱でライブ出来るのは、2人に人に愛される力、面白がられる力があるからだというのを実感。もし、私が2人と同じくらいの年齢で、ラップをやる仲間として出会っていたら、きっとコンプレックスを感じただろうな。
 
ちなみに、もつ酢飯のプロデュースをしてるMAZAIRECORDSには、他に樫さんとマノイさんという女の子がいて、2人とも研鑽を怠らない面白い子なので、何かの機会に紹介したいです。
 
イベントはオープニングアクトから、タイダルフローがブッキングしたライブへ。
 
タイダルフローブッキングのライブはCAOSさんがとてもよかった。曲もいいし、ライブのコントロール力も高い。音楽そのものに対する幅広い対応力がある感じ。あとで調べたら、バンドをやってらしたそうで、納得。
 
さて、この日はトウキョウトガリネズミのライブの前に、ビート争奪バトルがありました。始まる前はこの流れにバトルはいるのかなと思ったけれど、勝ち上がったMCはトウキョウトガリネズミからの刺客とバトルをするという設定だったため、バトル前にトウキョウトガリネズミ各MCのキャラクターがわかったので助かりました。
 
ボス的存在のはずのMC松島がやる気のないラップでコロッと負けたMC松島vsNOuTY、音楽的に水準の高かったLARGE IRON vs ID、「お前は米農家を継げ!」に「MPCのパッド叩くのと米を作るのは似てる」という謎の対話がなされたdoggydogg vs Activevが面白かった。
さて、タイダルフロー側のライブが終わり、トウキョウトガリネズミのライブセットへ。なんと、同じクルーだけど、この日初めて会う人同士が多いとか。うーん、インターネット。
 
MC松島さんの「とりあえず爆弾が爆発したら盛り上がってください!」という投げやりなアオリでスタート。
 
MC松島、WhaleBeats、diz、doggydogg、メガネ、LARGE IRON、SHIMPEI、KMB、Amateras……と出てくるMCの披露するラップは、強いて言えば比較的ナード寄りなんだけど、すぐに言語化できるような明確な共通項なし。
 
渋めの声とリリックの調和がかっこいいSHIMPEIさん。
拡声器を持って「ツイッターツイッターツイッターばっか!」と歌うdizさん。
自分がレストランを作ったらというテーマの曲を歌うLARGE IRONさん。
「お前らフェイク!ディルドディルドディルドディルド 俺らリアル肉棒肉棒肉棒肉棒!」というKBMさん。
ほとんど呪文みたいなラップをしながら、doggydoggさんが痙攣する様子を眺めるマーゴス(MC松島&doggydogg)。
はらぺこあおむしのパーカーと柔らかいビートが印象的なWhaleBeatsさん。
ハハノシキュウさんをゲストに迎え、どこか耽美的な退廃を漂わせるAmaterasくん。
インパクトのある声とアラレちゃんみたいな見た目の異物感がすごいメガネちゃん。
 
全員が何となく不穏さと人の良さを感じさせて、一聴で正体を掴ませない。なんだこりゃ。
 
色物集団と思わせつつ、等身大のラップのある日常を描いたHow Are You Feelingや、ワイワイ感が楽しいマイクリレー曲のたのしい、大人を生きることの不確かさを歌うかいぶつは正しく「イイ曲」だし、ビートの質も高い。
 
まるでカルチャー誌の色が比較的濃かった頃のガロや、初期のQuickJapan、あるいはTV Brosのコラムコーナーのような雑多さ。そうかあ、こういうクルーもあるんだなあ。というか、ラップという媒体はこういう表現が出来て、クルーという発想はそれをひとつに束ねることができるんだな。
 
イベントはMC松島さんのポップスから日本語ラップにつなぐDJで終了。シニカルな物言いの多いMC松島さんの、音楽に対する愛情を感じるDJがこの日の〆になりました。
 

MICScream ラップ × バイオリン"fukuchan" × 餃子@代官山ロッヂ2月7日

植本一子写真展「家族最後の日の写真」からの「MIC Scream ラップ × バイオリン"fukuchan" × 餃子」。

もつ酢飯が出る。女性エントランスフリー(ワンドリンク)、餃子が食べられるというので来てみたら、エントランスで久々に男に間違えられる。
 
すまんな、眉毛ちゃんと手入れするわ。
 
この日初めて知ったイベント「MIC Scream」。どうやらヒップホップ・フリースタイルラップを土台にしながら、何か面白いことに挑戦するという気概で運営されているようで、過去に行っていたセッションとして
・和太鼓&尺八
・お坊さん集団×木魚×除夜の鐘サウンド
・タップダンサー
ビートボクサー
・ファンキードラマー
・アヒージョ
・ジャークチキン✖︎WORLD MUSIC
が紹介されていた。 
 
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会場の代官山ロッヂは3階建ての小さな民家を改造したライブバー。
 
