ホンのつまみぐい

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楽しかった、おいしかった、また行きたいでいーじゃない「いわきうふふ便モニターツアー」

「いわきうふふ便Presents」モニターツアーと題された日帰りのバスツアーに言ってきました。

 復興支援関連のお仕事をしている知人のYさんのSNSでの紹介で知ったこのツアー。「Yさんが紹介しているのならいいものだろう」という気軽な気持ちで、内容もよく見ず、3900円という値段と日付だけを確認して参加の電話をかけました。

 

当日の集合場所は新橋のSL前広場。小さいお子さんふたりを連れての家族で参加される方や、日帰り旅行好きそうな女性の集まりなどいろいろな方が集まっていました。バスで隣になった男性は、震災後の報道がきっかけで、ハワイアンズにはまったという方で、そういった土地に思い入れや興味があって参加した人もおそらく多かったのだと思います。

 

新橋からいわきまでの3時間ほどを走る小さめのバスは、頭が丸くてチョロQのようでした。

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バスの乗車中、ガイドのNさんとIさんによる自己紹介。お二人ともいわき育ちで、今はいわきで観光の仕事をしているそう。生まれも育ちもいわきなAさんと、1度上京して、震災後にいわきに戻ってきたNさん。Nさんは「こっちで観光の仕事をする前まで、いわきって何もない、歴史もあるんだかないんだかわからない町だと思ってたんですよ。でも、観光の仕事についてそんなことないと知りました」と話していました。

 

出発時に渡されたビニール袋の中には大量のPR冊子が入っていましたが、中でひときわガーリーでゆるい内容の冊子があり、これが「いわきうふふ便」でした。「いわきの今、いわきの普通を知らせたい」というコンセプト。

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「うふふ便」はNHK福島放送局といわき市が協力して作った番組「被災地極上旅」の中で生まれた冊子で、開くと「看板犬のユキちゃん」「カフェ」「レストラン」「農家」のことが並列に記載されています。

kankou-iwaki.or.jp

 

いわき市内までのバスの中で、案内人の二人がいわきの観光地についていろいろお話ししてくれました。ハワイアンズの歴史、博物館のこと、農園のこと。話を聞いていると、いつのまにか外に見える景色の中に山肌が増えてきました。

 

さらに山を越えると、瓦屋根の家がいくつも通り過ぎていきます。新興住宅地で生活している身には珍しい光景でした。

 

やがて、最初の目的地である農場「ファーム白石」に到着。タイヤギリギリの狭いあぜ道を、器用に曲がっていく運転手さんの技術に車内が関心していると、向こうから大股で闊歩する赤ジャージの男性が歩いてきました。

 

「あ、あれ白石さんですよ!白石さんは赤い服を着てるんですよ……」というAさん。車内の目線が集中します。

 

ところが、次の瞬間「あれ?違うかな?違った!」とAさん。

 

本物の白石さんはさらに右に曲がったところに立っていました。真っ赤なつなぎに大柄な体躯に彫りの深い顔つきで格闘家のよう。

 

バスからバラバラ降りて、皆が白石さんの前に立ちます。Aさんに「今日って収穫前に何か話すんでしたっけ?」と聞く白石さん。

 

「そうですね。白石さんがなんで赤いのかとか」と軽く答えるAさんに「あ、そんな感じなんだ」と笑う白石さん。

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参加者が揃い、白石さんのあいさつが始まりました。

 

「ここから38km地点にウワサの福島原発くんがあります」という表現から始まる土地の説明。白石さんの畑は、右手に見える高い山のおかげで、線量が上がらずに済んだそうです。

 

「正直、これで楽に農業を止められるなど思ったりもしたんですよ。でも、不思議なものでなくなりそうになると守りたくなるんですね」と話す白石さん。

 

ちなみに赤い服を着ている理由は「目立つから!」。

 

「暗い雰囲気だったでしょ。いわきを、農業を明るくしたいと思って。今ならいわきの太陽というポジションが取れるぞ!と思って。大事な会議もこの格好です」と笑っていました。

 

あいさつが終わると収穫の時間。キャベツ・人参・キャベツの脇芽を獲ります。

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キャベツは包丁で茎にざっくりと刃を当て、地面から外すようにして収穫します。白石さんは30分で100個収穫するらしい。

 

初めて聞く「脇芽」とは、キャベツを獲った茎の周りに生えるミョウガくらいの大きさの葉でした。市場には出荷していないので、畑に来た人しか知らない楽しみなのだとか。人参は春を迎える直前の、白い根が出始めたものを太いものを5本。

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ファーム白石の土地は、かつて大雨のたびに夏井川が反乱し、湖のようになるやっかいな土地だったとか。「作物が腐らないか」と思いましたが、野菜は24時間以内なら浸水しても生きているらしい。そして、その水が土地を肥沃なものにしたのだそうです。

 

参加者のひとりが「土を食べてみたい」という言葉が。「被災地極上旅」にそういう場面があったらしい。真似して口に含もうとすると、白石さんから「口がカラカラになるでしょう。これが土の保水力なんですよ。これで水を蓄えるんです」という話。なるほど!

 

テレビでは元AKB48秋元才加さんが土を食べていたそうで、ファンから不安を訴える声も届いたらしい。しかし、白石さんが調査結果などをきちんと話したら、「よし、そういうことなら応援しよう」となったそうです。(こんなところでもアイドルオタクの話を聞くとは……)

 

白石さんの畑の土が食べられるのは、放射能検査はもちろん、化学肥料を使わないから。そのへんの畑の土をなめてはいけないそうです。

 

taberu.me

収穫が終わり、いわきの中華料理屋・華正楼で白石さんの野菜を使った中華をいただくことに。

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華正楼に関しては、まず写真を見てもらうのがいいでしょう。

 

いがりぶっこ入りの餃子。いわきの特産トマトとチーズの入ったエビチリ。シソとトマトの入ったスープ。塩麹つけらしき鳥もも肉。白石さんのキャベツを使ったホイコーロー。刻んだいぶりがっこ入りドレッシングで和えたブロッコリー。鮫川村のジャージー牛で作ったシャーベット。

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ホイコーローは肉をギリギリまで炒めてうまみを出し切る本格派で、柔らかいキャベツの甘みに甜麺醤がぴったり。チーズ入りのエビチリはまろやかで、エビがプリプリ。正しい中華なのにワクワクする。

 

大皿の上にこんもり盛られた料理は食べきれるか心配になるほどのボリューム。遺してはいかんと思ってせっせと箸を動かします。

 

食事が落ち着いた頃に、料理長の吉野さんが登場。

 

「いや……ぼく実は昔は野菜なんて全然こだわってなくて、ネットで中国野菜とか買ってたんですよね。大変失礼であってはならいなことなんですけど、農家って暗いイメージがあって。業者の人としか思ってなかったんですよ」

 

吉野さん、率直。白石さんと出会ってから、農業のイメージが変わり、地元の野菜を使うようになったとか。

 

「料理人と生産者でタッグを組んで盛り上げていきたい」という話をしてくれました。

kobu.blog.jp

白石さん・吉野さんと別れてバスに乗り込みます。バスの中では、華正楼で出しているというドレッシングと、紫芋のミルクペーストジャムをいただきました。 

www.marine.fks.ed.jp

次の目的地はアクアマリンふくしま。水族館(アクアリウム)と海洋博物館・科学館(マリンミュージアム)の機能を併せ持った施設だからアクアマリンという名前がついたというこの施設。

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ここが圧巻かつ最高でした。

 

開館16年目という新しい建物と言うこともあって、とにかく生きものの見せ方が洗練されているし、イベントもバラエティーに富んでいる。

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 入口入ってすぐにある錦鯉と金魚の水槽は種類によって少しずつ形が違うオリジナルなもので、それぞれが観賞しやすい形に設計されています。透明な円柱の水槽は金魚が回遊するさまがとても美しいし、錦鯉の背中がはっきり見える水槽もかっこいい。熱帯アジアの水辺を再現するというコーナーは、水棲の生きものだけでなく、植物まで生育している。潮目の海というコーナーでは水槽全体が三角形のゲートになっていて、来館者が上を見上げるとガラス越しに魚が回遊するのが見られる。

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館内には潮目の海を見ながら寿司が食べられるカウンターがあるし、ホタテ釣りイベントや鰹節削りイベントなど、ちょいシャレの効いたイベントがあるのがすごくいい。

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生態を見せることで、来館者に感動を与えるにはどうすればいいか。興味・関心を生み出すにはどうすればいいかを考えた構造やイベントの数々に感動してしまう。

 

そして、今回のアクアマリンふくしま来館の目的は、観光だけではありません。調べラボという「調べラボ!~いわきの魚を食べてみよう~」試食会兼測定体験付き。

 

いわきで獲れた魚の放射線量を調べて、その後に魚介類を食べるというワークショップ。 この日出たのはヒラツメガニのお味噌汁とメヒカリの干物でした。

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アクアマリンの獣医の富原さんという方が自身が釣った魚や調べラボで用意した魚を前に、放射線量の測り方、地震後の海の変化、放射線量が高くなりがちな魚、そうでない魚の違いなどを教えてくれました。

 

この富原さんがけっこうパンクで、そのまんま書いたらユーモアのない人が炎上させそうなことを笑いながら話していて最高に面白かったです。(というか、後日調べたら4年前に結構大きく燃えてました。興味のある方は適当に検索してください)

 

 館内ガイドも富原さんが担当してくれたのですが、

 

スイミーのモデルになったという群れになって泳ぐキンメモドキの前で、「スイミーのモデルになった魚ですよ。でも、別に群れになって強い魚を倒すわけでなく、たくさんいると弱いやつから順に食べられていくから、一緒になってるだけなんですけどね。あ、リーダーはいません。どれか1匹が向いた方にみんな動いていくだけ」。

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「魚は途中で性別が変わるものも多いんですよね。だから、同性愛とか別に生きものとして普通のことじゃないかって思いますけど」。

 アザラシの賢さってどのくらいなんですか?という質問に「あ、バカですよ。手かまれますし」。

 

などなど名言連発!

もちろん、施設内のこと、生物のことも事細かに教えてくれたし、その口ぶりから仕事がとても好きなのだと言うことが伝わりました。

 

生きもの面白いけど、生きものに関わってる人も最高なんだよ! 富原さんに会いにまた調べラボ行きたいし、今度はもっとじっくりアクアマリンふくしまを見たい!

そんな気持ちになった時に、ひとつ、思い出した言葉がありました。

 

 

高政は宮城県女川町のかまぼこ屋さんで、私たちが今回お邪魔したのは福島県いわき市だったけれど、これはきっとどこだって変わらない気持ちのはず。

楽しかった。おいしかった。また行きたい。そんな気持ちを抱えて、その話をしてそういうのがいいね。

いわき市は品川駅から特急で2時間半。次はハワイアンズに行きたいね。

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 アクアマリンふくしまで買ったトドのぬいぐるみと、いただいた紫芋のミルクジャムを塗ったパン。

 

umilabo.hatenablog.com

結局ねえ、うまそうな匂いに人間は勝てないんです。これがもうファイナルアンサーです。今回で10回目となる調べラボですが、結局、匂いがいい、あるいは見た目にインパクトのある試食が出るときが、なんだかんだで一番賑わいます。この間の木戸川の鮭を使った紅葉汁のときもすごかった。

思うのですが、ほとんどの皆さん「放射性物質」に興味があるわけではなく、「うまいもの」にしか興味がない。しかしそれが本質だと思うんですね。うまいものに釣られてこの部屋にやってきたら、何やら獣医の方が魚捌いてて、放射性物質について説明している。ああ、もうこんな風に下がってるのね、大丈夫じゃん。っつーかたこ飯うまい!

それでいいんだと思うわけです。というかそれがすべてなんです。普通に「福島の魚を食っている」という状況の積み重ね。遠回りなようですが、一番いいのかなと思った瞬間でした。やっぱり別に放射性物質のことなんてどうだっていいんですよ。流通してる魚は安全だし、第一うまいんだから。普通にうまさを堪能すればよし!

 

ウテギャ→コウテカ2→コウテカ2(new)→ピオピ

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しゅがしゅららちゃん2週間くらい全然つぶやいてないし、運営から復帰のお知らせもないから「ひょっとしたら辞めちゃうの?」と思って急いで予約したら、いきなり日付が当日に変わるタイミングで本人と運営からの復帰告知!

おいっ!私ビビりだからびっくりさせないで……!
 