DJタイム終わって、餃子について語るオープンマイク15分がスタート。無能ちゃんとワッショイサンバちゃんが参加しているのを見学。
 
もともと自分のスタイルがしっかり出来ているサンバちゃんに加え、無能ちゃんの「餃子といえば韻踏合組合 その心はどちらもヒダが大事」的なとんちの効いたフリースタイルが面白かった。もつ酢飯はふたりともエンターテイナーなのだ。
 
オープンマイク終わって、そんなエンターテイナーコンビのライブ15分。
 
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12月のデビューライブからシンデレラMCバトルでの敗退を経て、どこかさっぱりとした表情でライブに挑んでいた2人。
 
セットリストは女の子社会の建て前をディスりまくるG.I.R.L2、G.I.R.Lから、口気持ちいいバースの連続の無意味な飯賛歌meshiagare(ワッショイサンバソロ)、いわゆる女子の輪からズレた自分の立ち位置を歌う頭文字M(無能ソロ)。
 
デビューライブではちょっとふわふわしたところがあったけど、シンデレラMCバトルを経てラップの基礎体力が上がっているのがよくわかる。
 
声が聴き取りやすいとかフロウに工夫があるとか、基本的なことなんだけど、おかげで浮き足立ったところがなくなってきた。後で聞いた話によると、カクニケンスケくんがシンデレラMCバトルの後に2人に特訓を授けていたとか。短い期間に歴史を作ってるなあ。
 
そしてそれを観ている私は動画を撮ろうとし、容量制限に引っかかってアプリを削除するという動作を繰り返していた。
ライブ終了後はビートセッション。
 
バイオリンの音色に、ニラや白菜を切る音や酒瓶を叩く音を乗せていく異種格闘技戦。曲もバラエティー豊かで、バイオリンの気まぐれで突然マリオの曲が始まったりするのも面白かった。
 
奇妙なビートにさらにフリースタイルがかぶさり、だいぶデタラメな感じに。夜も更けて人もだいぶ増えてきたので、訪れた人たちに主催者がマイクを回していくけど、けっこう断る人が多い。
 
何となくもったいないなと思いながら、自分からマイクを取る勢いがなくて見送ってしまう。しかし、結局それが引っかかって何となく、その後のお題バトルにエントリーしてしまった。
 
私はラップをするにあたって特に目標を持たないようにしている。それは何のプレッシャーもなく楽しめるようにしたいという理由で、だからマイクを取らなくちゃいけないという気概も基本ない。だけど、この日は「マイクを断る人」を見て、何となく「機会があるなら握らないと」と思ってしまったのだった。
 
バトルは変則ルールで、ジャンケンで勝つと普通の1on1、アズワン形式の2on2タッグ、地元レペゼン、好きなもの語り、口説き、お客さんにお題を選んでもらうという形式が選択できる。とりあえず「住みたくなるようなラップを競う」という地元レペゼンを選択。
 
私の後攻でスタート。相手のHERBEくんが地元大阪愛を語りつつ自分をあげてくのに対し、地元を「犬と老人しか歩いてない きれいなのは景色だけ」「お前横浜市の税金日本一高いんだぞ 払えんのかよ」という、聞いた人が住みたくなくなるようなバースを吐いてインパクトで勝った。
 
その後は初対面のブロガー鼎さんを無理やり誘って2on2でもつ酢飯とバトルしてコロッと敗退。鼎さん、恥かかせてすみません。
 
この日はしかし、そのゲイでヒップホップ好きの鼎さんともつ酢飯の2人がすごかった。
 
もつ酢飯は2on2で2小節ずつでマイクを回す驚異のコンビネーションを見せる(普通は4小節)。まるで持ち曲G.I.R.Lの続きがその場で出来ていくような息の合ったdis。
 
特に女子同士でAS ONE対決になった時の、「別に私ラッパーとかじゃないし」と言って逃げる女の子に対する「キャットファイトとか言われながら戦ってきたんだぞ」とか、「こっちは社会人だぞ」的なバースに対する「こっちは心の傷を乗り越えてきたんだよ」という返しには生き様が出ていて、ちょっと忘れられない。
 
しかし、そんなもつ酢飯をぶっちぎってこの日一のインパクトを残したのは鼎さん。
 
時に身体をくねらせるオカマっぽいリアクションを交えつつ、「あたしの母さんオカマを産んだ!」「生まれる〜〜。生まれる〜〜たまごっちが!」とか、意味はないけど、インパクトのあるリアクションを取り続け、いつのまにか優勝をかっさらっていった。ウィニングラップもリスペクトとユーモアを交えた熱い内容で、デタラメな夜の最高の〆だったと思う。
 
細かいところに気を配っていた主催のNakid a.k.a. Kiyo(GWC-MCZ)さん、お疲れさまでした。ありがとうございました。