それはおいて、リリイベやフェス以外で午前帯からのライブは初。MARSも初なのでちょっとドキドキ。
 
入り6割くらいの状態でフロアに降りる。しゅりちゃんいたら前に行ったんだろうな……と思いつつ例によって後ろの方へ。ステージ高いので助かる。
 
客入れのBGMはでんぱ組.incとかNegiccoとかアイドルソング。それが終わると聴いたことない可愛らしくて神秘的な雰囲気のインストがかかっていた。アニメ銀河鉄道の夜に出てきそう曲を、もっとポップで可愛くしたような感じ。
 
インストが終わると校庭カメラギャルの3人が登場。
 
衣装は女子高制服。曲はサンクラで事前に公開してたボビーとシャンパン。
 
「ギャルギャルしくいきます」と言って登場したらみたたらったちゃん。ラップうまくなってて、スパイシーな雰囲気によくあってた。制服がお嬢様っぽいからギャップが笑える。
 
ぱたこあんどぱたこちゃん。お披露目一曲目。まだちょっと緊張していたかな?ウテギャではリーダーらしく、告知も担当。
 
ビアファローちゃん。出番少ないし、ちょっと噛んだりしてて未知数だけど、いい声と朗らかな雰囲気。
 
歌詞は天使の羽とか漆黒の闇夜とか中二病ワードが多くて、なんか人を喰った感じ。
 
この日はウテギャ→コウテカ2→ウテギャ→コウテカ2新体制の順だったけど、2回目のウテギャでよくよく曲を聴くと、メンバーの声を活かしてるのがよくわかって面白かった。特に、2回目は緊張がほぐれたぱたちゃんの低音でのラップがよかった。彼女のおっとりした雰囲気と、低音のdis入ったラップのギャップは、ちょいBiSの頃の寺嶋由芙ちゃんを思い出させる。テラシマユフのことは動画でしか知らないけど……。
 

 

 

www.youtube.com

コウテカ2は昨年末のワンマンや対バンと違ってリラックスした雰囲気でのライブ。
 
間奏中にちょこちょこMC入って余裕で平和。
 
もるちゃんの「ららちゃん復帰してよかった」とか「ぱたこ、ギャルになってから生き生きとしてるよね」とか。
 
ぱたちゃんにはののるるれめるちゃんが途中で抱きついてチューをしてた。
 
うぉーうぉーとぅーみーちゃんのパフォーマンスが、歌も身体の使い方もどんどん振り切れた開放的なものになってるのかすごかった。
 
あとは、ステージが前回より近いのでもるももるちゃんがけっこう細かい演技をしているのがよくわかった。髪をかきあげるところが色っぽくてグー!リーダー!なんの曲か忘れたけど!Lough Ma Fleurの「あれから何年が経ったかな」もよかったな。
 
ゆるい部分もありつつ程よい緊張感で、久々に聴いたLost in Sequenceも、TOKYO TerrorからLast Glasgowのエゲツなめの沸き曲繋ぎも燃えた。
 
「今日でこの6人は最後ですよ。目に焼き付けてくださいね」というもるちゃんの言葉と共にコウテカ2終了。
 
たらちゃんの「コウテカ2のらみたはシメてきた」というMCから始まったウテギャを一曲挟んでコウテカ2新体制。
 
いきなり新メンバーのせろりぱすちゃんすちゃんが出てきて、しかもスパイラルパーマの黒人風の女の子でビジュアルインパクトがハンパなかった。
 
コウテカってラップだけど音も歌詞も文系オタクっぽさ強くて、黒っぽさあんま感じなかったからびっくり。曲のカラーも変わっていくのかな?
 
ラップはしっかり聴けなかったけど、Swallow Maze Paraguayの落ちサビ聴いた感じだと、声質的にはしゅりちゃんやうぉーみーちゃんをもう少し可愛くしたような印象。まだまだ他メンバーに押されてるけど、タフそうな子。
 
衣装も新しくなってたけど、白シャツ短パンに温泉旅館の浴衣みたいのを羽織っててちょいやっつけ感……。衣装もうちょっと凝ってあげてほしいな。
 
ステージ終わって、\ギャル/\ギャル/というアンコール。
 
もるちゃんが「ギャルギャルうるせー」と言ってから、ステージに全員が集まってのSwallow Maze Paraguay。
 
最後に「たぺすとっくふぁみりーでしたー」というかけ声が入り、総勢7名での新春狸御殿的わちゃわちゃ平和なラストだった。

 

 

 
外に出ると、汚い新宿なりのきれいな空。ブレイズのWUGの物販例に並ぶアニオタを横目に喫茶店で休憩して、新宿タワレコのPOPへ。
 
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ピオピは全然行ってないし、評論家になりたい現場じゃないので一言だけいうと、who am Iの落ちサビのカミヤサキちゃんがとてもよかったので、すごいうれしかったです(作文)。サキちゃんが楽しそうだとうれしい。
 
あと、ヤママチミキちゃんが可愛さのボルテージ上がっていた。姫カットオン眉なんて、アイドルやらんとなかなかしない髪型だと思うので、なんか扉を開けた感じがある。
 
who am Iで、サキちゃんが片手でシグサワアオちゃんに目隠しをする振りがあるのだけど、そこのアオちゃん大変かわいかった。パッと手をどけた瞬間に、パッチリと目を開けるんだよね。感情が開かれてる感じがいいなあ。
 
もちろん、ユメノユアちゃんもイヌカイマアヤちゃんもかわいかったし、盛り上がっていたのではないでしょうか!
 
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しかし、私くらい意識の低いすぐ喫茶店で座っちゃう人でも現場回せる新宿はすごいな。都会。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

QUEEN OF POP

QUEEN OF POP

 

 

 

IDOL AND READ 006

IDOL AND READ 006

 

カミヤサキちゃんのインタビューが載っている第6号。ゆるめるモ!しふぉんちゃんのインタビューもよかった。 

 

追記:校庭カメラガールのメンバー編成がわからん!という声がTwitterに多かったので整理しました。

 

校庭カメラガールツヴァイ旧体制(コウテカ2)

2016年2月21日~3月20日

もるも もる molmo mol
しゅがしゅ らら sugarsugar lala
ののるる れめる nonorule remmell
うぉーうぉー とぅーみー warwar toome

らみた たらった ramy t talata

ぱたこあんど ぱたこ pataco & pataco

校庭カメラギャル(ウテギャ)

2016年3月20日~

らみた たらった ramy t talata
ぱたこあんど ぱたこ pataco & pataco

ビアファロー beer fallow

校庭カメラガール新体制(コウテカ2)

2016年3月20日~

もるも もる molmo mol
しゅがしゅ らら sugarsugar lala
ののるる れめる nonorule remmell
うぉーうぉー とぅーみー warwar toome
せろりぱす ちゃんす

校庭カメラガールツヴァイ×ゆるめもモ!<シー・イット・ナウ vol.1>@新宿RUIDO K4

 新メンバーを迎えて6回目の校庭カメラガールツヴァイ(以後コウテカ2)と、あのちゃん病欠のゆるめるモ!(以後モ!)のツーマンライブ。

 
 その前日、コウテカ2がいきなり、ぱたこあんどぱたことらみたたらったが脱退して、ビーフを加えて校庭カメラギャルに専念するというニュースを配信。
 この手の茶番劇はこじらせたおっさん(おばさん)が若い子振り回してるように見えてしまって苦手なので、前日から気持ちが曇る。
 
 そして、ライブ開始の数時間前にはこんなインタビューが出る。
 
Jas:ライブは、理想は静かにでも暴れるでも、好きに楽しめるのがいいんですけどね。セトリも決めないで、DJセットのあるライブの時は、直前にもるもに指示します。インストアとか、音出しがPAの時は事前にメンバーにセトリを伝えないで、陰で僕が曲出しをしています。ノンストップでMCもなく1時間くらいライブをしますし、リリースイベントだと、曲の途中で次の曲をブッ込んだり、音を抜いたりもするので、メンバーのあたふた具合が面白いです(笑)。
(中略)
Jas:ライブにたくさん出るよりもなんか面白いことないかなって探しています。今すごい彷徨ってますね。なんかふと気付いたら、リリイベやって、ライブやって、お客さんを増やして、ワンマンやって…っていうレールに乗っかってるなって思って。それは1回ちょっとストップしようと。捻くれもの集団なのになんか普通だなって。

 

 
 うーん、なんか、ちょこちょここじらせ男子っぽいな……。
 
 それはそれとして、amiinaぶりのコウテカ2へ足を伸ばす。会場はまたまた新宿RUIDOだった。
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 RUIDOは小さい箱だけれど、30cmほどの段差を4箇所ほど作っているので、ポジションによっては後方でもステージがそれなりに見える。
 
 この日の先攻はゆるめるモ!
 
 儚げなビジュアルとむき出しのパフォーマンスが印象深いあのちゃんはインフルエンザで欠席。5人編成のライブだった。
 
 曲はよく聴いてるし、メンバーもなんとなく把握しているけどライブを観るのは2015年のJAZZめるモ!階段ぶり。あの日は、あのちゃんとちーぼうがお休みだった。
 
 1時間、計13曲をMCは自己紹介と告知だけでやりきるロングセット。
 
 ライブハウスでちゃんと聴くのは初めてだったけれど、モ!の曲はすごい。音に人を攻撃するようなところがない。
 
 プロデューサーの田家さんが公開している楽曲の元ネタは、あまりアイドルっぽくない「オルタナティブ」でくくると伝わりやすそうな音が多いのに、どの曲もどこかユーモラスで馴染みやすい。楽曲提供者も多彩なのに、ちゃんと世界観が統一されてるのもすばらしい。
 
 
 世界観といえば、歌詞。モ!の歌詞はほとんど小林愛さんが作っているけど、どれも抽象的で内省的なのに、退屈しないし閉じてない。
 君がそこで
「誰もいない」と言ったら
私たちは
「誰かいない」と
つぶやく
-スキヤキ-
 
地獄みたい きっと
明日は もっと両手振って走り出せない
だから眠る 今日は逃げる しかたないでしょ
-逃げろ!!-
 ダウナーな内容なのに、どこか抜けたところがあって寂しい気持ちにさせない。
 
 そして、改めて踊っているところを見ると、メンバーみんな見事なまでにバラバラだ。
 
 身体はちっちゃくて、日本人形みたいな可愛さなのに声ゴツいちーぼう。いつもフロアをしっかり見ているのがよくわかるしふぉん。この日は、病み上がりからのライブが楽しかったのか、オタクの上に立ってニコニコ笑っていた。よく伸びる声が曲の芯になっているもねちゃん。マイペースで子供みたいな表情のけちょん。
  
 印象に残ったのはようなぴちゃん。どんどん髪色が変化していく彼女の今の髪色は薄いコーラルピンク。手足の長さとのバランスで落ちサビでスポットが当たると髪がまぶしく光って神々しい。セルフプロデュース力の高さがわかる。
 
 ライブ中盤の壮大なメロディーの「もっとも美しいもの」から「人間は少し不真面目」。ラストの「idアイドル」から「逃げろ!!」の流れが気持ちよかった。
 
 ラブの「微妙な調節苦手よ」で、「オレもー!」が入るのに笑ってしまった。
 
idアイドル、ほかの「モ!」の曲よりロック寄りで音が激しいのだけど、人魚姫を連想させる歌詞とのマッチングが絶妙。後藤まりこさんすばらしい。アイドルの持つ儚さと生命力がこの一曲にぎゅっと詰まっている。同じく後藤まりこさんが作詞作曲を担当したBELLRING少女ハートのチャッピーも生で見たくなる。
 
 モ!の曲の合間に少しだけコウテカ2のメンバーがステージを見に来ていて、うぉーうぉーとぅーみーちゃんが身体を揺らしていた。
 
 
 後攻、校庭カメラガールツヴァイ。
 
 チグハグ感の抜けきらなかった前回に比べるとちゃんとグループになってる感じであまりいろいろ考えず楽しめた。それはとてもいいことだ。
 
 モ!が安定感のあるライブだったので、どう見られるかちょっと心配だったので、ホッとしたし、うれしかった。
 
 ただ、最初の音がやたら小さかったのと、マイクの音も小さかったのはもったいなかった……。だんだん調整されてはいったけど。
 
 推しがいなくなったのでステージ全体を見ていたけどちょこちょこマイナーチェンジあり。Post office Crusherの間奏部分に自己紹介が入ったり、Happy Majorの間奏でメンバーが順番にびっくり顏になったり。Swallow Maze Paraguayの最初で、これまで手を組んで振り上げていた振りが太極拳になっていたのはそれぞれ個性が出ていて面白い。
 
 インタビューでの“あとはノイズミュージックをずっとかけて、「一切ゼロになって、体全体で表現をしてみてくれ」と言ったり。結構ハードかもしれない。BRAHMANブラフマン)の動画とか見せて「パクれ!」と指示したり”という話を読んだ後なので、身体の使い方を見てしまう。うぉーうぉーとぅーみーちゃんが何かの曲で頭を激しく降っていたのと、ののるるれめるちゃんが小さい身体でバシバシ動いているのが印象に残った。
 
 Star flat Wonder Lastに、「気をつけ、前習え」をする振りがあって、フロアのオタクが真似してるのがかわいかった。
 
 この日はワンマンぶりにLough Ma Fleurが聴けた。
 
 Where the Wild Thingの「ここはかいじゅうたちのいるところ」とか、Lough Ma Fleurの「なんかさ、マフラーぐるぐる巻きで笑うよ」とか、どこか甘ったるい可愛らしさとラップの組み合わせの妙が好きなんだ。
 
 あとはサンクラにインスト音源の上がっていた新曲Humpty Taxiが披露されたのが一番のトピックだろう。たら、ぱたが下がってしまい、本気で分けてしまうのが伝わって複雑だったけど、ららちゃんの長いラップが馴染んだら面白い曲になりそう。
 ラストはTOKYO terror二連発。フロアがぐちゃぐちゃになっててアツかった!!
 校庭カメラギャルと校庭カメラガールツヴァイになってどうなるかよくわからないけど、これからもよいライブを続けてほしい。あとは、売れることが最優先でないのはわかったけれど、Her L Bo Sheカラオケで歌いたいのでそのくらいには売れていただけるとうれしいっす!
 次はBELLRING少女ハートvs校庭カメラガールツヴァイvsMERZBOWかなあ。
 
 

 

 

Unforgettable Final Odyssey

Unforgettable Final Odyssey

 

 

 

YOU ARE THE WORLD

YOU ARE THE WORLD

 

 

 

「鈴狐騒動変化城(すずぎつねそうどうへんげのしろ)」田中哲弥

 児童書読書会用に読んだやつ。これすごい。面白いしかない。

 
 田中哲弥といえば電撃文庫の産んだ超絶技巧作家。とにかくめっちゃ文章がうまくて、笑える話を書く人だけど、読者にサービスしようという奉仕の心はない。そして、時々たいそう邪悪なものを書く。
 
 鬼才なんでしょう。でも、性悪。
 
 そういう人だと思ってたので、この本には驚きました。
 
 もともと関西の作家連が身内でやってる創作落語の集い用に作られた噺を、児童書出版の老舗・福音館書店のオファーで児童向け読み物に作り変えたもの。
 
 悪いお殿様に小町娘を奪われそうになった庶民が、助けたキツネの手を借りて娘を逃がそうとする話なんですが、太い線の生き生きした絵とのマッチングが最高でした。ラストも痛快娯楽時代劇エンド。
 
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 挿絵が添え物ではなく、互いに引き立てあうような本というのは児童書が得意とするところですが、これはなかでも楽しく出来てるんじゃないかしら。
 
 中学年くらいの読むものなくて困ってる子に勧めたいな。スラップスティックな要素がうまく落語の世界に溶け込んでいて、安心して読める。
 
 これ、キツネのおツネちゃんの鳴き声がかわいいの。「けひょー」って鳴くんですよ。「けひょー」。
 
 そんな鳴き声の生き物聞いたことないよ! キツネの鳴き声って直に聞いたことないけと、実際「けひょー」なんですかね。
 
 読書会では、お子さんに読み聞かせた方の「意外に読み聞かせづらい」という話と、「おツネちゃんはただ面白いからやってるだけで、正義感や義侠心はない。破壊者役の殿様と通じるところがある」という指摘が印象的だったかな。
 
  あとは、北野勇作の指摘。
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 装画の伊野孝行さんのブログも面白かったです。

「鈴狐騒動変化城」① | 伊野孝行のブログ | 伊野孝行のイラスト芸術

「鈴狐騒動変化城」② | 伊野孝行のブログ | 伊野孝行のイラスト芸術

鈴狐騒動変化城 (福音館創作童話シリーズ)

鈴狐騒動変化城 (福音館創作童話シリーズ)

 
やみなべの陰謀 (ハヤカワ文庫JA)

やみなべの陰謀 (ハヤカワ文庫JA)

 
猿駅/初恋 (想像力の文学)

猿駅/初恋 (想像力の文学)

 

 

ウルトラ怪獣前夜の造形「YÔKAÏNOSHIMA」 シャルル・フレジェ展 銀座メゾンエルメス フォーラム

 レンズで妖怪を捕えるフランス人が日本に来た。

 フランス人写真家のシャルル・フレジェだ。彼は日本列島58箇所で多くの怪物や怪人を撮影し、それらのポートレートを銀座のエルメスギャラリーで展示している。
 
 妖怪の正体は各地の祭事や神事の仮装を撮影したものだ。本来豊作や疫病よけ、子孫繁栄を祈るものとして生まれた奇怪な仮装は、フレジェのレンズを通して四角の中に切り取られた。
 
  赤と青の仮面がつややかななまはげは、雪の中に佇むとまるでカプセルトイのようだ。美しい着物に編笠をかぶり、サングラスと頭巾で顔を隠した女性が砂浜に立つと、途端に女性たちは仮面ライダーの怪人のように写る。
 
 着物と仮面を身につけた人間が、背中を少し丸めるだけで、人らしくない風情が生まれる。異形から神が見いだされる絶妙な角度でフレジェはYÔKAÏをとらえている。
 
 一方で彼の写真はどれも明るい。雪の上や砂浜で撮られた写真はもちろんのこと、山中や家屋の中で撮られた写真も基本的に被写体に影を作らせない。こうした光の扱いにより、YÔKAÏたちは、まるで特撮番組の宇宙怪獣図鑑に掲載された着ぐるみのようにも見える。
 
 神事・祭事から神が生まれる瞬間をとらえつつ、それらを昆虫標本をピンで留めるように淡々と並べていく。それは、神への畏敬なのか。それとも、フリークスへの無邪気な憧れなのか。
 
 こうした独特の距離感が、私たちの先入観を一掃させ、これらの仮装の個性を際立たせている。
 
 日本はこんなにあざやかな赤を使いこなす国だったのか。あるいは、こんなに動物をスクエアな造形に落とし込む国だったか。展示の中にはヨーロッパの異形たちの写真もあるが、それとの比較をするのも面白いし、発見がある。
 
 今回の展覧会のために書かれた多くの文章では、フレジェの写真の「民俗学的な視線」について言及しているものが多かった。
 
 私が連想したものはウルトラマンと怪獣たちである。ウルトラシリーズキャラクターデザイナーとして活躍した造形家の成田亨が、怪獣デザインの際に神話を研究していたことや、後年鬼のモニュメントを作成していたことを思い起こさせた。また、日本のゴジラの、破壊者であるにも関わらず、どこか稚気を帯びた造形もこれらの写真から受け取るユーモラスさと根底で繋がっているように思えた。
 
 そうか、ウルトラ怪獣たちの源流はこんなところにあったのか。あとは、横浜の帽子おじさん・宮間英次郎か。そして、こうしたさまざまな仮装から連想されるもの、すべてを「YÔKAÏ」という言葉で表現させてしまう水木しげるの影響力の強さよ。
 
 民族の根底に流れる文化はさまざまな形で新しい文化を形成する。怪獣前夜の造形は、美しい写真によってまた新たにこちらに姿を現した。
 
以下、メモに取った撮影対象の名称
大太鼓の花からい
オネオンデ
ソーロンアンガマ
ちとちんとん
つぶろさし
ささらすり
銭太鼓
伊作太鼓踊り
ガウンガウン祭り
兵六踊り
安楽の正月踊り
山田楽
チャンココ
ささら獅子舞
盆綱曳き
タカメン
八朔踊り
ボゼ
バーントゥ
与論十五夜踊り
鷺舞
増穂区五ツ鹿踊り
遊子谷七鹿踊り
めん踊り
大平獅子舞踊り
根反鹿踊り
切込の裸カセドリ
タラジガネ
ビッチャル、クソタレ
小川寺の獅子舞
加勢鳥
スネカ
アマメハギ
水かぶり
愛子の田植踊り、早乙女
諸鈍シバヤ 
 
ヨーロッパの異形の写真はすでに書籍化されています。
7月再版予定。
また、「YÔKAÏNOSHIMA」も7月に新たに出版されるそうです。
WILDER MANN (ワイルドマン)

WILDER MANN (ワイルドマン)

 

 

YOKAINOSHIMA

YOKAINOSHIMA

 

 

 

■ 開館日: 2016 年2 月19 日(金)~2016 年5 月15 日(日)
■ 開館時間:
月~土 11:00~20:00(最終入場は19:30まで)
日   11:00~19:00(最終入場は18:30まで)
■ 休館日:4月8日(金)休館。その他エルメス銀座店の営業日に準ずる
■ 入場料:無料
 

「ヤクザ辞めて喰っていけるの?」暴力団の背中にうつる社会という地獄「ヤクザと憲法」

 観終わった後に、涙目の友人が「みんなひとりぼっちだった……。すごい孤独だった……」とうめいていた。

 
 私は涙は流さなかったけど、泣いた友人の気持ちはわかった。これは心がぐちゃぐちゃに散らかる。
 
 「ヤクザの日常を撮影する」という挑戦的な映画「ヤクザと憲法」。
 
 そこに映し出された日常は、あまりに「お隣の地獄」だった。
 
 
 
 冒頭に「取材謝礼金を払わない、収録テープを事前に見せない、映像にモザイクは原則かけない」という取材時の取り決めが流され、カメラは古いビルの2階の組事務所を映し出す。取材対象は大阪の東組清勇会。小さな事務所は地域の集会所のようで、分厚い防弾扉や虎や龍を彫り込んだ巨大な彫刻、任侠道と彫り込まれた木の置物といった暴力団的なアイテムがむしろ大仰なもののように見えた。
 
 暴対法の成立以降、ヤクザの生活も厳しいらしく、事務所は停滞した雰囲気に満ちている。構成員も高齢化していて、若者は部屋住みの21歳の青年くらい。タバコを吸いながら新聞を読むおっさんたちの姿は、どこか文化部の部室のようなゆるさを感じさせる。
 
 カメラを向ける東海テレビの取材班の人々は、ヤクザに遠慮がない。
 
 キャンプ用のテントを入れた袋を指差し、「拳銃とかじゃないんですか」という。ヤクザは「えっ、そんなもの。あったら法律違反じゃないですか。ハハ」と答える。ヤクザのおっさんの風情がそのへんの中小企業のおっさんなので、むしろ東海テレビの方がヤクザにジャブを当てにいっているように見える。
 
 
 事務所には松山くんという部屋住みの青年がいる。21歳。朴訥な見た目のトロい男の子だ。
 
 とてもヤクザには見えない松山くんを、視聴者に最初に印象づけるのは夕刊の話だ。いつも小洒落た帽子を被っているおじいさんヤクザが、彼に「夕刊はどうした」と聞く。「エー、朝刊は、取り込んで保管しておけと言われたので!」「いや、夕刊どうした」「朝刊は、しまっておきました!ゆ、夕刊は!」と、会話の要領を得ない。彼は「朝刊はとっておけと言われたのでとっておいたが、夕刊については何も言われていないので捨ててしまった」ということが言いたいらしい。それなら「夕刊は捨ててしまいました。ごめんなさい」と最初に言えばいいのだけど、それが出来ずに「朝刊はとっておけと言われたのでとっておきました」から話始めてしまう。相手は「いや、夕刊はどうした」と聞くので、話が朝刊のことに巻き戻ってしまう。
 
 私は松山くんの気持ちがわかるような気がする。だから、よけい空気を読むことが重要そうなヤクザの世界でやっていけるのかと心配になってしまう。帽子のおじいさんは、そんな松山くんの話を辛抱強く聞いている。
 
 取材班が彼に極道に入った理由を聞く。宮崎学の本に影響されたという。
 
「嫌な奴がおって、相手も嫌だと思ってて、お互い嫌だけど排除されずそこにいる。それが良い社会やないですか?」
 
 映画にはヤクザたちが選挙に行く場面も出てくる。選挙の日に新聞を開く帽子のおじいさんに、取材班が「行かないんですか?」と聞くと、「選挙権がない」と言う。「なんで」と聞くと「国籍がね」「帰化してれば別やけど」と答える。
 
 帽子のおじいさんは、松山くんを「息子みたいなもん」といい、入所の理由としてそれとなく「いじめられてたみたいやな」と取材班に伝える。
 
 映画の中には松山くんと帽子のおじいさんとの年越しの場面がある。ふたりで大型テレビの前で本当にささやかな年越しのつまみをつつき、日本酒を呑むのだ。おじいさんを信頼している松山くんの嬉しそうな顔はとても人間的で、きっと今までいた学校などより「健康で文化的な最低限度の生活」に近いのだろうなと思ってしまう。
 
 
 組事務所の日常は一貫してほぼおっさんしかいない、ぱっとしない中小企業の日常という感じなのだが、時折こちらにヤクザらしさを突きつける瞬間が訪れる。
 
 さりげなく服を脱ぐ場面で見える大きな入れ墨。覚せい剤シノギの様子。新世界を案内してくれる会長の、16歳で拳銃を打った話……。
 
 もっともインパクトがあったのは、松山くんが恰幅のよい若頭に殴られる場面だ。何がきっかけかはよくわからないのだが、イライラした若頭は、ソファーの並んだ部屋に松山くんを突き飛ばし、扉を閉める。
 
 扉の向こうでビシッ!バシィッ!というアニメや特撮で聞きなれた音が鳴る。人を殴ると本当にああいう音がするのか。カメラはただただ扉を映す。
 
 ヤ、ヤクザ、怖い! やっぱ怖い!
 
 
 映画にはヤクザの日常の他にもうひとつ軸がある。山口組の弁護士を手がけている山之内幸夫弁護士の話だ。
 
 ひょうひょうとしたたたずまいの山之内氏は、登場の場面で電話に出ている。相手は知り合いのヤクザのよう。「今何してんの?おお?ヤクザ辞めて食っていけるの?ははは」。ヤクザ映画の原作も手がけ、取材班に「ヒットマンて言葉を広めたのはぼくなんですよ」と言う。
 
 恐喝罪で告訴されたこともある山之内氏。言いがかりとも言える告訴に義憤を感じた弁護士仲間が彼のための弁護団を組織し、晴れて免罪に。そして、山之内氏は再び暴力団の弁護を引き受ける。
 
 映画には山之内氏の古い友人らしき弁護士も登場する。
 
 彼はヤクザの弁護を引き受ける山之内氏に苦笑する一方で、あまりに厳しいヤクザに対する締め付けに対し「ヤクザだからといって人権を無視していいのか」と問う。
 
 この問いは、弁護士だけでなく、当のヤクザからも発せられる。
 
 発話者は川口和秀会長だ。映画の前半、16歳で初めて拳銃を打った時のことを話しながら新世界を歩いてくれるナイスルッキングガイ。いかにも切れ者という精悍な風貌で、新世界の呑み屋のオバちゃんにも人気だ。「警察なんてなんも守ってくれへんもん!」と言って会長のことをもてなすオバちゃんの好意に、少し照れたように笑う。
 
 会長は映画内で、自身に寄せられたヤクザからの訴えをカメラに見せる。「銀行口座が作れないので、子どもの給食費が払えない」「幼稚園や保育園に入園拒否される」などなど……。ヤクザの窮状の言葉を拾い集め、人権について真剣に考える川口会長だからこそ、何のプラスにもならないこの取材を引きうけたのだろう。(監督とディレクターのトークイベントによると、会長自身が東海テレビ制作の「死刑弁護人」を見ていたことが取材を受ける決め手のひとつとなったらしい)
 
 映画の最後に、「(人権がないと感じるのなら)ヤクザをやめればいいじゃないですか」という取材班の問いに対し、「誰が受け入れてくれる?」と鋭い目つきで答える。
 
 
 「ヤクザに人権はないのか」という問いによどみなく「犯罪者に人権などない」と答える人の数は少なくないだろう。
 
 でも、画面の中のヤクザがあまりに普通で、にも関わらず一歩踏み外してしまった人たちなので、「あっ、ひょっとしたらいつかのどこかで誰か(それは私かもしれない)が声をかけてあげたら、ヤクザにならずにすんだかもしれない」と思わせる。20代のころはカタギの仕事についていて、子どもと奥さんとの写真を大切に持っている元ペンキ屋の河野さんが「困ったときに助けてくれたのはここだけだった」と話している姿が重い。
 
 みんな寄る辺ないという言葉が似合いすぎる人たちで、友人が号泣したのもその寂しさをストレートに感じ取ってしまったからだろう。
 
 「えっ、ヤクザって人間じゃないと思ってたのに、人間だったじゃん。もし犯罪者は人間じゃないなら誰が人間じゃないものにしてしまったの?」
 
 映画の編集は、この問いに答えを出さない。そして、映画を見る限りヤクザの未来は明らかに暗い。
 
 
 映画には映されていないが、その後松山くんは組を辞め(あるいは追い出されたのか)、コンビニ強盗をしでかしてしまう。カタギの時の家族写真を見せてくれた元ペンキ屋の河野さんは覚醒剤所持で捕まる。
 
 山之内弁護士はヤクザに手を貸したかどで、罰金で済むような小さな事件で起訴され、有罪判決によって弁護士資格を剥奪されてしまう。
 
 ヤクザの道は地獄だけれど、その先の道もない。
 
 
 ただ、映画そのものにヤクザの擁護者たらんとする気負いはない。ドキュメンタリー映画にありがちな文学的誇張もなく、ある種下世話なテレビ的な好奇心によってヤクザのいる日々が描かれ、それがこのドキュメンタリーを見易いものにしている。事件記者として愛知県警に詰め、ヤクザには人権すらないと感じた監督の経験が、本作の制作の動機になっているそうだが、そうしたある種の政治的正しさのみに突き動かされたというより、「見えないものを見たい。そして、見せたい」という欲求を強く感じさせる。
 
 好奇心という言葉は、山之内弁護士が山口組の弁護を引きうけた際にも語られる言葉だ。幼い頃に家庭で苦しい思いをしてきた彼には、社会から堕ちた人間の苦しみとそこから這い上がろうとするエネルギーに惹かれるものがあったという。弁護士としての権利を脅かされ、家族との仲がうまくいかなくなっても弁護を続ける山之内氏の姿を見ていると、彼にはヤクザの世界に何か親しさを感じてしまう部分があるのではと感じてしまう。
 
 
 好奇心とは少し違うが、映画を観て思い出したのが、障害者施設の運営者によるセミナーでの質疑応答だった。障害者の中には反社会的勢力に取り込まれてしまう人たちが少なくない。(このあたりはぜひ、山田譲司の「累犯障害者」を読んでほしい)そういった組織に入ってしまった人を、どうやって抜けさせるか。
 
 質疑では、重度の精神障害者の支援施設で働いている方に質問が飛んだ。精神障害にもいろいろグラデーションがあるのだろうが、その方の話はなかなかヘビーで、「身の回りにあるものすべてを箱に入れてしまう人がいる。その人はどうも箱にものを入れることで精神を安定させているようなので、最初から箱に入れていいものを用意してまわりに置いている」という話はなんだか禅問答のようだった。
 
 淡々と施設の現状を話す、まるで僧のような風情の中年男性のその答えは「いやあ……『すみませんが、返してください』と話しますね……」というものだった。
 
 おそらく質問した人は、ヤクザの事務所に行ってガチンコでお願いするなんて方法を期待してはいなかっただろう。とまどいを顔に浮かべていた。
 
 支援を受ける側は社会という狭い円から追い出されているが、支援する方もそういった枠組みをどこか逸脱している。
 
 カメラを掲げた土方宏史監督も、わかりやすいエリートではないのだろう。パンフレットには、阿武野勝彦プロデューサーが、彼と初めて会ったときのことを書いている。「ぼくは発達障害なんです。診断も受けています」「阿武野さんもそうだと思います!!」といきなり話し出したという行動を読むに付け、「ヤクザと憲法」は撮る前から監督にとってなにがしかの当事者性のある題材だったのではないかという気がする。ちょっとおかしい人がちょっとおかしい人を撮る、ある種の誠実さそれは、単に同情したとかいうことではなく、カメラを向ける対象により興味を持ってしまう、そちらに近づくことの方がその人にとって自然であるというようなことだ。
 
 …………それはさておいて、
 
 映画鑑賞後、人権に関する長い語らいのほか、友人ともうひとつ盛り上がったのは川口会長のイケメンっぷりだった。
 
 「会長61歳であのファッションセンスすごくない?」「ダウンジャケットいくつ持ってるの?」「新世界であったら握手してっていっちゃうかも!」「あれは子分もこの人のためなら死ねるって思っちゃうね!」
 
 うう……。知恵者で意気地もあってビジュアルはまるで映画から抜け出たような会長……。すまん、正直素敵だった……。その後ググったところによると、拘留中の会長を待つ間に、会長の顔をTシャツに印刷して着ていた子分もいるとか。アイドルかよ……。下世話な話だが、会長の顔見るだけでも1800円損しないぞ。
 
  あ、そうそうリンク先の記事も厳選して貼ったから、読んで損はないぞ!
 
 追記:ブックマークコメントに「ヤクザに同情とか馬鹿じゃねえの」「覚醒剤で日銭稼いでる奴らに同情とか」みたいなコメントがついてました。わかっとるがな!めっちゃぐぐったわ!うーん伝わるように書けていなかったかあと思ったので、阿武野プロデューサーのインタビューを引用。
 
川口会長は言いました。「ヤクザ認めんて言うことやろ、暴力団や言うて。本当に認めんねやったら全部なくしたらええ。選挙権もみんな剥奪したらええ。まともな仕事までしたらあかんちゅうねん。生業も持つなて言うてんねん。(ヤクザをやめたら)どこで受け入れてくれる?」と。足を洗っても受け皿のないまま暴排条例の規制対象となる3年から5年のあいだ、どうやって生きていくのか。どうにもならない現実がある。ヤクザをなくしていくためのプロセスは間違ったんじゃないかなと思います。人づてに聞いたんですが、民事介入暴力担当の弁護士さんたちが集まる飲み会があって、放送直後だったこともあり、『ヤクザと憲法』が話題の中心だったそうです。これまで暴力団を追いつめてきたけど、やり方が違ったかもしれないという意見もあったと聞きました。そういう見方をしてくれたんだと、少し嬉しくなりました。けっしてヤクザを肯定するためにつくった番組ではないんですが。

でも、なくしてしまえと考えていないのはあきらかじゃないですか。

ヤクザがいない社会のほうがいいけど、現実にはいる。いなくする方法は、もう少し知恵を出さないといけないんじゃないの? というスタンスです。どういう時代でもドロップアウトする人間はいるので、 それこそ“半グレ”になって地下に潜らせるよりも、きちんと社会に収容していく方法を編み出さないといけない。一方的にこの人たちを叩くというやり方だと、社会は上手にまわっていかないんじゃないかという気がします。いまのままでいいとは思っていません。
 いうまでもなく、私もこのスタンスです。ただ、まあこういうのって
組員の河野さんは典型的なヤクザに見えますけど、出会う人がひとり違っていたらヤクザになってなかったかもしれない。「(困ったときに)誰も助けてくれないじゃないですか。誰か助けてくれます?」と河野さんは言いました。河野さんはそうだったかもしれないけど、僕にはたまたま助けてくれる人がいた。河野さんは誰も助けてくれなくて自暴自棄になったと話されますけど、僕も自分がヤクザに落ちることもなかったとは言いきれないなと思いました。ちょっとしたことで人生は変わっていくものです。誰だって安全圏にいるとはかぎらないですよね。
 っていう感性がないとなかなか伝わらないのかもしれませんね。観にいってくれた友人に感謝です。しかしVICEのインタビューは踏み込み方がうまくてすごい……!
 

二代目清勇会について語ろう - 1235975785 - 質問掲示板

http://kanae.2ch.net/test/read.cgi/4649/1420857036/

獄同塾通信 第20号

川口会長が発行していた通信誌

 

累犯障害者 (新潮文庫)

累犯障害者 (新潮文庫)

 

※何らかの障害を抱えることにより社会の枠組みから外れてしまい、犯罪を繰り返してしまう「累犯障害者」について書いた全8章からなるノンフィクション。

ヤクザと憲法――「暴排条例」は何を守るのか

ヤクザと憲法――「暴排条例」は何を守るのか

 

 ソフト化は断っていると阿武野プロデューサーがツイートしていましたが、書籍は出たようです。

 キャッツアイ事件の詳細が描かれた「冤罪・キャッツアイ事件」の文庫化。

山口組の平成史 (ちくま新書)

山口組の平成史 (ちくま新書)

 

  弁護士の山之内さんの最新著書。

  ディレクターの阿武野勝彦の著書。『さよならテレビ』はあまり評判がよくなかった印象ですが……。